活動詳細
岡山県 倉敷市 2006年受賞
大原美術館ギャラリーコンサート
美術館でのコンサートの先駆け
代表:大原 謙一郎 氏
2006年8月更新
一年中、観光客の絶えない「文化都市・倉敷」の魅力を支えているのは、落ち着いた街並みの景観と泰西名画のコレクションで有名な大原美術館である。
その大原美術館が誇るエル・グレコの「受胎告知」やクロード・モネの「睡蓮」などの名画が並ぶ展示室で、国内外の一流音楽家による臨場感溢れる演奏を楽しめるのが「大原美術館ギャラリーコンサート」である。
観客は名画を背景に、演奏家の息遣いすら聞こえるほどの近さで、まさに「音楽と絵画の融合」という全く新しい文化に接することができる。
始まりは、「私立美術館は公立と違い、個性と主張がなくてはいけない」という考え方を持つ先代理事長の大原総一郎氏が、1950年に美術館創立20周年記念行事として行ったのがきっかけで、その時購入したドイツ製ピアノ「ベヒシュタイン」は今も展示室の中央に置かれ、コンサートに使われている。その後5年ごとの記念行事でコンサートを行い、それが発展して1982年に第1回の「ギャラリーコンサート」がスタートした。今では年4回のペースで開催され、2005年12月に100回目を迎えた。
最近でこそ、美術館や博物館で開かれるコンサートが増えてきたが、大原美術館の「ギャラリーコンサート」はまさに草分けであり、実際に作品が展示されているギャラリーでのコンサートは、日本では今だに珍しい。
初回から出演者の質は高く、おしのびで訪れた美術館の雰囲気にすっかり魅せられ「素晴らしい名画の中で演奏したい」と自ら申し出て実現したピアノの巨匠リヒテルをはじめ、ヘルマン・プライ(歌手)、ミッシャ・マイスキー(チェロ)、堤剛(チェロ)、宮沢明子(ピアノ)、堀米ゆず子(バイオリン)など国内外の一流の音楽家に加え、後に国際的に活躍する若手音楽家の発掘にも力を入れており、現在は国際的バイオリニストの渡辺玲子も無名時代に登場した。
「美術館は作品を保存、収蔵するだけでなく、地域の皆さんに楽しんでもらう場でなければいけない」という信念を持つ現理事長の大原謙一郎氏と企画や出演者との交渉を担当する音楽プロデューサーの大原れいこ氏、そしてピアノの調律以外、いす運びからポスターづくりまですべて自前で準備する美術館職員に支えられ「ギャラリーコンサート」は回を重ねてきた。料金は三千円から五千円で、毎回250から300の座席はほぼ満席となる。
「倉敷の街に一流の演奏家を呼び、地域の人びとに新たな文化を体験して欲しい」という関係者の想いは広がりをみせ、1993年には倉敷の法人、個人の会員の方々により、郷土の中高生にクラシック音楽をプレゼントする会」(略称「クラプレの会」)が組織され、「ギャラリーコンサート」と同時期に生まれた「くらしきコンサート」に倉敷の中高生を招待する活動にもつながっていった。
大原理事長の「公演の高い質を保っていくことが今後最も大切なことで、これからも地域の皆さんに愛されるコンサートを続けていきたい」という言葉から、「大原美術館ギャラリーコンサート」が「文化都市・倉敷」に「音楽と絵画の融合」というもうひとつの魅力を加えていくことは間違いない。