活動詳細
沖縄県 那覇市 1997年受賞
おもろ研究会
沖縄最古の歌謡集「おもろさうし」の研究会を1000回以上継続、普及にも努力
代表:平山 良明 氏
1999年11月更新

金曜日の夕刻、首里城に隣接する沖縄県立芸術大学の研究室はおおいに活気づく。沖縄各地から『おもろさうし』に関心をもつ人々がぞくぞく集まってくる。
5〜6世紀から15世紀頃にかけて奄美・沖縄諸島で歌われた最古の歌謡を「おもろ」と呼ぶが、16〜7世紀に首里王府が「おもろ」を編纂したものが『おもろさうし』である。「沖縄の万葉集」とも言われるが、神様や太陽、英雄等を讃えた祝歌で、恋の歌は皆無である。まだ解明されていない意味や言葉が少なからず残されている。
「おもろ研究会」は、1968年、琉球大学国文科の助手や学生など若者を中心にスタートした。翌年、方言学の大家である故仲宗根政善氏の参加を得て本格的な研究活動が始まる。以来30年余、毎週金曜日の夜、実に1000回をこえる研究会が営々と重ねられてきた。
研究の目的は、当初は語彙の解釈、解明に重点がおかれていたが、現在は多角的に「おもろ」をとらえ、古代沖縄の生活、習慣、心情さらには日本文化のオリジンに迫りたいという方向に発展してきている。
そのこともあって研究会のメンバーは文学・言語学・民俗学・宗教学等の学者や研究者から、音楽・料理その他多様な分野の人々、或いは沖縄諸島の出身者にわたる。研究会では、「おもろ」の真意をめぐって侃々諤々の議論が戦わされる。時には居酒屋に席を移して談論深夜に及ぶ。一種謎解きの魅力もあるのかも知れない。
最近は琉球舞踊や音楽、紅型、焼き物等への若者の関心は高まりつつあるが、「おもろ」は難解な面もあり、容易に近づきがたい。研究会では新聞、テレビ、シンポジウム、カルチャーセンター等色々な機会を通じて「おもろ」の面白さのアピールに努力している。その成功例は「おもろの里・古琉球の旅」。新聞紙上で参加者を公募し、「おもろ」に縁のある地、島を訪れる旅行会である。春と秋の2回行っているが、要項が発表されると即日締め切りの人気である。現地での新発見や、訪問地の研究者との交流の広がりもあり、参加者は無論、研究会のメンバーにとっても、より深い「おもろ」の理解に役立っている。
研究会のメンバーから、地元の琉球大学や沖縄国際大学、県立芸術大学、県外でも甲南大学やハワイ大学等で教鞭をとる人材を輩出しつつある。
今や「おもろ研究会」のレベルは高く、地元の大学生、院生にとどまらず、県外の研究者、若者の参加も増えてきている。なかにはパソコンを駆使した手法で研究活動に新風を吹き込む例もあり、沖縄の新しい文化的ムーブメントの核になる可能性を秘めている。




