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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

島根県 飯南町 2015年受賞

飯南町注連縄企業組合
大しめ縄づくりの技を保存継承し、地域活性化に活用

代表:星野敏幸 氏

2015年10月更新

活動紹介動画(01:50)
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写真
出雲大社神楽殿大しめ縄の制作(2014年7月)

 出雲大社神楽殿で多くの参拝者を迎える、長さ13.5メートル、重さ4.5トンの巨大なしめ縄。この大しめ縄を作っているのが、出雲市から約50キロ、広島との県境に近い飯南町頓原地区の人々だ。かつてこの地に出雲大社分院があった縁で1950年代から数年ごとに大しめ縄の制作・奉納が行われ、その技は信者の集まりである勧農講社から、頓原老人クラブ、飯南町しめ縄クラブ、そして現在の飯南町注連縄企業組合へと組織を発展させながら受け継がれてきた。組合員数は23名だが、水田1.5ヘクタール分の稲の栽培から刈り入れ、ワラの保管、コツコツと地道に行う大量のコモ作り、2台のクレーンで持ち上げ50人がかりで行うクライマックスの「大撚りあわせ」など、奉納までの1年半にのべ800人の町民が関わる。

 しめ縄作りにマニュアルはなく、仕上げの「撚り」は、やり直しがきかない一発スピード勝負。材料のワラの質や力の入れ具合などにより毎回塩梅が異なり、イメージ通りに仕上げるには、何年も経験して初めて身に付くカンと熟練が必要となる。このため、しめ縄作りの担い手が全国的に少なくなっており、困った各地の神社から制作や指導の依頼が年々増えている。年間に制作を引き受けるしめ縄の数はおよそ20、地域は東北やハワイにも及び、また請われれば惜しみなく丁寧にノウハウを伝授して各地のしめ縄文化を支えている。

 古くから稲作が行われた飯南町住民の多くは米作兼業農家で、また中国地方有数の豪雪地帯であるため雪ぐつや簑などワラで作る冬の民具は生活必需品だった。組合では地域の次代を担う子ども達に、しめ縄作りの技だけでなく衣食住に深く関わる地元産の稲ワラへの想いも引き継いでもらいたいと、学校での訪問授業や公民館でのしめ縄教室を積極的に行ってきた。行政の協力も得て、町内の小中学生は2015年より卒業までに全員しめ縄作りを体験することとなった。

 伝統の技を継承しつつ地域活性の資源としてしめ縄作りをいかそうと、2014年に企業組合を結成し、町立の「飯南町大しめ縄創作館」もオープン。神社向けしめ縄の需要は収入基盤の安定だけでなく、農家の作付面積増にもつながっている。また、しめ縄作りに加わる住民に賃金を支払うことで、高齢者に働く場と収入に加え、楽しみや生きがいも提供している。創作館という拠点ができたことで県外や海外からの訪問者が増え、コサージュ風の創作しめ縄や季節のしめ縄ギフト、地元のパン屋が開発した「しめ縄パン」も販売好調だ。飯南町の手作りしめ縄が、神社だけでなく日常的な生活空間で用いられ、町を飾ることを夢みて、新しいアイディアが次々と生まれている。

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