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サントリー地域文化賞

活動詳細

中部

岐阜県 岐阜市 1983年受賞

劇団「はぐるま」
一流のスタッフ・キャストを養成、県下の舞台芸術の発展に寄与する地域劇団

代表:こばやし ひろし 氏

1999年11月更新

写真
代表作「郡上の立百姓」

 汗が頬をつたい、瞬きが見える。手にとるようにわかる役者の心理。そして、鼓動までが聞こえてくるようだ。

 劇団「はぐるま」の専用劇場「御浪町ホール」での舞台である。このホールは収容能力100名程の小劇場で、劇団の創立25周年を記念して、1979年に完成したものである。演技する者と鑑賞する者が間近に対する「御浪町ホール」での公演は、演劇の醍醐味を十二分に味わわせてくれる。

 劇団「はぐるま」は、1954年岐阜市に設立された。シェイクスピア、ラシーヌなどの古典や木下順二をはじめとする日本の作品に取り組む一方、創作劇にも力を入れていった。特に、劇団設立10周年を記念して発表された「郡上一揆」(こばやしひろし作)は、同劇団の代表作ともいえる作品で、後に「郡上の立百姓」と改稿、改題、滝沢修氏を団長とする第2回訪中日本新劇団のレパートリーに選ばれた。このことによって、同劇団は大きな自信を得ることになった。

 劇団「はぐるま」は岐阜市民からも暖かい支援を受け、1967年には市民カンパによって鉄筋3階建の稽古場が建設され、そこで、小劇場活動を展開する。

 この頃から、劇団の演出、照明、音響、装置、衣裳、振付、作曲などのスタッフが急速に層の厚みを増していった。本来、一つの作品でせいぜい5回のステージが限度のアマチュア劇団にとって、長期の公演を可能にするために、それぞれの役割ごとに、複数のスタッフが育成されていったのである。60人しか入らない稽古場での小劇場活動は、最も成功したラシーヌの「フェードル」の26ステージをはじめ、毎回10ステージ以上を数えるまでになった。この成功を実現した劇団「はぐるま」のスタッフは、今や岐阜の総合的な舞台芸術の中心的存在となっている。

 また、子どものための芝居をという市民の声に応えて、1972年以来「親と子の劇場」を行うようになった。「はだかの王様」や「龍の子太郎」など楽しい童話やロマンあふれる物語の生のステージに毎年、岐阜市の1万人にも及ぶ親と子が拍手を送る。

 地域の中で、舞台という生の文化を創り続ける劇団「はぐるま」に寄せられる岐阜市民の期待は、年々大きくなっている。

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