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サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

秋田県 羽後町 2003年受賞

西馬音内盆踊保存会
幻想的で優美な踊りと華やかで威勢のいい囃子、700年の伝統を踊り継ぐ

代表:柴田 貞一郎 氏

2003年8月更新

活動紹介動画(1分52秒)
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写真
毎年8月16日〜18日に開催される盆踊り

 羽後町西馬音内は、雄物川の上流、横手盆地に位置している。当地の国指定重要無形民俗文化財、西馬内盆踊りは、700年前の正応年間に、源親という修行僧が豊年祈願として、人々に踊らせたものが起源とされる。時代は下って関が原の戦いの翌年、西馬音内城主小野寺一族が滅び、遺臣たちが主君を偲んで踊った供養の踊りが、この踊りと合体し、今の姿になったという。いずれにしてもたしかな記録は無く、西馬音内盆踊りの由来は、現在まで人から人へと語り継がれてきた。

 亡者を思わせる彦三頭巾に藍染めの浴衣、深くかぶった編み笠に艶やかな端縫い衣装、これらをまとった男女が、かがり火を中にして、優雅にそして流麗に踊る。対照的に櫓からは、賑やかで野趣あふれた囃子の音が流れ、夏の夜に幻想的な世界をつくり出す。“お盆恋しや かがり火恋し まして踊り子 なお恋し”と唄う一節に、優雅な情景が浮かんでくる。西馬音内盆踊りの特色の一つに、女性の着る美しい端縫い衣装がある。4,5種類の絹布を、家それぞれに、色や柄に工夫をこらして縫い合わせたもので、なかには祖母から母へ、そして娘へと受け継がれた貴重な衣装も少なくない。

 江戸時代中期に、西馬音内盆踊りは現在の本町通に移り、敗戦の年を除けば、今日まで絶えることなく踊り続けられてきた。1947年、戦後の混乱期に、地域の人々にとってかけがえのないこの伝統行事を、正しく継承し、保存したいという決意と情熱で、「西馬音内盆踊保存会」が設立された。会の活動の基本に、人間性にもとづく自己研鑽と、情操豊かな青少年の育成という理念があり、それだけに保存会会員には、踊りの指導者たる強い自覚が求められている。会員による毎月4回の練習、さらに一般町民のための月例講習会、年間60回を超える保育園児、小中学生、高校生を対象にした指導が、変わることなく熱心に行われている。伝統文化への関心と理解を深めることを願った、国内外での公演も数多く、こうした真摯な取り組みで、保存会は50年余の歴史を刻んできた。

 伝統保存が行政依存になりがちな現状にあって、「西馬音内盆踊保存会」が、意識や行動は勿論、財政面でも、終始自立の精神を貫いている点は特筆されてよい。基本型を重視し、踊りの根底にあるものを体得することを旨に、自分たちの踊りを、自分たちの力で、自分たちのために継承する会の姿勢は、間違いなく伝統保存会の本来の姿といえるだろう。

 1981年に西馬音内盆踊りが、先の重要無形民俗文化財の指定を受け、また1950年代から「新日本紀行」などマスコミに紹介されたことで、年々この魅力ある盆踊りは、広く知られるようになってきた。昨年は3日間で、13万6千人もの観客が西馬音内を訪れた。昔ながらの伝統の継承が、一層現代人の関心を呼ぶ。進む観光化と、望ましい形での伝統保存の両立を、今後の保存会に期待したい。

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