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サントリー地域文化賞

活動詳細

四国

香川県 高松市 1984年受賞

四国民家博物館(四国村ミウゼアム)(受賞時は「四国民家博物館」)
四国の古い民家を移築・保存。庶民の暮らしを伝える野外博物館

代表:加藤 達雄 氏

1999年11月更新

活動紹介動画(02:00)
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写真
重要文化財の「砂糖しめ小屋」

 香川県高松市の北東部、かつては源平合戦の舞台となった歴史の島、屋島のふもとに、四国各県の古い民家や民具類を移築・復元した四国民家博物館(四国村ミウゼアム)がある。「四国村」の愛称を持つこの博物館の約6万平方メートルの敷地には、ゆったりと間隔を取った30棟の建物と約1万点の民具が集められている。民家をはじめ、農村歌舞伎の舞台、サトウキビを搾る円錐型の小屋、和紙の原料を蒸す作業場、白壁の土蔵や石造りの蔵など。いずれも昔の人々の暮らしを彷彿させるものばかりだ。建物を巡る石畳の道には小豆島の石が敷き詰められ、四季折々の花や木々が彩りを添えている。

 1976年10月3日、愛媛県宇和郡広見町から移築した茶堂のお地蔵さんの開眼供養が作家の瀬戸内寂聴氏の手によって行われ、「四国村」がオープン。以後、着実に内容を充実させ、建物8棟、民具6514点が国の重要文化財の指定を受けているほか、9棟の建物が県や市の重要文化財に、残り13棟も一般文化財にそれぞれ指定されている。

 「四国中から古い民家を集め、保存する博物館をつくろう」という加藤達雄氏の発案に賛同した清水秋義氏、清水富雄氏親子が無償で土地を提供。施設一切は加藤氏が負担することで「四国村」が誕生した。高山市や川崎市などにも同様の博物館はあったが、民間のものは四国村だけで、専門家の評価も高い。調査研究を担当する研究室が併設され、専任の研究員が民俗資料の収集と調査研究にあたっており、『四国の民家と集落』など6冊の研究書が刊行されている。

 小豆島より移築した歌舞伎舞台では、1981年より毎年、小豆島農村歌舞伎保存会による歌舞伎が演じられるほか、96年からは澤村藤十郎氏を招いて「屋島篝火歌舞伎」も公演されている。また、江戸時代末期のわら葺きの農家で讃岐うどんの店が営まれたり、歌舞伎舞台や石蔵のギャラリーが一般にも無料で貸し出されるなど、移築された建物をうまくいかした運営で多くの人に親しまれている。

 「物質文明に慣れきった現代人にとって、民家のさりげない美しさが、今の生活を考え直すきっかけになることを願っている」と加藤氏。「四国村」ではその名が示すとおり、四国の自然の厳しさ、優しさと、そこに住んできた人びとの生活の証が、民家の黒光りした柱の傷や巧みに作られた民具のなかに感じられる。香川県では多くの小中学校が校外学習の場として「四国村」を利用しているが、並べてある民具はどれも手に取ることは自由。多少いたんだり、紛失したりすることはあっても、地元の小中学生をはじめ250万人を越える入場者が展示品に直に触れ、使い方を理解する意義の方が遥かに大きいという。加藤氏の願いは、「四国村」を訪れる人、一人一人に間違いなく伝わっていることであろう。

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