活動詳細
佐賀県 多久市 1985年受賞
多久古文書の村
学者と住民が一体となり地域の古文書の収集・整理を進める郷土史研究活動
代表:秀村 選三 氏
1999年11月更新

佐賀県の中央部に位置する多久市は、中世の多久氏統治以来の古い歴史を有する地域であり、江戸時代には、日本でも数少ない孔子廟が創建されている。これに隣接する郷校東原庠舎では170年間もの長きにわたって学問を奨励し、当時「多久では、百姓も鍬を置いて道を説き、雀は論語をさえずる」とまで言われた。
そういう土地柄であった多久には、中世の後藤家文書に始まり、近世の多久家文書、副島家文書、鴨打家文書などの豊富な古文書が代々伝えられている。戦後、時代の急激な移り変わりに伴って、地域内の貴重な古文書が次々に散失していく状態を見かね、1955年頃から、当時多久市図書館司書であった細川章氏が村の人々の協力のもとにこれらの古文書の収集・整理を始め、68年からは研究者たちが彼女を支援協力するようになり、78年「多久古文書の村」が結成された。
「多久古文書の村」の特色は、地域の人々や研究者との交流、協力のもとに古文書を整理、保存し、地域の歴史を学び、その研究成果を地域に還元することを第一の目的としていること。第二は硬直した制度形態を排し、和気豊かな共同体としての「村」組織とし、村長、村民、寄合、公役、株などの遊び心に富んだ呼称を用い、同志感を大切にしていることである。
主要な活動は、古文書の発掘、現地での整理・保存、調査・研究、目録や史料集の編纂・発行であるが、最も重要な活動は、古文書学校の運営であろう。地元の20代から70代まで約40名が毎月2回集まり、古文書の勉強に熱中する。近所の旧家の納屋で見つけた古文書の読解に目を輝やかせる80歳代の老人、1文字の読解に1時間以上も辞書を引っ張りまわしてようやく解読した時の喜びを語る主婦たちが、古文書を通じて自らの土地の歴史に触れる。
これまで、『丹邱邑誌』はじめ『大聖寺文書』『水江臣記』など数多くの史料集を刊行。現在、多久最大の『多久御屋形日記』に取り組み、2000年には第1巻を刊行する予定である。
また、京都まで赴いて「草場文庫」の目録を整理したり、雨漏りで傷んだ大塚廟山遺愛の漢籍を曝書し、復旧に尽力する。これら多久ゆかりの資料が多久市に寄託・寄贈されたのをきっかけに、93年、「多久市先覚者資料館」が設立された。
「古文書の村」はこの他にも、海外からの留学生や学者に宿を提供し、合宿研修する場を与え、また名誉村民として村の運動に加わってもらうなどの国際交流活動、古文書に記載されている赤米、綿花などの植物を実際に栽培して生活を体験するなど幅広い活動を行っている。
これらの活動は村民の無償の「公役」と年額3000円の「株」の拠出によって行われている。九州大学名誉教授でもある秀村選三村長は、「西南日本の歴史の『定点観測』の一つの点として多久の歴史を大切に後世に伝えていきたい」と抱負を語る。「大きく、派手に、速く世の中にアピールしていくのが現代の風潮であるが、私達は小さく、地味に、ゆっくり本格的なものをめざして進みたい。静かな勇気を持ちたい。」




