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サントリー地域文化賞

活動詳細

関東

神奈川県 横浜市 1990年受賞

東横沿線を語る会
タウン誌出版を核とした、東横沿線の住民によるコミュニティ活動

代表:岩田 忠利 氏

1999年11月更新

写真
雑誌「とうよこ沿線」

 「死線をさまよっていた10日間のことは、自分にはわからなかった…。私は自分の人生を(病院のベッドの上で)毎晩考えた。『生きるとは…』『死とは…』。自問自答を繰り返すなかで、私は“生きる覚悟”を決めたのだった。」

 代表の岩田氏は生死の境から立ち戻った後、「一度失った命、拾いものの命、この命をなんとか社会のために役立てねば」と決意する。そして、岩田氏の呼びかけのもと1980年に「東横沿線を語る会」が誕生、コミュニティ雑誌『とうよこ沿線』は創刊された。

 東横線は、東京の渋谷から横浜の桜木町を結ぶ私鉄だが、路線が行政の境界線上を通っているため、駅の南北で行政区分が異なることも多く、駅の反対側に立派な病院や図書館があってもその詳細がわからないなど、日常の生活エリアに即した情報が入りにくかった。そのため同誌では、東横沿線を切り口に行政を串刺しにした形でエリアをとらえ、行政区分での情報の空白を埋めるために、沿線各地の情報をふんだんに盛り込んでいる。

 雑誌作りには学生、主婦、会社員、医者など、様々な職業・年齢層の会員たちがボランティア・スタッフとして参加している。編集、写真撮影、イラストをはじめ、書店への配布、家庭へのチラシ案内まで、すべてを自分たちの手で行う。B5版72ページの沿線住民のためのこの雑誌は、85年には「第1回NTTタウン誌大賞」を受賞。当初の隔月刊から現在は季刊になっているが、すでに73号まで発行されている。

 同誌には、長島茂雄氏、淡谷のり子氏、曽野綾子氏など、沿線に住む数多くの各界著名人からの寄稿、声援が寄せられている。変貌する町並を記録するために住民の持つ古い写真で構成する「アルバム拝借」欄や、沿線各地を特集する「我が町シリーズ」は小学校の副読本にも使用され、「沿線出会いコーナー」の婿探し、嫁探しでは100件以上の反響があった。東横線や自治体に対する住民の要望を雑誌にとり上げ、改善に結び付いたこともある。

 同会の活動は雑誌の編集に留まらず、沿線の外国人との交流を深める「外国人と日本語で話す集い」、渋谷から横浜までを歩く「NIGHT WALK」、雑誌編集の楽しみを学ぶ「移動編集教室」など、地域や読者との交流を深めるイベントも開催している。また、87歳になる女性会員の半生をまとめた『雀のお宿』を99年4月に出版、さらに20世紀の東横沿線の姿を21世紀に伝えていくために480点の写真を収録した写真集(全5巻)にも取り組むなど、書籍の出版にも活動を広げている。

 同会では、90年からパソコン通信ホスト局を開設して雑誌とのメディアミックスを進め、96年からはインターネットに切り替え、「とうよこ沿線ホームページ」、若いお母さんたちの情報交換の場「とうよこ沿線ママネット」、沿線の古い写真を紹介する「とうよこ沿線フィルムライブラリー」、商店や病院、各種施設を紹介する「とうよこ沿線きらりネット」の4つのホームページを作成。より多くの有益な情報を素早く提供し、沿線地域への浸透、広がりを強めている。

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