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サントリー地域文化賞

活動詳細

近畿

大阪府 大阪市 1982年受賞

季刊誌「大阪春秋」
同人の研究家が集まり、知られざる大阪の歴史と文化を発掘・紹介する地域雑誌

代表:山田 政弥 氏

1999年11月更新

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百号を目指す「大阪春秋」

 歴史豊かな大阪のシンボル大阪城の東に創刊当初より「大阪春秋」の編集兼発行人をつとめた堀内宏昭氏の佃煮製造販売会社がある。季刊「大阪春秋」は1973年11月の第1号以来、すでに96号に達している。生粋の大阪商人と郷土研究誌の発行、この取り合わせは如何にも奇妙といえる。

 郷土史研究家、故牧村史陽氏が主催した「佳陽会」という史跡めぐりの会があり、堀内氏もその熱心なメンバーであったが、歩いてみて大阪の史跡の豊富さと、同時にその荒れかたのひどさに驚いた。「東京は掘り出してでも史跡を大切にするが、大阪は委細かまわず押し潰してしまう」―こうした堀内氏の思いが、雑誌による知られざる大阪の発掘、紹介に乗り出す動機となった。

 当時、同人は僅か7人。損はどれ位になるやろ、というのが編集会議の議題のひとつでもあった。だが、素人の悲しさ、初号の赤字は予想の倍にも達した。寄稿者への原稿料も無しという状況だった。が、1回や2回は好意に甘えても、号を重ねるにつけ、そうもゆかない。車代程度の薄謝も捻出せねばならないという火の車経営が続いた。

 これを支えたのは、在阪の学者、文化人の強力な支援であり、同人たちの献身的な努力である。同人は郷土史家のみならず、文学、美術など各分野にわたる人たちで固められ、現在は33名を数えるに至った。また、この雑誌が陽の当らない、地味な町の研究家に対し、発表の場を提供していることも大きな功績である。

 編集方針は、必ず毎号、特集を組むのが大原則となっている。「淀川」「河内のすべて」「大阪の道」「船場」と、大阪の知られざる面に照明をあて、浮びあがらせる。何年も前のバックナンバーの指定注文が増えているのも、この雑誌ならではの特色である。

 同人は、いずれも本業持ちで、今でも素人集団であることに変りはない。 しかし、賛助会費が本屋での売り上げに匹敵するまでに増え、財政的にも何とかトントンのところまでになった。

 1987年3月、同誌の生みの親とも言うべき堀内氏は78歳で亡くなられた。しかし、氏の遺志を継いだ同人たちは、特集百号を目指して雑誌づくりを続けている。

 現在、悲願達成まであと少し。大阪の歴史と文化、産業に関する同誌の膨大な資料と人脈の蓄積は、大阪の町づくりに大きく貢献し続けていくことだろう。

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