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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

島根県 雲南市 1991年受賞

鉄の歴史村づくり
ソフト・ハード両面から、たたら製鉄の生活文化を再生・保存

代表:植木 浩 氏

1999年11月更新

写真
銅生産開発施設での操業

 島根県吉田村は八岐の大蛇伝説の舞台になる斐伊川の上流にある。この辺りは花崗岩質の岩から砂鉄が採集でき、古代から伝わる「たたら製鉄」と呼ばれる製法によって、和鉄を生産し長く栄えた地であった。「たたら製鉄」とは、砂鉄を「たたら」と呼ばれる土で造った炉を使い、「たたら炭」という専用の木炭を用いて鉄を作る手法で、できあがった和鉄は「玉鋼」と呼ばれ、日本刀などに使用された優れた品質のものであった。

 ところが江戸時代隆盛を誇った和鉄の生産も、ヨーロッパから近代的な製鉄方法が取り入れられ、衰退の一途をたどり、「たたら製鉄」も大正時代にはその長い歴史のぺージを閉じることになった。

 鉄や木炭産業が奪われた吉田村は、その後人口が減り続け、1985年の国勢調査では人口2800人、高齢者の比率も20パーセントをこえる典型的な過疎村となった。1984年、当時村の地域振興課長だった藤原洋さんは、衰退の一途をたどる村の活性化には内発的な産業起こしと、地域の文化活動の興隆が必要だと考え、「鉄の歴史村地域振興計画」を策定し、「たたら製鉄」にまつわる有形、無形の文化遺産を技術の歴史と共に正しく保存、公開することを村の活性化と結び付けようとした。この計画に基づき、吉田村は86年に、「鉄の歴史村宣言」を行い、村挙げてこの事業に取り組むこととなった。

 たたらの炉を持つ「菅谷たたら」(重要民俗文化財)の復元、「たたら師」とその家族の生活の場である「山内生活伝承館」、たたら製鉄の歴史、文化、生活などを、映像、展示物、模型、写真、パネルで表現した「鉄の歴史博物館」の建設など、堰を切ったように関係施設ができあがった。また、村全体が博物館であるというコンセプトの中で、世界の製鉄史の拠点作りを行うことを目的に、「鉄の未来科学館」、「和鋼生産研究開発施設」などを含む「オープン・エア・ミュージアム」を建設、ハード面を着々と充実させた。

 その一方で86年より5年連続のシンポジウム「人間と鉄」、91年より3年連続の「地球と鉄」、94年より5年連続の「生きている鉄」を実施し大成功を収め、鉄に関する情報を蓄積するなどソフト面での進展も著しい。シンポジウムには、英国の国立ロンドン科学博物館のニイル・コスンズ館長をはじめ、技術者、歴史家、文化人類学者、ジャーナリストなど内外から様々な人を呼び議論を重ね、その結果、「鉄」に関する一大ネットワークを形成することができた。さらに、ソフト面の一層の拡充のために88年には「鉄の歴史村地域振興事業団」を設立し、学術研究事業、文化交流事業など、より高度で機能的な運営を図っている。

 ソフトとハードの蓄積によって日本の鉄の歴史、文化を集大成した吉田村の活動は、日本全国の地域活性化の範となっている。

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