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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

長野県 下諏訪町 1996年受賞

諏訪交響楽団
長年にわたり、地域に密着したクラシック音楽演奏活動を継承

代表:武井 勇二 氏

1999年11月更新

写真
ウィーン演奏会でベートーベンの墓参り
(1999年6月)

 諏訪地方に西洋音楽の調べが流れ始めたのは、大正時代にさかのぼる。

 同地で楽器店を営んでいた今井久雄氏は、自宅に東京から講師を招いてバイオリン教室を開いた。同じ頃、歯科医の三輪良三氏も、ギター、マンドリンなどの合奏グループを愛好者と結成して音楽を楽しんでいたが、1924(大正13)年、この二つのグループは合同で、弦楽合奏団「諏訪ストリングソサエティ」を結成した。翌25年7月には創設記念満1周年の記念演奏会を開催したが、この日を起点に今日まで、諏訪地方のアマチュアオーケストラは75年の歴史を重ねることになる。その演奏会プログラムには「常に吾々の嘱望して止まざる芸術的生活への第一歩として当然為さなければならない使命の一つである」と、その意義を記している。

 「諏訪ストリングソサエティ」は、団員の関貞英氏が私財を投じて建設したホールを拠点に、楽器編成も木管と金管を加え、地元の合唱団との共演なども重ね、活動の幅を広げていった。名称もそれに応じて「諏訪フィルハーモニックソサエティ」、「諏訪音楽協会」と改称していった。

 苦境はたびたび訪れた。なかでも戦時体制下、出征や徴用で団員の数も減り、文化活動のできる雰囲気ではなかったが、出征兵の歓送迎や慰問演奏で活動の灯をともし続けた。戦争が終わると、眠っていたエネルギーが一気にあふれた。新しい団員も入り、早くも1946年に戦後初の定期演奏会を開催。それを機に団員を増やし楽器を充実させる5カ年計画を立て、それが達成された49年、2管編成、32名の「諏訪交響楽団」として再出発を果たした。

 現在、団員は約100名で、年齢は10代から60代までと幅広い。職業もサラリーマン、教師、医師、自営業、主婦など様々である。中には親子3代にわたる団員や、夫婦団員も数多くいる。諏訪地方を中心に年2回の定期演奏会、子どもにも親しめる曲目を選んだ「子供のためのコンサート」、県下各地域を巡回する「県民コンサート」などの公演を行っている。団員は、サイトウ・キネン・オーケストラやウィーン楽友協会のメンバーによるレッスンにも毎年参加し、技術の向上に余念がない。また若手の団員は、独自にアンサンブルを組織し、県内各地の公民館などで演奏活動を行い、文字通り地域に密着した活動を展開している。地域へのこだわりは、共演者に地域の音楽団体や地元ゆかりの音楽家を選ぶことにも現れている。

 これまで、小澤征爾氏、芥川也寸志氏、ロストロポーヴィチ氏など著名な音楽家との共演も数多く実現させるほどの実力を備えているが、あくまで手作りであたたかく、音楽の喜びがひしひしと伝わってくる演奏に、地元の人々は賞賛の拍手を惜しまない。

 98年には、長野オリンピック文化・芸術祭参加「5000人の第九コンサート」に団員が大挙参加したり、演奏時間3時間近い創作オペラの大曲に挑戦。99年には、団員70名による本場ウィーンへの演奏旅行という大事業を成功させるなど、常に新しい課題に取り組んでいる。

 戦前戦後を通じ地域に音楽文化を普及させようと、幾多の困難を乗り越え真摯に活動を継続してきた「諏訪交響楽団」には、創設者たちの精神が現在も脈々と息づいている。

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