活動詳細
福島県 会津若松市 2022年受賞
はるなか
「桜の名所、漆の里“会津”」を目指して、地域住民が力を合わせる里山づくり
代表:佐藤 光信 氏
2022年10月更新
福島県の西部に位置する会津地方は、越後山脈と奥羽山脈に挟まれた内陸の地域である。太平洋側気候と日本海側気候、様々な動植物の北限と南限とが交わり、多雪で湿度も高いことから、古くから自然の豊かな土地であった。ここ会津を桜の名所、漆の里にしようと里山づくりに取り組んでいるのが、特定非営利活動法人はるなかである。
活動のきっかけは、高校時代に生物部で自然保護を学んだ佐藤光信氏の「会津の自然を守りたい」という思い。氏の熱意に打たれた仲間たちが集い、2004年12月にはるなかを立ち上げた。掲げた名は、会津藩で大老をつとめ、天明の大飢饉を乗り越えて地場産業や特産品の基礎を作った田中玄宰(はるなか)(1748-1808)に由来する。
はるなかは、桜、漆、木綿・藍、自然環境、地域活性化の5部会から成り、桜や漆の植樹・維持管理、綿の普及事業、地域住民向け講演会、田中玄宰の墓前整備といった幅広い活動を行っている。会員やボランティアなど、年間のべ400名を超える地域住民が参加していることも特徴である。桜部会では、立ち上げから17年間で40種750本を植樹、早咲きから遅咲きの八重桜系統まで多くの品種を植樹し、長期間楽しめることを目標に活動を進めている。
近年、新たな展開を見せているのが漆部会の活動である。かつて会津では百万本を超える漆が育てられていたが、昭和の終わりには漆液の生産がほとんどゼロになっていた。再び会津を漆の里にして、会津産の漆で会津の漆器を作りたいと願った会員たちは、開墾や土壌改良に努め、2006年に300本の漆を植樹。
その後も新たな土地での植樹と月2回の下刈り作業を地道に続け、2021年に初めて漆60本から13キロの漆液を掻いた。植樹から15年越しに採取した念願の漆液は、20~30代の若手職人7名の手によりぐい呑み550個の製作に用いられ、長年の夢が実現。今後は当会の漆液を使った「はるなか」ブランド商品を頒布するシステムを作り、その製作を通してベテランから若手へ仕事やノウハウを継承できる場をつくる考えだ。
恵まれた気候を生かした里山づくりを進め、地域の伝統工芸・会津塗の再興にも励む彼らの姿からは、会津が実に豊かな地域性を持つことに気づかされる。また、鶴ヶ城の城下町として栄え、歴史を重んじる風土が根付くここ会津では、郷土の偉人に光をあてることもごく自然なことだったのだろう。
田中玄宰という先人の故郷への思いを継ぎ、地域に根差した活動を展開するはるなか。彼らが掲げる夢、「桜の名所、漆の里“会津”」はすぐそこにある。




