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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

山口県 下関市 1994年受賞

下関市民ミュージカルの会
市民からの公募メンバーによる、オリジナルミュージカルを制作・上演

代表:伊藤 寿真男 氏

1999年11月更新

写真
オリジナル作
「ひとりぼっちの見習い魔女」

 脚本、演出、作曲、演奏、振付、舞台効果や装置などのスタッフからキャストまで、ミュージカルのすべてを市民の手でつくり出す「下関市民ミュージカルの会」が発足したのは、1988年のことである。以後11年間で17本のオリジナル・ミュージカルを制作・上演し、すでに延べ9万人以上の大人や子ども、若者たちが鑑賞している。萩市や山口市をはじめ県内各地で公演を行い、山口県の新しい文化として幅広いファンを持っている。

 同会の結成を呼びかけたのは、プロとして劇団「四季」の舞台に出ていた経験を持つ伊藤寿真男さんである。郷里の下関に帰り、長い間ステージを離れていた伊藤さんだが、ふとしたことから、子どもたちに見せるミュージカルを市民の手で上演しようと考えた。市内の舞台芸術分野で活躍する人たち一人一人に協力を呼びかける一方、新聞紙上でも広く参加者を募った。

 集まったのは、ほとんどがミュージカルは初めてという人ばかり。高校生から公務員、教師、会社員、保母、自営業、看護婦、主婦と年齢も職業も様々である。ズブの素人ばかりの出演者は、伊藤さんの厳しい指導のもとで練習を続け、時にはどうしても思い通りにできない悔しさに涙を流しながら、準備に1年を費やした。そしてついに、発足の翌年8月に、彼らは第1回公演として「時代を翔んだ子どもたち」を上演。昼夜6回の公演には6千人の観客が集まり、舞台に大きな拍手が送られた。

 このように、すべて一般の市民の手による本格的なミュージカルが継続して行われている例は全国でも大変珍しい。文化による町づくりを目指して市民ミュージカルを企画・上演した団体や自治体は数多いが、スタッフ力の不足から、東京の専門家を招いてこれを実現させたところが大半を占めるという。その結果、予算は膨らみ継続が困難になる。一回だけで終わったイベントでは、地元にノウハウが残らず、人も育たない。

 地元の人材だけでミュージカルづくりに取り組んできた「下関市民ミュージカルの会」は、毎年の公募によって新しい参加者を加えながら、回を重ねるごとにノウハウを蓄積し、着実に力をつけてきた。メンバーの中からは、東京でプロとして活躍する人たちも出ているが、彼らの存在と協力は、地元に残って活動を続けている人たちの励みとも支えともなっている。また、ミュージカルは総合舞台芸術であるため、同会の活動は下関の文化活動全体のレベルアップにもつながっている。

 当初は馴染みの薄かったミュージカルであるが、今では大勢のファンが次の公演を楽しみに待っている。同会では彼らのために、91年から隔月刊の会報「舞台裏」を発行。92年には、参加資格の年齢には満たないが、どうしてもミュージカルをしたいという多くの小中学生の声に応えて付属研究所を開設。94年からは県内の小中学校で巡回公演も行っている。

 同会の活動によって、下関にはミュージカルという新しい文化が誕生し、若々しい文化の風が吹き始めている。

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