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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

沖縄県 竹富町 2013年受賞

うふだき会と小浜島ばあちゃん合唱団
島の敬老文化が支える80歳以上の女性合唱団

代表:花城 キミ 氏

2013年9月更新

活動紹介動画(1:49)
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 日本最南端に位置する八重山諸島のひとつである小浜島。石垣島の離島ターミナルからフェリーで約20分、明るいエメラルド・グリーンの海に囲まれた、人口400人あまりの小さな島だ。地方のご多分に漏れず、この島でも少子高齢化が進み、人口の4分の1にあたる100人余りが75歳以上の高齢者だ。ただし、この島の高齢者は元気いっぱいである。重労働のサトウキビ栽培に汗を流し、島の運動会では、「80歳以上男子100メートル走」というにわかには信じがたいプログラムも存在する。
 この島で、つれあいを亡くしたり、子どもたちが島の外で働いていて寂しそうにしているおばあちゃんたちのために、月に一度、昼ごはんを一緒に食べて、楽しく過ごしてもらおうというボランティアグループ「うふだき会」が誕生したのは1993年のことである。行政などによるデイケアサービスに先駆けた活動だ。「うふだき会」の中心メンバーは60代から70代の、世間で言う高齢者。お世話をする対象は80歳以上の女性たちである。
 小浜島は芸達者な人ばかりの島である。昼食会に集まったばあちゃんたちが歌や踊りが大好きだったことから、食事の後は自然に歌の練習が始まった。記憶を辿りながら、労働の合間に歌われたユンタやジラバと呼ばれる古い民謡を復活させ、年に一度の発表会「三月あしびー(遊び)」や、島のイベントで披露。若い人たちに昔から島に伝わる歌を少しでも伝えたいとの思いからだ。舞台衣装は、全員が自ら染めて、織った芭蕉布の着物。普段は車椅子や杖に頼っている人も、舞台に上がると見違えるほどしゃんとして、若々しい。
 彼女たちは、小浜島の中だけではなく、石垣島にある老人介護施設などでも時々慰問公演を行う。2011年と2012年には、那覇、大阪、東京、札幌などに遠征を行った。その様子は全国版のテレビ番組でも紹介され、「小浜島ばあちゃん合唱団」として一躍有名になった。
 小浜島の女性たちは80歳になると、ウェディング・ドレスを着て、きれいにお化粧をしてもらい、「うふだき会」の昼食会に参加する。それが合唱団の入団式でもある。現金収入の少なかった小浜島では、ドレスはもちろん、お洒落をする余裕もなかった女性たちにとって、わくわくするほど楽しみで、待ち遠しい瞬間である。そして、合唱団に入った80歳以上の女性たちは、「今までの人生で、今が一番楽しい、幸せ」な時間を過ごしているという。彼女たちのその笑顔を支えているのが、「うふだき会」であり、ばあちゃんたちの子や孫や地域の人々であり、高齢者の幸せを願う、小浜島の敬老文化そのものなのである。

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