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サントリー地域文化賞

活動詳細

中国

広島県 広島市 1989年受賞

トワ・エ・モア
合唱を通じ、世代や国籍をこえた交流を続ける女性コーラスグループ

代表:田村 照子 氏

1999年11月更新

写真
輝く笑顔-コンサートの後で

 広島市の「老人大学」を卒業した仲良しおばあちゃん9人が、「このまま別れるのは惜しい。みんなで唱歌を歌えるようなグループができれば」と田村照子会長を中心に合唱団を結成したのが1976年春。以来、24年の歩みを経て、現在の団員数は70名、平均年齢77歳の「おばあちゃん合唱団」として地域の人々に愛されている。

 発足時には田村会長の実の娘であり音楽大学の講師を務める石橋尚子さん(指揮)、吉本澄子さん(伴奏)の自宅で行われていた練習も、今では場所を市立中央公民館に移し、毎回、全団員の9割近い60余名が、週1回(公演前には3〜4回)の練習に熱心に参加している。全員がなにがしかの持病や悩みをかかえたお年寄であるが、「残された人生を楽しみ、いつまでも明るく、社会の役に立つ存在であり続けたい」と願い、刑務所や社会福祉施設への慈善訪問を中心とした公演は年間40回をこえる。

 「トワ・エ・モア」とはフランス語で「あなたとわたし」を意味する。「60歳以上の女性ならどなたでも」の唯一の会則のもと、友が友を呼び、メンバーは増えていった。昭和の激動期を生き抜いてきた世代で、広島という場所柄から被爆者健康手帳を持つ団員も多いが、それだけに「お互いの過去は問わない、語らない」をモットーに、明るく生き生きと活動するおばあちゃん達の若々しい歌声は人々の心に感動の息吹を吹きこむ。

 トワ・エ・モアの舞台では小学校唱歌を中心としたコーラスの他、半ズボンやセーラー服姿のおばあちゃんが続々と登場し、女性の半生をユーモラスに描く「幼なじみ」といったリズムゲームが舞台せましと繰り広げられる。ラストシーンでは出産の喜びを表現したベビー服姿のおばあちゃんまで登場する。また、お年寄にはタブーとされる「ボケ」や「死」をテーマとした即興劇が行われることもある。アメリカ西海岸や中国・重慶など、これまで7回の海外親善公演を行い、英語、中国語の歌を披露した。

 「合唱を通じ、世代や国籍を越えた交流を行い、地域社会に役立つこと」を目指して活動を続けるトワ・エ・モアに触発され、県下に11の「おばあちゃんコーラス」が誕生、相互交流や合同合唱会を開催している。また、89年7月には、全国オールド・コーラスの大会が広島で開催され、主催者としての重責を果たした。

 「トワ・エ・モアに入って明るく元気になった」、「おしゃれになった」と家族の評判も上々、中には「電話の声を嫁と間違われるようになった」というおばあちゃんもいるほど。老いて輝く―溌刺とした歌声と笑顔とともに、今まさに青春真っただ中のおばあちゃん達である。

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