活動詳細
茨城県 つくばみらい市 2008年受賞
つくばみらい市綱火保存連合会
花火を仕掛けたからくり人形が舞う「綱火」を地域を挙げて保存・継承
代表:飯島 善 氏
2008年9月更新
つくばみらい市は、東京都心から北東に40km、2006年に旧伊奈町と旧谷和原村が合併してできた新しい市である。平坦な大地にのどかな田園風景が広がる市域には、昔ながらの集落と鎮守の森が点在する。こうした神社の神事に、毎年8月23日、同市の高岡地区(主催:高岡流綱火更進団)、同24日、同市小張地区(主催:小張松下流綱火保存会)、それぞれの愛宕神社境内で公開される「綱火」がある。
祭礼の当日は、夕暮れ時、手筒に詰めた花火に次々に点火し辺りを清めながら集落から愛宕神社に向かう「くりこみ」と呼ばれる行進が始まり、神社に着くといよいよ「綱火」が始まる。「綱火」は、空中に張り巡らした綱に花火を仕掛けた人形を吊るし、櫓の上から綱を引いてその人形を自在に操作する独特の人形芝居で、両愛宕神社の祭礼の中心となる神事である。そして、その発祥は高岡流・小張松下流ともに400年前の慶長年間にまで遡るという伝承を持つ。このように全国的にもたいそう珍しい独特の神事を長い歳月にわたって継承してきたことから、1955年に県の重要無形民俗文化財に指定され、さらに1976年には高岡流・小張松下流の二流派を合わせて「綱火保存連合会」として国の重要無形民俗文化財に指定された。
綱火の芸題は、毎年最初に演じられる「二六三番叟」を定番に、御伽噺を題材にした「浦島太郎竜宮入り」「桃太郎と鬼が島」や伝統的な芸題「安珍清姫」などがある。さらにその時々の話題を取り入れた「壮絶空中戦」、「タマちゃん」といったものまで多岐にわたっている。
毎年の祭礼以外にも、長年にわたり多方面からの招きに応じて頻繁に公演している。茨城県の郷土民俗芸能の集いには県下2番目の出場数を数え、バブル崩壊後は減少したものの県外からの求めにも多数応じている。また1991年には、米国ソルトレーク市での公演を、空輸禁止の花火を現地調合するなど苦労を重ねて見事実現した。
戦後、地域の産業基盤が変わり行くなか、後継者の育成には絶えず腐心している。かつては長男だけが受け継いできたのを次男・三男・婿も加え、技を伝える若い世代向けの勉強会も開いた。また、平成2年からは、隣接の小学校で毎年6月から8月にかけて6年生を中心に「綱火」の授業を始めた。綱による人形遣いや笛・太鼓のお囃子などの実技、綱火についての様々な研究を含んだ授業が行われ、会のメンバーが指導に当たっていて、秋祭りには子供たちだけの実演が行われる。
2005年、こののどかな農村地域につくばエクスプレスが開通し、二つの愛宕神社からさほど遠くないところに、みらい平駅ができた。新駅を中心に、つくばみらい市はこれまでとは異なった都会的な街へと変化しつつあるが、長い歴史を持つ「綱火」は市の大切な伝統文化・観光資源として、さらに地域をあげて守り育まれようとしている。






