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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

広島県 安芸高田市 2020年受賞

ひろしま安芸高田 神楽の里づくり
「新舞」発祥の地として地域をあげて神楽振興を行い、その魅力を発信

代表:塚本 近 氏

2021年1月更新

活動紹介動画(02:00)
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ひろしま安芸高田 神楽の里づくり

 神楽が盛んな広島県では、現在300余りの神楽団が活動しており、なかでも芸北地方にはそのうち150団体ほどが集中している。芸北の神楽は、島根県の石見神楽の流れをくむものだが、戦後、GHQの指令で神道色の強い神楽が禁止されたため、1947年から、美土里町(みどりちょう)(現・安芸高田市)在住の佐々木順三氏が宗教色を排した新作神楽を次々に創作。テンポが早く、豪華な衣装とスモークや早変わりを取り入れたエンターテイメント性の高い新しい神楽は、「新舞」と呼ばれ、芸北全体、さらには石見地方にも広がり、神楽人気を呼び起こす原動力となった。

 1995年、当時の美土里町長の発案で2000人収容の全国唯一の神楽専用施設「神楽ドーム」が完成。建設途中で偶然温泉が湧出したため、温泉と飲食・宿泊施設、座席数135席の「かむくら座」を備えた「神楽門前湯治村」も建設した。第3セクターの会社を設立し、湯治村の収益で神楽ドームを経済的に支える仕組みを作った。

 ハードが充実したことによって神楽の里づくりに拍車がかかる。1999年から、広島・島根両県の大会で優秀な成績をあげた神楽団を選抜して、伝統的な旧舞と新舞の2部門で頂点を競う「神楽グランプリ」を開催。広島県内だけで30以上あるといわれる神楽大会の最高峰と目されている。

 金・土・日・祝日には、市内22の神楽団が順番で神楽ドームやかむくら座で公演を行う。2004年に6つの町が合併して安芸高田市が誕生したため、とりまとめ役の安芸高田神楽協議会では、市内すべての神楽団が参加することにこだわり、ねばり強く説得したという。公演回数は年間150回にも上り、大勢の人に観てもらう機会が増えることで、各神楽団のレベルアップにもつながっている。また、東京など国内のほか、ブラジル、メキシコ、フランスなどでも公演を行い、神楽の魅力を国内外に発信している。

 2011年から「神楽甲子園」を開催。甲子園といっても神楽は地域によって全く別物であるため、優劣を競うものではなく、同じように地域の伝統芸能の継承と研鑽に励む高校生たちに晴れの舞台を提供し、交流と励まし合いの場としてもらおうというものである。遠方からの出場者は安芸高田市内にホームステイをし、大会当日は、高校生たちが受付や進行係、会場の設営と撤去、ゴミ拾いを行うなど、実行委員の一員として活躍する。

 市民の10人に一人はなんらかの形で神楽に関係していると言われている。市内の多くの神楽団が子ども神楽団を持ち、次世代の育成にあたっているほか、神楽をやりたくてUターンやIターンを希望する人も増えていて、行政や民間の側からもその人たちの支援にも力を入れている。官民挙げての神楽の里づくりを通じて、神楽を愛する人たちと安芸高田市の間に強い絆が育まれている。

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