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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

長野県 大鹿村 2020年受賞

大鹿歌舞伎
地芝居を村の宝として継承し、地域づくりを行う

代表:柳島 貞康 氏

2021年1月更新

写真
秋の定期公演

 南アルプスの山麓に位置する人口1000人弱の大鹿村は、平安時代に荘園として開発され、近世には徳川家の直領として豊富な森林資源を幕府に収めた山村である。大鹿歌舞伎は250年以上前から各集落の神社の奉納歌舞伎として演じられ、江戸から大正期にかけて歌舞伎の上演が禁止されていた時代も、弾圧をかいくぐって継承されてきた。村内に点在する境内に13もの舞台が建てられたことからも、歌舞伎が村の人々にとって心の拠りどころであったことが見てとれる。

 高度経済成長期に入り多くの若者が村を離れるなか、これまでの集落ごとの継承では存続が難しいという危機感から、太夫であり大鹿村教育長でもあった片桐登氏が中心となり、1956年に「大鹿歌舞伎保存会」を発足させた。ここには村長をはじめとする支援者が集い、主に経済面の基盤を整えた。また、1958年には「信州大鹿歌舞伎愛好会」を立ち上げ、村全体から地芝居の愛好者が加わり、各集落で受け継がれてきた型や決まりを統一する作業を行った。こうして村ぐるみで地芝居を支え、演じる体制が整ったことが大きな契機となり、広く村民に愛されながら大鹿歌舞伎が今日まで継承されるに至る。

 愛好会には20代から90代までの35名が所属し、毎年春と秋に定期公演を行う。役者、太夫(三味線弾き語り)、拍子木、下座、舞台、衣装、髪結いなど、上演にかかわるすべてを自前で行うのが大きな特徴である。レパートリーは30演目あり、なかでも「六千両後日文章 重忠館の段」は大鹿村だけに伝わる幻の演目。現存する7つの舞台の装置や演出にも独自性が残されている。四方を山々に囲まれた境内で、地芝居を通じて舞台と客席とが一体となるそのハレの雰囲気に魅了され、村民のみならず県内外から1000人以上の熱心なファンが訪れる。

 また、1975年に発足した中学校の部活動「歌舞伎クラブ」を継承する形で2000年から始まった総合学習授業「大鹿タイム」では、生徒が年間50時間、愛好会指導のもと歌舞伎の練習に励む。最初は受け身の生徒も、先輩の姿や愛好会の熱意に触れ、3年生になる頃には夢中になるという。今では「大鹿タイム」経験者が愛好会メンバーの役者の5割を占め、地域の伝統芸能を演じる若い世代の姿が村の人の励みとなり、地域を盛り立てているのである。

 地芝居では初の重要無形民俗文化財に国から指定され、国立文楽劇場での上演や海外公演も経験。全国でもひときわ輝きを放つ大鹿歌舞伎は、ひとつの文化継承の形を見せたと言えよう。過疎化と向き合いながら地域に伝わる文化を次世代へとどう繋いでいくか、大鹿村の取り組みにこれからも目が離せない。

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