活動詳細
福岡県 福岡市 2025年受賞
BOOKUOKA
街を舞台にした多彩な企画で本の魅力を伝えるブックフェスティバル
代表:大井 実 氏
2025年10月更新
BOOKUOKAは、毎年10~11月の約1か月間、福岡市内の大通り、書店、カフェなどで行われる総合ブックフェスティバルである。2006年に始まり、2025年で20回を数える。
きっかけは仲間同士の飲み会だった。地元書店店主の大井実氏、出版社勤務の藤村興晴氏らが、2005年に東京で行われた「一箱古本市」(出店者が段ボール箱一箱分の古本を持ち寄り販売するイベント)のような本のお祭りを福岡でもやりたいと盛り上がり、10名の実行委員会を結成。「福岡を本の街に」をスローガンに、半年の準備期間で15もの企画を立てた。以後毎年11月初めに古本市を、その前後約1か月間、街の様々な場所で本に関わるイベントを開催している。
古本市の日は、福岡市の繁華街・天神に隣接する通称「けやき通り」の20数店舗の軒先に、公募で集まった80~100組の「一日書店」が並ぶ。書店主と客の間で本を介して自然と会話が弾み、けやき通りが1年で最も賑わう日となる。
「激オシ文庫フェア」は、福岡市内20~40店で働く書店員を中心に毎年異なるテーマで「激オシ」の文庫本を募り、推薦帯を制作する企画だ。各書店はホームページ上に公開された帯を印刷し、自店の規模・趣向に合わせてフェアを展開する。全国的にも異色のフェアで、地域の書店活性化にもつながっている。
他にも作家のトークライブ、書店員や書店員になりたい人たちが交流するイベント、著名なイラストレーターの作品や作家の生原稿をデザインしたブックカバーの制作、父親による絵本の読み聞かせ対決、バーでの官能小説の朗読会、絵本に出てくるスイーツをカフェで提供する企画など、毎年約10~15の企画を考案。遊び心あふれる企画は広く関心をよび累計410本にのぼる。多くの市民が本や書店の魅力に気づくきっかけとなってきた。
運営には約30人のボランティアも参加し、主に古本市をサポートする。会社員や学生など本好きの集まりで、長く続ける人も多い。実は、実行委員の本業の忙しさから2015年に休止が検討された。その時、ボランティアから古本市だけでも続けたいと声があがり、この危機を乗り越えた。回を重ねて強まったボランティアの結束力は、今ではBOOKUOKAに欠かせない推進力となっている。
当初BOOKUOKAは出版業界関係者たちが面白いことをしたいと始めたものだった。しかし本を通じて人と人がつながる楽しさを多くの人が実感することで、市民から愛されるイベントになった。その盛り上がりは地域を超えて広がり、佐賀、熊本、沖縄などでは福岡を手本に同様のイベントが行われている。BOOKUOKAが培ってきた本を楽しむ文化は福岡に着実に根づき、これからも大きく育っていくことだろう。




