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サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 函館市 1993年受賞

市民創作「函館野外劇」の会
五稜郭を舞台に、市民ボランティアのエネルギーを結集した野外劇上演

代表:フィリップ・グロード 氏

1999年11月更新

写真
野外劇フィナーレ

 夏、函館の街に夜の帳が降りると、国の特別史跡・五稜郭の土手と濠に浮かべられた野外特設ステージに照明が当たる。そして、函館を中心とした道南地方の民衆の歴史を語る大スペクタクル「五稜星よ永遠に」が、全長300メートルの舞台いっぱいに展開される。

 はるか昔、大自然の恵みと伝説の中で平和に暮すアイヌの人々。和人の侵入と対立。江戸時代の江差の賑いやキリシタン弾圧。箱館の開港、西洋人の来訪。五稜郭築城と旧幕府軍が最後の抵抗を試みた箱館戦争。さらに度重なる大火と空襲に見舞われながら、力強く歩み続ける函館の民衆……。劇の進行に沿って色とりどりの光が乱舞し、炎が燃え上がり、花火や噴水などの特殊効果も雰囲気を盛り上げる。広い舞台のあちらこちらで群舞や祭、民俗芸能も繰り広げられ、本物の馬も舞台を駆け抜ける。スケールの大きな演出は野外劇ならではの醍醐味である。

 欧米、特にフランスでは、夏の夜を彩るぺージェントとして人々に親しまれている野外劇であるが、日本ではまだ馴染みが薄い。草木が茂り、石垣と濠に囲まれた五稜郭が優れた演劇空間であることを直感したのは、40年来この街に住むフランス人神父、フィリップ・グロード氏である。

 グロード氏の生まれ故郷の近く、フランスのルピディフでは、古城を舞台に、住民ボランティアによる大掛かりな野外劇が上演され、年間30万人近い観客を集めるまでに発展している。これに刺激を受け、函館でも野外劇を上演できないものかと考えたグロード氏は、1986年、函館日仏協会の会員有志3人を誘い、ルピディフ野外劇を視察。帰国後、一行はルピディフ野外劇を手本に、野外劇上演のための準備会を開き案を練った。88年、「市民創作『函館野外劇』の会」を結成。マスコミを通じて市民に協力を呼び掛けたところ、参加希望や舞台衣裳に使う古着の提供などが相次いだ。この年開催された第1回目の函館野外劇は大成功を収め、以後、毎年開催。今では函館の夏の風物詩として定着している。

 台本は市民からの公募作品である。劇中の出演者は延べ約1000人。一人で何役もこなす人もいる。受付や会場の整備、衣裳、小道具、効果係として立ち働く人々の数も数百人に上る。これらはすべて市民のボランティアである。隣近所、友人同士、職場などで誘い合わせ、夏の2ヵ月間、11回の公演に参加する市民は、幼児から老人まで延べ1万4千人。

 「野外劇の成功のために、みんなが力を合わせる。一人一人が自発的に、自分ができることを手際よくこなしてゆく。まるで災害などの非常事態が起きたときのようでしょう?函館市民にとって、野外劇の上演は“非常平和事態”なんです」と、ある参加者は語る。野外劇の上演を契機に、ルピディフ野外劇との交流も深まり、97年には、野外劇の次なる飛躍のためにスタッフ10名を派遣した。さらに、日本では他に例を見ない、大規模な野外劇を成功させた市民のボランティア精神の高揚は、99年7月、NPO法人格の取得につながっていった。港町特有の開放性と進取の気性をもった函館、この地に根をおろした野外劇は、函館の市民文化の未来に大きな影響を与えることは間違いがないだろう。

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