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サントリー地域文化賞

活動詳細

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静岡県 浜松市 2000年受賞

浜松交響楽団
「楽器のまちを音楽のまちに」をスローガンに、音楽文化の発展に貢献

代表:丹羽 稔夫 氏

2000年5月更新

活動紹介動画(2:00)
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浜松交響楽団

 街のそこかしこから音楽が流れ、週末ともなると浜松駅前では、プロムナードコンサートが人々を楽しませる。国際ピアノコンクール、世界吹奏楽大会、本格的オペラやミュージカル、ジャズウィークそれに人材を育成するアクトシティ音楽院など、楽器の街・浜松では今、音楽を中心とした文化豊かな都市づくりが進んでいる。

 1976年、浜松市で浜松青年会議所が主催する日本青年会議所全国大会が開催された。記念事業を考える浜松JCのメンバーは、「楽器のまちにオーケストラがない」という現実に、浜松を音楽の街にしようと、新しく交響楽団を結成することを決意した。団員は一般市民から公募することにし101名が選ばれた。音楽監督として、長年全国のアマチュアオーケストラを指導してきた白柳昇二氏が指導にあたる。新生浜松交響楽団は同年10月のJC全国大会で、立派に記念演奏を成功させた。

 この時浜松JCがかかげたスローガンが、“楽器のまちを音楽のまちに”である。日本一の楽器製造都市・浜松のソフト化を指向するスローガンは、先見性に富み、その後の“音楽のまちづくり”政策に方向性を与えた。発足の経緯から「浜響」は、演奏者は演奏に専念し、運営は地元経済人である浜松JCのOBおよび現役メンバーが担う、ユニークな組織活動を今日まで一貫して行っている。

 1978年、「浜響」はアマチュアオーケストラとして全国でも数少ない財団法人化を実現した。楽団の財政基盤を確立し、行政や特定の企業から中立でありたい、という楽団の意思の現われである。こうした発想は、地元JCの地域貢献に対する理念、経営的感覚から生れ出たものといえる。演奏者の「我々は音を出すことだけを考えていればよい」という言葉も、楽器を持たない多くの運営担当者の、参画の喜びと努力に支えられているのである。

 音楽愛好層の底辺を広げる、これは白柳監督の音楽にかける夢である。会社員、公務員、コンピューター学校や幼稚園の先生、農業技師など団員の職業は様々だが、アマチュア交響楽団としてのレベルは全国屈指の水準にある。「浜響」の活動は年2回の定期演奏会が柱である。それとともに音楽愛好者の拡大を目的に、人気の高い言わば“音楽の出前”のオーケストラ教室、市内すべての小中学校訪問を目指す年12回の巡回コンサートを積極的に行っている。87年に浜松合唱団、続いて浜響楽友会オーケストラを発足させ、また91年の第1回「カルメン」に始まり「椿姫」、昨年の「三郎信康」と浜松市民オペラにも参加。さらに96年にはウィーン、ザルツブルグで初の海外公演を行い、音楽による国際交流もスタートした。様々な活動実績が「浜響」の発言力を強め、浜松市に国際コンクールの開催や本格的な音楽ホールの建設を実現させている。

 「浜響」発足以降、オーケストラに対する市民の認知度も大きく高まり、聴衆のレベルも年々上がっている。“将来は文化を産業に活かす”という楽団幹部の抱負も聞かれ、浜松交響楽団は、音楽文化都市浜松の中核的存在としての役割を果たしつつある。

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