2025.09.29
未来を「パッカ~ン」と開く! 万博から生まれたサントリーの「お客様参加型ビール」とは

サントリーの酒類部門において「やってみなはれ」の精神を体現する挑戦的な取り組みを担う部署として立ち上がった未来開発部。その新規事業のひとつが「パッカ~ンPROJECT」です。
このプロジェクトでは、お客様と一緒に商品をつくりあげる参加型の新しい開発スタイルを通して、お客様に新たな価値を提案しています。「パッカ~ンPROJECT」担当のサントリー株式会社 未来開発部 瀬尾梨紗子さんに、その奮闘ぶりを伺いました。
「やってみなはれ」の精神から生まれた「パッカ~ンPROJECT」
瀬尾さんは2025年4月、新卒から4年在籍した東北広域営業本部から未来開発部へ異動。「パッカ~ンPROJECT」で、お客様と一緒に「ワールドKANPAIビール」を開発するという、まったく新しいビジネスに取り組んでいます。
瀬尾さんが所属するサントリー株式会社は、主にビール、スピリッツ、ワインなどの酒類事業を展開。そのなかで未来開発部は、酒類の新規ビジネスを日々模索している。
瀬尾さん:未来開発部は、お酒の未来を探る「探索」、新しい需要を掘り起こす「新需要開拓」、新しい価値を形にする「新価値創造」の3グループで構成されています。私は新需要開拓グループの所属で、新しいビジネスの発掘に挑んでいます。
「パッカ~ンPROJECT」は、「お客様参加型の新しい商品開発モデルのプロジェクト」と銘打っていますが、具体的にどのようなプロジェクトなのでしょうか。
瀬尾さん:「パッカ~ンPROJECT」は、お客様参加型の商品開発スキームとして立ち上がりました。プロジェクト名は新たな商品が“パッカーン”と生まれ変わる瞬間を意味しています。
その第一弾としてお客様と一緒に「ワールドKANPAIビール」を開発。大阪・関西万博に合わせて4月にベースとなるビールを発売し、お客様の声を募ったのち、9月9日にお客様の声を反映したビールを発売しました。
「ワールドKANPAIビール」のコンセプトは、世界のみんなで乾杯したいビールをつくるというものです。お客様と一緒に開発するというプロジェクトの趣旨に加え、さまざまな方が集う場である万博にもピッタリの商品となっています。
世界93の国・地域からの約3万人の声から生まれた「みんなのビール」
9月9日に数量限定で全国で販売をスタートした「ワールドKANPAIビール」。350ml、500mlの2サイズをラインナップ。
瀬尾さん:「ワールドKANPAIビール」の商品開発プロセスでは、まず2025年4月に万博会場やポップアップストアで、ベースとなるビールを発売。そこから4〜5月にかけてお客様から開発のためのさまざまな声を募集しました。
それらの声を反映しながら開発を進めると同時に、商品ができあがる過程を公式LINEなどで積極的に発信。お客様も開発に関わっているという感覚を味わっていただくことを目指しました。
「ワールドKANPAIビール」のベースとなる味わいのビールを万博会場で販売。
瀬尾さん:ひとつのビールの味わいに対しても、その感じ方は人それぞれです。そこでホームページ上で、国別の嗜好性の違いや著名人のアンケート結果と比較できるような仕掛けも用意して、お客様が楽しんで参加できるよう工夫しました。
できあがった「ワールドKANPAIビール」は、万博会場はもちろん、全国のスーパーなどで限定発売されています。

万博会場で募集したこともあり、「ワールドKANPAIビール」には世界93の国・地域から約3万人ものお客様の声が届いたそうですね。多様化するお客様のニーズをダイレクトにキャッチできたことで、商品開発のヒントにもなったとか。
瀬尾さん:お客様の声はフリーコメントも含めてすべて分析したのですが、ポイントとしては2つあります。まずはベースとなるビールが「爽快で飲みやすい」というプラスの評価が多かった点です。そこでベースの飲みやすさをキープしながらオリジナル感を出すことを考えました。
もうひとつは、刺激の再定義です。刺激=炭酸と思いがちですが、アンケートやフリーコメントから、お客様は香りや飲みごたえも刺激として捉えていることがわかりました。
