サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > サントリー地域文化賞 > 地域別受賞者一覧 > 三重県立相可高等学校「調理クラブ」

サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

三重県 多気町 2011年受賞

三重県立相可高等学校「調理クラブ」
教育に地域の食文化を取り入れた高校生レストラン

代表:村林 新吾 氏

2011年10月更新

活動紹介動画(1分30秒)
動画を観る
写真
調理の指導を受ける部員たち

 三重県立相可高校の食物調理科生徒を中心とする調理クラブによる「まごの店」は、高校生が仕入れ、調理、接客など運営のすべてを行う高校生レストランである。席数は74席、人気メニューは「花御膳」1200円、関わる生徒数は食物調理科の生徒を中心に40名前後と毎年変わる。研修の場なので開店は土日など学校の休みの日に限られるが、高校生離れした味と清清しい接客態度に県外ファンも多く、行列の出来る人気レストランとなっている。

 調理クラブの顧問である村林新吾氏は辻調理師専門学校で長年講師を務めた後、縁あって相可高校の食物調理科の講師として招聘された。調理クラブをつくり、顧問として同校を高校生料理コンテスト入賞の常連校に育て上げた。地域イベントに出店したことをきっかけに、多気町職員の岸川政之氏との関係が生まれた。応援団となった岸川氏は生徒にもっと現場での体験をさせたいという村林先生の夢を実現するために、場所探し、関係者の説得などに奔走した。

 岸川氏の働きかけの甲斐もあって2002年、三重県多気町の「五桂池ふるさと村」で屋台「初代まごの店」が開店し、地元特産の伊勢芋を使った「とろろ麺」と地元大豆使用の「田楽豆腐」を販売するようになった。2003年、ふるさと村内の食堂を土日のみ借り、うどんや親子丼などを販売するなど実績を積んでいった。その実績が認められ、文科省の「目指せスペシャリスト」事業の指定校となったのをきっかけに県内工業高校生徒による設計コンペを経て、多気町と三重県の予算をかけ、2005年2月五桂池ふるさと村敷地内に実習施設「まごの店」が完成、その一週間後に開店し現在に至っている。

 平日の放課後に料理の下ごしらえと仕込み、「まごの店」が開店する日には朝早くから後片付けが終わるまで、調理だけでなく客席でのサービスも生徒たちが責任を持って行う。顧問の先生はいるものの、主役は高校生の部員たちである。1年生の時は要領の悪い生徒も、先輩からの指導と、調理担当の村林先生、サービス担当の奥田清子先生の的確なアドバイスで鍛えられ、卒業するときに見違えるようになる。

 プロの料理人を目指す高校生は店の活動を通じ大きく成長し、卒業後は料亭やレストランなどの食の現場で活躍している。その活動は店の中にとどまらず、料理講習の助手、スーパーのメニュー提案、コンビニ弁当の企画など、社会と直接繋がるキャリア教育の場ともなっている。

 高校生を応援しようと始めた事業が、予想を超える評価を得、今では「うまし国三重」を標榜する県の誇りの一つといえる。また「まごの店」のあるふるさと村では来訪者が増加、村の中にある生産者販売所「おばあちゃんの店」の地産地消の野菜を「まごの店」で使用するなど、地域との連携が様々に行われ、地域の食文化発信の核となっている。

 高校生を信頼し、挑戦の機会を提供、指導する先生方の姿勢と、それに応える高校生の素晴らしさ。「まごの店」を訪れる人たちは、そこで食べる料理の味以上に、高校生の持っている潜在力と、期待に応えようと頑張る真摯な態度、食を通して成長する姿に、感動するのである。

サントリー文化財団