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サントリー地域文化賞

活動詳細

四国

愛媛県 松山市 2012年受賞

俳句甲子園実行委員会
高校生による俳句の全国大会を市民ボランティアが運営

代表:岡本 治 氏

2012年10月更新

活動紹介動画(1分40秒)
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 松山は、かつて俳句革新運動を興した正岡子規をはじめ、高浜虚子や河東碧梧桐など多くの俳人が活躍し、現在も俳句が盛んな「俳都」と呼ばれる街である。市内には俳句を応募するための投句箱が観光地や路面電車内などに設けられ、句碑も数多く残されている。しかし一方で、俳句人口が高齢化するなど、次世代への俳句文化の継承が危惧されていた。市内の小学校では、教育の一環として子どもが俳句づくりに取り組むものの、もっとも多感な年代である中学生、高校生になると有名な句の鑑賞が中心となり、創作から遠ざかるという問題もあった。
 そのような中、松山青年会議所では、1975年から市内の小学生を対象に「句碑めぐり」を行ってきた。しかし、同様のイベントを行う団体が増えたこともあり、より発展的な事業を創ろうという気運が会員の間で高まった。さまざまな企画を模索する中、地元の俳句雑誌編集者から持ちかけられた高校生の俳句大会の案を元に、1998年8月19日(俳句の日)、「第1回俳句甲子園まつやま大会」が開催された。
 俳句甲子園とは、1チーム5人の高校生による団体で対戦し、紅白に分かれた2チームが互いに句を披露し質疑応答を行った後、審判が紅白の旗を揚げて勝敗を決定するもの。第1回の参加校は県内の9チームのみだったが、その後、徐々に規模が拡大し、第6回大会からは全国各地での予選も行われるようになった。2012年の第15回大会には、75校、109チームが予選に参加し、36チームが全国大会に進んだ。
 松山での全国大会は毎年8月19日前後に開催され、初日に市の中心部にある大街道商店街で、リーグ戦と決勝トーナメントの一部を行う。2日目には、松山市総合コミュニティセンターで準決勝と決勝が行われるが、いずれも多くの観客が見守る中、「5・7・5」の17文字による熱い戦いが繰り広げられる。
 大会の運営は現在、青年会議所のメンバーが中心となって立ち上げた「NPO法人俳句甲子園実行委員会」が行っている。そこには皆がボランティアとして参加し、俳句を通じて一人でも多くの人に松山の魅力を知ってもらおうと活動を続けている。かつて高校生として大会に参加した者も数多くボランティアとして加わり、地方予選や全国会場のために手弁当で集まって、後輩たちの活躍を支えているのである。
 俳句甲子園の出場者の多くは、大会に出たいとの思いで俳句を始めた初心者が多い。しかし、その後に俳句の魅力に取り付かれ、俳人として活躍する人材も出てきている。俳句甲子園がきっかけとなり、再び松山が活気に満ちた俳句文化の発信地として注目を集めているのである。

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