活動詳細
岩手県 北上市 2025年受賞
北上ミューズコーラス隊
学校・学年の枠を超えた「地域の部活動」として、広く歌声を届ける
代表:千田 優子 氏
2025年10月更新
岩手県北上市は県の南西部に位置し、人口は約9万人。北上ミューズコーラス隊は、1999年、北上市主催の合唱講座として始まった。子どもたちが合唱を楽しめる場を作りたいという思いから、地元の公民館と市が協力し、小学生16名からなる「ミューズコーラス隊」を結成。初めての合唱コンサートで披露された歌声は、地元住民と保護者の胸を打ち、これをきっかけに、隊員たちの保護者による父母会が結成された。そして、県内外から合唱、さらにはミュージカルの指導者を迎え入れ、活動の幅を広げてきた。2002年、市主催の講座は終了したものの、父母会が運営を継承した。地元から応援してもらいたいと地域名を冠し、「北上ミューズコーラス隊」として活動を続けてきた。
毎年欠かさず開催してきた定期公演では、10曲前後の合唱と1時間に及ぶミュージカルを披露。地元のコンサートホールは子どもたちの歌声を楽しみにする住民でいっぱいとなる。会場の設営や当日の運営は父母会が行い、子どもたちの晴れの舞台を支えている。父母会は、子どもたちの活動を支えるためのマニュアルを整備して役割を分担し、長年円滑な運営を続けてきた。そうした手作りの活動を応援する人たちも次第に増え、北上ミューズコーラス隊は地域のイベントにも数多く招かれるようになり、今では地域住民との交流は子どもたちの経験を育む場となっている。
一時は、少子化の流れとともに、隊員の数は減少したが、北上ミューズコーラス隊が部活動として一部の地元中学校から認められたことで、中学生の隊員の数が増加した。これは、地元中学校には合唱部がないため、「北上ミューズコーラス隊に学外の部活動として受け皿になってもらいたい」と、保護者が各中学校と交渉し、実現したものだ。
練習日に指導者が来るのは不定期だが、父母会の音楽経験者のサポートや子どもたちだけのパート練習を織り交ぜることで、量と質を維持しながら練習に励んできた。こうして培ってきた表現力を素地に、合唱団体としても実力を伸ばし、2024年出場の第91回NHK全国学校音楽コンクールでは、中学校の部で金賞を収めた。
音楽に関心を持つ地域の子どもたちの受け皿となりながら、部活動の要素を取り入れ、さらなる成長を遂げた北上ミューズコーラス隊は、部活動を学校単位から地域単位の取り組みとしていく「部活動の地域移行」のお手本と言える。発足から20年以上、保護者・指導者・地域住民に支えられてきた北上ミューズコーラス隊は、今日も北上に、そして全国に歌声を届ける。




