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サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 札幌市 1998年受賞

YOSAKOIソーラン祭り
参加型の新しい祭りを創設し、全道あげての祝祭を実現

代表:杉岡 幸三郎 氏

1999年11月更新

活動紹介動画(2:00)
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写真
YOSAKOIソーラン祭り

 少年よ、大志を抱け!

 明治初頭、北海道開拓使の招きで来日し、札幌農学校(現在の北海道大学)の開設に尽力したクラーク博士が、帰国に際して生徒たちに残した言葉である。学生たちがつくった新しい祭り「YOSAKOIソーラン祭り」は、博士の精神が、現代の北海道に受け継がれている証といえるかもしれない。

 1991年、当時北海道大学1回生の長谷川岳さんが、たまたま訪れた高知で「よさこい祭り」に接した。南国特有のおおらかで明るい祭り、とりわけ、鳴子を打ち鳴らし、エネルギッシュに踊る人々に圧倒され、鳥肌がたつほどの感動を覚えたという。北海道に帰った長谷川さんは、仲間たちにその感動を伝え、自分たちの手で、誰もが参加できる札幌の夏の祭りを創ろうと呼びかけ、5人の大学生が実行委員会を結成した。

 札幌の中心部にある大通り公園と周辺の目抜き通りを使った参加型の祭り。ルールは、手に鳴子を持つこと、曲には北海道の民謡「ソーラン節」を必ずワン・フレーズ入れること。あとは自由。曲も振り付けも衣装も、すべて参加する人たちの創造性に委ね、街を舞台に、自由に思い切り踊ってもらいたい。口コミで増えた学生実行委員は、舞台づくりの裏方として奔走した。行政や警察への協力依頼や許可申請に対して返ってくる応えは、無理だ、駄目だの連続だったが、若者たちは夢を捨てず、粘り抜き、全力でぶつかっていった。

 92年6月、第1回YOSAKOIソーラン祭りがついに実現した。地元の9チームに加え、高知からよさこい祭りのグランプリ受賞チームを招き、千人の踊り手が乱舞する。4トントラックに発電機と大型スピーカーを積んだ地方車を先頭に、一チーム百人が一体となって激しく踊る。札幌の人たちは度胆を抜かれ、やがてその熱気に巻き込まれていった。観客数は20万人に上った。

 皆と一緒に創造する喜び、自らが主役となって注目を集める快感が参加者の心をとらえ、祭りは爆発的な勢いで規模を拡大していった。学校、職場、地域、仲間同士でチームを組み、幼児からお年寄までが祭りに向けて練習に汗を流す。全道の半数以上の市町村で踊りのチームが結成され、地元でも地域活性化の核として活躍している。札幌市内の商店街も、地域活性化のために祭りの会場を誘致し、自主的に祭りに参加するようになってきた。第8回目を迎えた99年には、333チーム3万4千人の踊り手が参加、観客数も193万5千人に達した。

 祭りの成長にともなって、運営母体は3度の組織変更を行い、98年4月、YOSAKOIソーラン祭り組織委員会と改名された。学生実行委員だけでなく、地元の幅広い層の人たちが参画している。彼らは、今や全道に波及し、道外からの参加者も増えているこの祭りを、リオのカーニバルに匹敵する祭りに育てたいという大きな夢を抱いている。歴史の浅い北海道では、伝統のしがらみがないだけに、新しい祭りの可能性は大きい。若者たちの夢を、地域全体の夢として育んでいくことも、北海道だからこそ、可能かもしれない。

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