Forum:Issue Forum 010 Civil-Military Relations

Forum Report

「グローバルな文脈での日本」の第10回となる研究会は「市民社会における軍隊」をテーマに大阪のサントリー文化財団で開催し、アメリカと日本における政軍関係についての議論を行った。(詳細はレポートをご覧ください) 最初に前陸軍士官学校教授のマシュー・モーテン氏が「U.S. Civil-Military Relations: The Myth of Objective Control(アメリカの政軍関係─「客観的コントロール」という神話)」と題する報告の中で、アメリカの大統領と軍隊の関係を、独立戦争から現代に至る歴史的変遷の中で説明した。モーテン氏によると、大統領は明確な世界観や安全保障の意義、国益のための戦略を理解し、それを説明する能力が求められる。一方で軍の指導者は戦争のあらゆる局面で優れた能力を発揮し、軍隊の利益を犠牲にしてでも大統領に尽くさなければならない。また、アメリカ国民の多くは軍人を尊敬しているが、それは彼らが非党派であるからであり、軍人はその立ち位置を守り、育んでゆくことが大切であると説いた。

続いてコロンビア大学政治学部准教授の彦谷貴子氏は、第2報告「From Containment to Engagement: Japan’s Civil-Military Relations in a Time of Change(「封じ込め」から「積極的関与へ」:変革期にある日本の政軍関係)」を行った。かつて自衛隊の任務は自国を防衛することのみだったが、冷戦が終わり日米同盟のあり方が再検討される中、その役割も変化してきた。20年前であれば自衛隊がイラクに派遣されるなど誰も想像できなかっただろう。彦谷氏は2004年と2014年に行った調査をもとに、自衛隊に対しての文民と自衛官の意識の変化について説明した。それによると、これまでのところ両者の間に大きな認識の違いは存在しないが、今後、日米同盟のあり方や自衛隊に犠牲が生じる事態があれば、両者の間に緊張が生じるかも知れないと述べた。

研究会に引き続き、関西のマスコミ関係者を招き、「グローバルな文脈での日本」プロジェクトの代表の一人である、ウォータール大学教授のデイビッド・ウェルチ氏による特別講演会を開催した。ウェルチ氏は、研究会の紹介を行うとともに、課題先進国である日本について研究することは海外の研究者にとっても意義があり、また日本からも積極的に情報を発信してゆくことが重要であると語った。