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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

沖縄県 うるま市 1989年受賞

演劇集団「創造」
郷土芸能とも交流し、独自の沖縄演劇の創造を続けるアマチュア劇団

代表:内間 安男 氏

1999年11月更新

写真
「コザ版 ゴドーを待ちながら」

 沖縄市(旧名コザ)に隣接する具志川市の一角にあるビルに設けられた50坪余りの専用稽古場では、今夜もそれぞれ勤めを終えて集ってきた、演劇にひたむきな青年たちが一心に稽古に励んでいる。傍のテーブルでは演出を担当する幸喜良秀氏を中心に、劇作や演技、制作などに携わる不惑をこえた面々が若者のように眼を輝かせてこれからの芝居づくりについて語り合っている。この人たちは、かつて琉大演劇や高校演劇でその青春を燃焼し、1961年に当時のきびしい沖縄の状況のもとで、舞台を通して自分たちをめぐる環境とその中で生きる途を問いつめようと演劇集団「創造」を結成し、以来今日までその情熱を持ちつづけて、営々と演劇活動を共にしてきた盟友たちである。

 これまで「創造」に関わった人は数百人に及び、その組織づくりに腐心したこともあったが、現在ではその経験にもとづき会則や会員資格などを一切廃し、演劇に情熱をもつ人たちの自由参加となっている。これがかえって演劇に打ち込もうとする人たちの積極的参加を誘い、またかつて参加してその後県外各地に散在する人たちがふたたび接触を持つなど、「創造」はエネルギッシュに生き続けている。

 「創造」の活動は、当初は沖縄に新劇を紹介するという啓蒙主義的立場に始まり、沖縄民衆の歴史的葛藤に応える演劇を展開していた。その後幾多の壁に直面しつつ、1970年代に入り沖縄の歴史と文化に学んで沖縄と自己の相対化の努力を重ね、その中から知念正眞氏による創作劇「人類館」が生みだされた。この劇は東京及び大阪でも公演の機会を得て大いに好評を博し、第22回岸田戯曲賞を受賞、「創造」の地歩は確実なものとなった。

 以来独自性と普遍性のある沖縄演劇を創作することに自信をもって立ち向かうこととなり、沖縄独特の舞台表現や、民衆の中に生きつづけてきた沖縄芝居の役者たちの芸を吸収することが試みられ、新しい沖縄演劇が創られてきた。沖縄芝居の役者や伝統舞踊家も客演して、それらの交流によって「創造」の舞台は幅が大きく広がってきている。

 現在、「創造」は若い劇団員を中心に、演劇理論や身体訓練、発声練習などの基礎的な勉強を続けながら公演活動を展開している。特に小空間における舞台表現の可能性を追求できるアトリエ公演に力を入れ、若手の劇作家の作品にも挑戦している。

 「継続は創造なり」が劇団の精神。この精神の下、「創造」設立時からのメンバーと若いメンバーとが演劇で結ばれている。さらに、地域の観客の協力があるからこそ、今日まで活動が持続され、21世紀へ向って前進できるのである。地域劇団の誇りと志を持ち、地域に根差した活動を続ける「創造」は、沖縄での演劇の新しい可能性を切り拓いていくだろう。

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