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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

沖縄県 読谷村 2018年受賞

くるちの杜100年プロジェクトin 読谷
三線の材となるくるち(琉球黒檀)を植林・育林

代表:石嶺 傳實 氏

2018年10月更新

活動紹介動画(01:59)
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くるちの杜100年プロジェクトin読谷

 沖縄の伝統芸能に欠かせない楽器である三線は、近年ではポピュラーミュージックにも取り入れられ、老若男女幅広い人々に愛されている楽器である。しかしその棹の材料として最も尊ばれているくるちは、沖縄戦でその多くが焼失。現在はほとんどを輸入材に頼っている。くるちは非常に成長の遅い木で、三線の棹として使えるのは100年以上の樹齢のものに限られる。成長が遅い樹木は世界的にも植林されることが稀で、海外では黒檀の輸出制限も始まりつつある。

 沖縄音楽に魅せられ、ヒット曲「島唄」で知られるミュージシャンの宮沢和史氏はこうした状況を耳にし、2012年、沖縄に恩返しをするためにくるちの植林を始めたいと、友人で演出家の平田大一氏に相談した。平田氏が住む読谷村は、三線の始祖として崇められている赤犬子の生誕の地であり、かつてくるちの植林もされたことがある。この読谷村にくるちの杜をつくろうという両氏の呼びかけに、読谷村、地元の商工会・観光協会・文化協会、古典音楽各会派の長、沖縄県三線製作事業協同組合の人々が応え、「くるちの杜100年プロジェクトin 読谷」が発足した。

 同プロジェクトでは、年1回の植樹祭、育樹祭に合わせて、琉球古典音楽、民謡、ポップス、ロックのプロとアマチュアの三線奏者が出演する「くるちの杜音楽祭」やくるちと三線に関するシンポジウムやワークショップを開催。この運動に対する理解者・協力者を広げ、これまでに約3000本のくるちを植えてきた。

 植えた苗木を守るための月に1度の草刈りは、厳しい陽射しの中で行う“聖なる難儀”。毎回、読谷村だけではなく、県内各地、さらには県外や海外からも約70名のボランティアが集まる。楽しくなければ続けられないと考え、沖縄独特の冷たいぜんざいをふるまったり、ミニコンサートをするなどの工夫が随所に凝らされている。

 地元を中心に小中学校、高校に宮沢氏と平田氏が出かけ、「お出かけくるちの杜講座」を開催し、今の子どもたちの子どもの世代にこの活動が引き継がれるように呼びかける。また、くるちの研究者のいる琉球大学や琉球古典音楽を教える沖縄県立芸術大学とも連携し、育樹の知識や三線文化の継承・発展の道を探っている。くるちは1箇所のみの植林では、台風や病害虫により全滅してしまう恐れもある。県全体の貴重な文化、工芸品である三線を守るために、三線の聖地である読谷村から始まったくるちの杜づくりを、県全域に広げていく計画も進行中である。

 彼らが植えたくるちで三線をつくる夢。そこには100年後の未来まで、沖縄が再び戦火に見舞われることなく、三線文化が子から孫へと受け継がれていて欲しいという願いが込められているのである。

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