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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

秋田県 大仙市 2006年受賞

大曲の花火(全国花火競技大会)
花火師が技を競う全国大会

代表:高柳 恭侑 氏

2006年8月更新

活動紹介動画(1:50)
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写真
大曲の夜空を彩る花火

 列島各地の海辺で、湖畔で、都市の河畔や公園で繰り広げられる夏の納涼花火大会が、ようやくそのシーズンを終える頃、掉尾を飾るように花火師たちが、日本一の花火を競う腕比べのコンクールが、みちのく秋田で開かれる。8月最後の土曜日の全国花火競技大会「大曲の花火」であり、今年で80回目を迎える。

 古くから仙北平野の米作と雄物川の水運により栄えた大曲は、商業も盛んで、江戸時代から花火作りも行われていた。江戸時代の旅行家菅江真澄の著書「月の出羽路」の挿絵にも、大曲の郷で打ち上げられている狼煙(初期の花火)が登場する。明治43年、地元諏訪神社の祭礼の余興として始まった花火大会が、4回目の大正4年から全国花火競技会となり、 年々規模を拡大して今日では全国トップレベルの花火師が集う大会に発展している。

 雄物川の広い河原と水面を舞台に、川向こうに連なる出羽丘陵と大空を背景とする恵まれた環境の中で、全国から選抜された花火師が、アイデアと技の粋をこらして制作した花火を、自ら精魂を込めて打ち上げていく。競技は、多様な模様を色鮮やかに描き出す珍しい昼花火、夜空に大輪の花を咲かせる伝統的な尺玉割物、テーマ性と立体感・リズム感で個性を発揮する創造花火の三部門で展開される。丸く開くという花火の常識を破った創造花火は、大曲で始まり全国に広がった。また、競技花火の他に、地元の花火師が趣向を凝らした「大会提供花火」も色を添え、迫力ある光と音の饗宴を盛り上げる。

 人口4万人の街に、70万人もの観衆が集まる花火大会当日の運営は大変である。日ごろから主催者および花火関係者、警察・消防を始めとする行政当局、さらには市民有志との緊密な連携により、交通規制・会場の設営・入退場の誘導・花火の扱い等、安全面を最優先してすべてが進められている。

 「花火の街 大曲」では、夏だけでなく、冬の「新作花火コレクション」始め四季折々に花火が打ち上げられる。秋田新幹線の発着する大曲駅には花火関連のポスターやグッズが展示され、駅前の「花火通り商店街」には、市民交流プラザ・花火庵がある。また、花火好きの市民がNPO法人「大曲花火倶楽部」を結成し、花火関連イベントの企画や、ユニークな「花火鑑賞士」認定試験を実施して花火によるまちづくりを推進している。

 1979年西独ボンで打ち上げた日独親善花火が好評を博し、その後ドイツ各都市やハンガリー、韓国に招かれ、また1990年には「世界花火師会議」、1992年に「国際花火コンペティション」、2005年に「全国花火サミット」を大曲で開催し、花火を通じた国際交流・地域交流にも貢献している。

 2005年の市町村合併により、大曲市は大仙市となったが、「大曲の花火」の名は、変えずに引き継がれた。花火を愛する市民が、伝統をしっかり守りながら、絶えざる革新を進める「大曲の花火」は、これからも日本の花火の新しい歴史を切り拓いていくにちがいない。

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