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サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

大阪府 八尾市 2008年受賞

八老劇団
30年以上の歴史を持つ、ユーモアと元気溢れる高齢者劇団

代表:浜田 澄子 氏

2008年9月更新

活動紹介動画(1分42秒)
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写真
劇団の十八番
「河内版ベルサイユのばら」

 河内音頭と今東光の小説の舞台として知られる八尾市に、1973年、老人福祉センターがオープンした。お茶や囲碁などのお稽古ごとや趣味の同好会が組織されるなか、初代センター長の角倉俊一氏が、もっとお年寄りたちの生きがいになるような創造的な活動をと考え、「八老劇団」を結成。八尾市内はもとより、近畿各地の老人センターで公演を行い、好評を博した。

 1987年、角倉氏が死去。劇団は解散の危機を迎えた。しかし、劇団員たちの「続けたい」という強い願いを聞き、劇団創立当初から、センターの職員として角倉氏を手伝っていた浜田澄子氏が後を引き継ぐことになった。翌88年、八尾市文化会館の柿落とし公演で、角倉氏原作、浜田氏演出による「河内版 ベルサイユのばら」を上演。1400人収容の大ホールに入りきれないほどの観客がつめかけ、大成功を収めた。

 「八老劇団」の出し物はすべてオリジナルである。民話や原作ものも、「河内版」として大胆に改編される。劇団十八番の「ベルサイユのばら」では、パリを訪れた八尾の親善使節が、ベルサイユ宮殿の大舞踏会で河内音頭を踊る。このシーンには、老人センターの大勢の仲間たちが友情出演して盛り上げる。

 一方で、浜田氏が書いた脚本は、練習中に劇団員たちのアイデアでどんどん変えられていき、本番はアドリブの連発で、公演時間が大幅に伸びてしまうという。自分のセリフを少しでも多くしたい、目立ちたい、お客さんを笑わせたいという、お年寄りたちの役者魂とユーモア、サービス精神が炸裂し、会場は爆笑の渦に包まれる。

 また八老劇団では、大道具・小道具・衣装から鬘まで、すべてが手づくりだ。物のない時代を生き抜いたお年寄りたちの知恵と経験、手先の器用さが活かされる。年間30〜40回の依頼公演と3〜4年に1度の自主公演はすべて無料公演なので、子供会や老人会、福祉施設などに招かれた際の寸志や、自主公演の時に集める広告費、カンパのほかは、自腹を切って活動を続けている。

 「セリフを覚えるのはボケ防止にもなる」という、元気で明るいお年寄りたちは、「寝たきりより出たきり」を合言葉に、体調と時間が許す限り、いつでも、どこへでも、みんなで集まって出かけて行く。仲間と助け合いながら創造する楽しみ、大勢の人に注目される喜び、お芝居を観た人に大笑いしてもらい、「楽しかった」「元気をもらった」と言われた時の感動が、劇団員たちに生きがいを与えている。

 情が厚く、ユーモアに溢れ、本音で生きる、今東光の小説の主人公たちを煮しめたようなメンバー揃いの「八老劇団」は、地域に愛される劇団として、今年、創立35年目を迎えた。おそらく日本でもっとも息の長い高齢者劇団であり、世界最高齢の劇団として、ギネスブックに登録申請することを夢見ている。

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