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サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

大阪府 大阪市 2011年受賞

今宮戎 宝恵駕行列
地元商店街を盛り上げる伝統の旦那衆文化

代表:今井 徹 氏

2011年10月更新

活動紹介動画(1分30秒)
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写真
大阪ミナミの繁華街を練り歩く宝恵駕行列

 商売繁盛の神様「えべっさん」で知られる今宮戎神社(大阪市浪速区)では、新春を彩る1月の「十日戎」の3日間に100万人を超える参拝者が訪れる。その初日の宵えびすでは、福娘や関西の人気芸能人らを乗せた「宝恵駕行列」が大阪ミナミの中心部を練り歩き、沿道に多くの人が詰め掛ける。

 「宝恵駕」とは、もともとは大阪の商人がお気に入りの芸妓を駕籠にのせ、今宮戎まで参拝させていた江戸時代から250年以上続く伝統行事である。とりわけ、明治から昭和初期にかけては、ミナミの旦那衆や料亭が中心となって花街を盛り上げ、宝恵駕行列も華やかに行われるようになった。最盛期に料亭やお茶屋から、総計100丁以上の宝恵駕が繰り出される様子は壮観だったという。しかし戦後、ミナミの花街の活気が失われるにつれ、芸妓の数も減少し、一時は宝恵駕行列も中止に追い込まれた。

 歴史ある伝統行事を将来にわたって継承するため、1966年に今宮戎の参詣道に発展してきた戎橋筋、心斎橋筋、宗右衛門町、道頓堀の4つの商店街が中心となって「宝恵駕保存会」(現、宝恵駕振興会)を結成。宝恵駕行列を再びミナミに復活させたのである。この時から駕籠には、芸妓だけではなく福娘や歌舞伎役者、スポーツ選手など、当世の人気者が乗り込むようになった。これまでにも藤山寛美やミヤコ蝶々などの大阪を代表する芸人がボランティアで参加して行列を盛り上げている。今では「駕籠に乗る人には福が来る。」といわれ、各界から駕籠に乗りたいという希望者も増えている。現在、行列に参加数する人の数は担ぎ手も含めて500人までに成長した。

 宝恵駕の活動がきっかけとなり、ミナミではそれまで個々に商売を営んでいた商店街が団結し、街の活性化に取り組むようになった。1月の行列だけではなく、年間を通じて様々なイベントを実施しており、1980年からは「今宮戎こどもえびす」を開催。宝恵駕が大人の祭りであるのに対して、子どもが主役になれる祭りとして、神社の境内に子どもたちの遊び場を提供している。これまでに27回の開催を重ねている「ミナミ花舞台」では、舞台を通して能や狂言、落語などの分野で数多くの演者を育てた。さらに、「ミナミ環境浄化運動」を行い、「文化の力を借りて、大阪ミナミの環境浄化・活力再生を!」をテーマに、魅力的な街づくりができるよう、商店街のあるべき姿を模索している。大阪市が進める道頓堀川水辺整備事業にも積極的に協力し、かつて「水の都」の顔としての栄えたミナミを蘇らせようという努力が徐々に実を結びつつある。

 宝恵駕行列は、かつて花街の祭りであった行事を現代に継承し、庶民の祭りとして新たに定着させるとともに、伝統文化継承の枠を超え、上方の文化・芸能の伝統を生かした地域づくりの核となっていくことが期待されている。

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