サントリー文化財団

menu

サントリー文化財団トップ > サントリー地域文化賞 > 地域別受賞者一覧 > カール・ワイデレ・レイモン氏(個人)

サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 函館市 1979年受賞

カール・ワイデレ・レイモン氏(個人)
手づくりハム、ソーセージの製造を通じた地域の味覚創出

1999年11月更新

写真
ありし日のカール・レイモン氏

 レイモンさんは函館の一角に居を構えて60年、一貫して、本物のハム、ソーセージとは何かということを、味によって語り続けてきた。ある人はレイモンさんのことを「お母さんが子どものために料理を作るような、そういう感覚で作り続けた人」と評す。

 レイモン氏は、1894年にドイツのカールスバートの食肉加工技師の家庭に生まれる。14歳の時から父の業を継ぎ、フランス、スペイン、ノルウェー、アメリカなど各国で修業。観光の目的で立ち寄った日本で一生の転機が訪れる。日本女性と故郷カールスバートへ駆け落ち、結婚。1924年から日本へ戻り函館に定住。ハム、ソーセージの自家生産を開始する。食習慣の違いなどの悪条件を克服しながら販路を拡大、戦争中は食肉不足や統制で店は閉店同様となるが、函館で頑張り続けた。戦後再び事業を拡張、「レイモンさんの手づくりのハム、ソーセージ」の評価は高まり、「その味は北海道でナンバーワン」と道民に親しまれ、熱烈なファンを増やしてきた。
 氏の誇りは、昔から一貫して添加物を使っていないこと。「添加物は細胞を殺してしまう。私の技術は細胞を生き返らせる技術だ」と言う。ソーセージやハムを包む皮もすべて本物の腸を使う。なぜなら植物繊維やビニールに包んでしまえば細胞が死んでしまうからである。すべてに手づくりの慎重さで対処して行く。例えばハム…まず肉を2週間塩水に漬け、そのあと12時間燻製にし、煮てからさらに燻製にする。ここまでが2週間で、1本のハムができあがるのに1ヵ月以上かかる。サラミになると天然乾燥が必要なので2ヵ月半から3ヵ月半はかかる。大量生産が大きらいなレイモンさんの信念により現在も少量しか生産しないため、函館市内の特定の30店と東京、大阪の2、3のデパートにのみ商品を卸している。

 レイモンさんは、1987年12月、93歳の天寿を全うされた。氏が一生かかって築いた技と味は、2人の日本人技師によって引き継がれ、「函館カール・レイモン社」として生き続けている。また、レイモンさんが亡くなられた翌88年、函館元町の旧工場跡にレイモンの味を気軽に味わえるショップを作り、さらに92年には見学施設を併設した工場を建て、レイモンさんのプロフィールや当時の加工機械を展示して、多くの人々にその業績にふれてもらっている。人々に親しまれた「レイモンさんの手づくりハム」は、函館の味として、長く愛され続けている。

サントリー文化財団