サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > サントリー地域文化賞 > 地域別受賞者一覧 > 西軽井沢ケーブルテレビ

サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

長野県 御代田町 1993年受賞

西軽井沢ケーブルテレビ
世界一小さなたった二人のテレビ局で、町の情報を集積・発信

代表:石川 伸一 氏

2022年4月更新

活動紹介動画(02:01)
動画を観る
写真
ゲスト(中央)を迎えての生放送
「御代田 Today」

 長野県、JR小諸駅と軽井沢駅のほぼ中間にある御代田の駅構内に、恐らく世界で一番小さなテレビ局「西軽井沢ケーブルテレビ」のスタジオがある。このテレビ局では、制作から放映までのすべてが制作責任者の石川伸一氏と、レポーターの小泉和子さんの二人だけで行われている。

 スタジオには、あちこちから新しい情報がどんどん集まってくる。日中は二人で町の隅々を取材し、町の人たちにカメラとマイクを向ける。火事や事故のニュースが入ると、石川さんは真夜中でも機材をかついで現場に駆けつける。月曜日を除く毎日午後7時、18年間も続いている自主制作番組「御代田TODAY」の放送時間になると、二人はスタジオに据え付けたカメラの前に立つ。番組中にかかってくる電話を受けたり、VTRや様々な機械を操作しながらの生放送である。数年前まではケーブルの付設までこなしていたというから、まさに八面六臂の大活躍だ。

 西軽井沢ケーブルテレビが誕生したのは、1984年のことである。「この町で自分は一生生きていく。この町がよくなるために、子どもたちの未来のために、自分の手でできることは何か?」と考え、模索を続けていた石川さんが、ふとしたことで出会ったのがケーブルテレビであった。全くの素人だった石川さんは、地元の先輩ケーブルテレビ局からノウハウを学び、数年がかりで開局に漕ぎつけた。

 当初、加入者はわずかに10件。その状態が1年近く続いた。しかし、開局後すぐにスタートした「御代田TODAY」は、その日町で起きた事件や事故のニュース、各地区、学校などの行事や祭の話題など、住民共通の関心事を取り上げて徐々に人気を呼んでいった。全町民の出演を目指して、テレビ側から町に出て行き、人々と対話し、生活の中に溶け込んでゆく姿勢が効を奏したのだ。経営的に非常に困難な時期もあったがなんとかこれを乗り越え、現在の加盟数は約2870件。御代田町全世帯数の3分の2に迫ろうとしている。

 これまでに収録されたビデオの数は4700本をこえる。議会中継や選挙速報などの町政に関する情報、次第に様変りしてゆく町の風景、お年寄りに聞く昔話、少しづつ成長し、あるいは年老いてゆく人々の姿。これらはすべて保存され、リクエストに応じて生放送以外の時間帯に放映される。町と町に住む人々の毎日を、映像によって記録し、集積してきた貴重な資料でもある。

 西軽井沢ケーブルテレビの地道な活動は、町とそこに住む人々に対するあたたかい思いに満ち、人々との対話によって築かれた信頼と協力に支えられている。御代田町では、時代の最先端を行くテレビが、地域に根ざした手づくりの情報文化として、人々の暮しの中で生きている。中央からの情報を一方的に地方に流すだけになりがちなマス・メディアの力はあまりにも大きい。しかし、地域の情報を収集し発信し続ける彼らの活動は、超ミニ・メディアでありながら、こうした状況に一石を投じるものであり、今後一層の活躍が期待される。

サントリー文化財団