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サントリー地域文化賞

活動詳細

関東

茨城県 桜川市 2011年受賞

真壁 伝統ともてなしのまちづくり
まちづくりに貢献する多彩な地域文化活動

代表:川嶋 利弘 氏

2011年10月更新

活動紹介動画(1分30秒)
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写真
ひなまつりで賑わう真壁の古い町並み

 桜川市真壁町は、戦国時代末期に真壁氏が築いた城下町が江戸初期に在郷町へと変化した町である。枡形と呼ばれる城下町特有の交差点が現存し、市街地には歴史的建造物が数多く残されている。しかし、基幹産業である石材業の衰退と、1987年の関東鉄道筑波線の廃線により、次第に活力を失っていった。

 そうした中、この町の歴史を調べ、町のすばらしさに気づいた人々が、1993年、「ディスカバーまかべ」を結成。歴史的建造物の調査、蔵や庭を活かしたコンサート、町並みをテーマにしたフォトコンテスト、シンポジウムなどを行い、真壁の町並みに対する人々の関心を高めて行った。彼らが役場に働きかけ、それに応えた行政の積極的な取り組みが功を奏し、1999年、第1号の国の有形登録文化財が誕生。2005年までに104棟が登録を受け、その当時、京都市・犬山市に次いで3番目の登録数を誇った。更に2010年には、江戸時代以来の町割りを残す17.6haが、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。

 もともと真壁では、住民自らが町を良くしていこうと、仲町自治会が中心となり「花いっぱい運動」などを行ってきたが、行政が「登録文化財のある町」として歩み始めた頃、地域住民、商工会、行政職員が一致協力した「まちづくり真壁」が誕生した。2001年に結成された「町並み案内ボランティア」は、“心のお土産”を合言葉に、町並み見学に訪れた人たちを年間3000人以上案内している。また、旧真壁町役場の呼びかけに住民が応え、大正時代に途絶えた人形浄瑠璃が「真壁白井座」として復活。化学染料を一切使用しない、伝統的な技術を受け継いだ「真壁藍保存会」も結成され、「真壁左官教室」からはプロの伝統技能者が巣立っている。

 さらに2003年、寒い中、真壁の町並みを見るためにわざわざ来てくれた人たちを、自宅や店舗などに雛人形を飾ってもてなそうと、住民有志によって「真壁のひなまつり」が開催される。当初約21軒でスタートしたこのイベントは、“会を作らない”“補助金を貰わない”“人に頼らない”の3つの“ない”をモットーに、誰もが自由に参加できる雰囲気が醸成され、地元で活動していた様々なグループ、商工会、行政も協力する「オール真壁」体制へと発展。近年では、160軒が参加し、1ヶ月の会期中に10万人を超える観光客が訪れる祭りに成長している。

 「真壁のひなまつり」に訪れる人の中にはリピーターが多い。美しく落ち着いた町並みに惹かれるだけではなく、訪れた人々を温かく迎える、真壁の町の人々の語り上手でもてなし好きの人柄、土地柄に強く魅せられるという。ひなまつりでのおもてなしの主力は女性たち。それを男性陣が強力にバックアップし、真壁小学校の子どもたちもポスター作りから流し雛の企画・進行まで重要な役割を担っている。祭りの期間には、人形浄瑠璃が上演され、藍染製品もお土産として人気がある。まさに、真壁の伝統と文化、人の総力をあげて、訪れる人をもてなしている。

 2011年のひなまつり直後に起きた東日本大震災では、伝統的な建造物をはじめ、町内の多くの建物が被害を受けた。しかし、来年のひなまつりまでには何とか、お客さんをもてなせるところまで復旧しようという町の人々の決意は固い。長年かけて養われた伝統ともてなしのまちづくりの力は、それをきっと可能にするだろう。

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