そこで「ワールドKANPAIビール」では、香りや飲みごたえも強化。さまざまな角度からほどよい刺激を感じられるビールとなっています。そういったお客様とのコミュニケーションを通じて、改めて「ヒントは現場にある」ということを痛感しました。
お客様参加型のものづくり——「やってみなはれ」を世界に
瀬尾さんは、よりお酒の価値を高めたいという気持ちから、営業から社内公募の制度を利用して未来開発部に異動。
未来開発部に異動してすぐに「パッカ~ンPROJECT」を引き継ぎ、担当しているそうですが、この半年でどんな学びや経験がありましたか。
瀬尾さん:未来開発部に異動して1週間後には、ひとりで万博会場を訪れ、お客様の声を直接聞きました。「いつ発売?」「本当に声は反映されるの?」「どう回答するの?」というような質問に答えたり、完成品へのご期待の声をいただくことも多く、お客様と直接対話することの重要性を改めて認識できたと思います。
プロジェクトの担当は私ひとりですが、同じグループのメンバーにサポートに入ってもらったり、さまざまな部署のメンバーと横断的に連携しながら作業を進めています。関わる部署がかなり多く、確認作業など大変に感じることもありますが、自分がリーダーとしてプロジェクトを回すやりがいを感じています。
万博会場では未来開発部のメンバーと乾杯! 瀬尾さんは今回のプロジェクトを完遂するまで、何度も万博会場に足を運んだそう。
瀬尾さん:バイヤーの気持ちになって考えるという営業時代の経験は、今の業務でもとても役立っています。例えば、資料作成でも相手の視点を意識することで関係部署の理解を得やすくなりました。
一方で、苦戦したのはお客様のインサイトを深掘る視点や利益や数量などの設計です。これからも経験を積みながら、自分なりにアップデートしていきたいです。
この「パッカ~ンPROJECT」は、お客様の声をダイレクトに反映するという、サントリーの新しい挑戦でもあります。今後は「次世代のものづくり」のかたちとして、新たなビジネス展開も想定しているそうです。
瀬尾さん:実際にお客様から「開発から完成・発売まで一貫して携われるのが魅力」という声を多数いただいています。開発を進めながら商品の中味やデザインをブラッシュアップできるスキームを確立できているので、お客様の声に敏感に応えられると同時に、お客様からは商品への興味や愛着を持ってもらいやすいと考えています。
このスキームはビジネスモデルとして特許取得しており、今後は、サントリーの商品はもちろん、ほかの企業との展開も期待できると考えています。今後、プロジェクトの第2弾も検討して、「参加型ものづくり」をさらに拡大していきたいですね。
9月9日、万博会場でお披露目となった「ワールドKANPAIビール」。会場内のフードトラックエリアのキッチンカーで販売されている。
「パッカ~ンPROJECT」のようなチャレンジングな取り組みは、まさに「サントリーらしさ」を象徴していると語る瀬尾さん。営業部門から未来開発部への異動を通して、今まで以上にそう感じるようになったそうです。
瀬尾さん:まだビジネスのタネでしかなく利益創出ができていないものに対しても、未来を見据えてGOサインを出す。それがまさにサントリーらしさだと思っています。
そういうマインドは個人だけでなく、チーム全体にも浸透しています。私自身、営業部門から異動してからの半年間は、ゼロからの取り組みであっても「失敗を恐れずとりあえずやってみる」を強く意識してきました。今はサントリーの「やってみなはれ」を体現すべくひたすらチャレンジする日々です。
「パッカ〜ンPROJECT」なら、よりお客様の嗜好にあったお酒が開発できる、と瀬尾さん。
※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。
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瀬尾梨紗子Risako Seo
サントリー株式会社
未来開発部
2021年に新卒でサントリー株式会社に入社。東北広域営業本部第1支店で酒類部門の家庭用営業を担当。2025年4月より未来開発部 新需要開拓・横断グループ配属となり、「パッカ~ン PROJECT」を担当。休日は旅行とキャンプでリフレッシュするのが楽しみ。