サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > サントリー地域文化賞 > 地域別受賞者一覧 > 山形交響楽団

サントリー地域文化賞

活動詳細

東北

山形県 山形市 2001年受賞

山形交響楽団
地域の人々の音楽への愛情を育み続けるプロ・オーケストラ

代表:村川 千秋 氏

2001年5月更新

写真
年間100回以上開催される
「音楽教室」

 1971年、「山形県のために、東北地方のために、山形交響楽団を設立しましょう」と題されたB5版7ページにわたる設立趣意書が、山形県各界の人々に配布された。“呼びかけ”責任者は、山形市出身の指揮者、村川千秋氏である。

 村川氏はアメリカに留学中、小さな田舎町にもコミュニティ・オーケストラといわれるプロまたはセミ・プロのオーケストラがあり、市民が日常的に質のよい、生の音楽を楽しんでいる姿にカルチャーショックを受けた。「本当の音楽は、都会にだけあるのではなく、人々の生活があるところに生まれ、育つのだ」と実感した。

 66年に帰国した村川氏は、東京で指揮者としてプロ・デビューを果たした後、故郷の友人や知人に「山形にオーケストラをつくりたい」と訴え続けた。共感の輪は徐々に広がっていった。71年、冒頭の設立趣意書5000部を村川氏が自費で印刷・配布。この呼びかけに応えて「設立懇談会」「設立準備委員会」が次々に結成された。そして、72年1月、東北初のプロ・オーケストラ「山形交響楽団」が誕生したのである。

 地域に音楽文化を育てるには、子どものときから本物の音楽に親しみ、音楽を理解し、愛することのできる環境づくりが重要と考え、同楽団では小・中・高校への巡回公演「音楽教室」に、設立時から積極的に取り組んだ。県内すべての学校で3年に1度公演を行い、求めがあれば他県にも出向く。年間100〜150回、これまでに延べ240万人の子どもたちが生のクラシック音楽を鑑賞、音楽教育にはかり知れない貢献をしてきている。

 村川氏の志に共鳴し、内外の一流奏者が次々に参加したこともあり、同楽団の演奏はハイレベルで、度々行っている東京公演でも高い評価を受けている。「山響の演奏で歌いたい」「山響の音楽を聞きたい」という声に応えての山形県内各地での依頼演奏会も多い。定期演奏会には県外からも熱心なファンが集まり、2000年には、市民を中心に「山響サポーターになりたい」という人たちによるファンクラブも結成された。

 現在、日本には24のプロ・オーケストラがあり、そのうち地方都市を拠点とするものは15楽団である。山響は、その中でも最も人口規模の小さい都市を拠点とする民間のオーケストラで、その運営は苦難の連続である。しかし、山響を愛し、地域の誇りとする人々のあたたかい支援によって、度重なる危機を乗り越えてきた。

 地域の音楽文化を育み、人々に愛され、支えられるコミュニティ・オーケストラとして地域に根づいた山形交響楽団は、村川氏の若き日の理想に近づきつつある。フィンランドの作曲家ノルトグレン氏に依嘱したオリジナル曲「ヤマガタ・ラプソディ」や、山形の風土にマッチした「シベリウス・シリーズ」の演奏を通じて、音楽による東北人のアイデンティティづくりに取り組み、更には「世界に通用する楽団」を目指して、より大きな理想の実現のために弛まぬ努力を続けている。

サントリー文化財団