2025.05.19
サントリーの「ドリンク スマイル」活動が目指す、お酒との共生社会の作り方

サントリーでは、飲める人・飲めない人すべてが「お酒の場」を楽しめる社会を目指し、「ドリンク スマイル」活動に取り組んでいます。お酒の文化を知り、適正飲酒の大切さを発信。そして、さまざまなノンアルコール(以下、ノンアル)ドリンクを通して、新しいお酒の楽しみ方を提案し続けています。
そんなサントリーの描く「お酒との共生社会」について、サントリー株式会社 ビール・RTD本部の吉田祐也さんに語ってもらいました。
サントリーでは飲む人も飲まない人も「ドリンク スマイル」
「お酒は、なによりも適量です。」というメッセージ広告を1986年から展開してきたサントリーでは、長年にわたって、ほどほどにお酒を楽しむ「適正飲酒」の大切さを訴えてきました。2024年11月には 「お酒との共生社会実現」と「お酒文化継承」を組み合わせた啓発活動として、「ドリンク スマイル」活動も新たにスタートしています。
体質的にアルコールを受けつけず、お酒がまったく飲めないというサントリー株式会社 ビール・RTD本部ノンアル部の吉田祐也さんは、「ドリンク スマイル」の目的を次のように話します。
吉田さん:お酒を飲む人も飲めない人も、お酒のある場を一緒に楽しめる。そんな社会を実現したいというのが、サントリーの想いです。そのための活動のひとつとして「ドリンク スマイル」活動を位置づけています。
サントリーではこれまでもさまざまな形で適正飲酒のメッセージを発信してきた。
「ドリンクスマイル」では具体的にどういった活動をしているのですか。
吉田さん:取引先企業、自治体、大学向けにセミナーを開催しています。動画を見てもらいながら、アルコールパッチテストや、お酒の種類を紹介するクイズ、お酒の泡や香りの体験などを通して、「適正飲酒の大切さ」と合わせて「お酒の価値」を楽しみながら学んでいただいています。
サントリーの「ドリンク スマイル」の特徴は、単にノンアル商品の紹介や心身の健康とお酒の関係性だけでなく、「お酒の文化や魅力」をセットで伝えているところです。
お酒の奥深い魅力を知ることで、飲める人も飲めない人もより「お酒のある場が楽しい」という気持ちになれます。そこで同じ時間を共有することで、新しいつながりや発見が生まれ、それがサントリーの企業理念にある「『人間の生命(いのち)の輝き』をめざす」ことにもつながっていくと思います。
「ドリンク スマイル」活動では、2030年までに20万人にセミナーを体験していただくことが目標です。これにより次世代にお酒文化をつなぎ、飲む・飲まないという条件に縛られない「未来の飲み人」を増やしていけると考えています。
「ドリンク スマイル」が目指すのは、適正飲酒とノンアルコールも含めた「お酒」によって笑顔がもたらされる「お酒との共生社会」。
「ドリンク スマイル」は「我慢」から「攻めのノンアル」へ
吉田さん:新しいお酒の楽しみ方・付き合い方を提案する「ドリンク スマイル」活動は、サントリーのノンアル事業とも密接に連携しています。飲む人も飲まない人も、ともにお酒を楽しむ文化を社会に浸透させ、新たな価値観を創出することは、ノンアル市場の成長にもつながっていきます。
2024年時点でノンアルの市場規模は1055億円。これは飲料・酒類市場の1%ほどです。サントリーでは、ノンアル市場は2030年に1400億円に成長、将来的には最大8000億円規模になると予測しており、大きなポテンシャルを秘めていると考えています。
サントリーでは、これまでビール、ワイン、RTD(Ready To Drinkの略。栓を開けてそのまま飲めるアルコール飲料の総称)事業のそれぞれに存在していたノンアルチームが、「ノンアル部」として統合され独立した部署となったことも、サントリーのノンアル市場への攻めの姿勢が表れています。
吉田さんも2025年4月にRTD部のノンアルチームから、ノンアル部へ異動。ブランドマネージャーとして、ノンアル製品全般を担当しています。
サントリーでは「飲めない人」はもちろん、あえて「飲まない人」も。飲めない本人よりも周囲が気にかけてくれることが多いそう。
吉田さん:2025年4月には、「攻めのノンアルしちゃおっか。」というコピーでCMも展開。「あえて選ぶノンアル」というメッセージを発信しています。
ノンアルというと、これまでは運転や健康のために「我慢」するための飲み物として、ネガティブ、もしくは受動的なイメージで捉える人も少なくありませんでした。しかし、これからのノンアルは、お酒の場を楽しむために「積極的に」選択する飲み物になると、吉田さんは力強く語ります。
吉田さん:ノンアルコール飲料は、決して清涼飲料ではなく、「アルコール0.00%」の「お酒」です。そこにあるのは、お酒を通して人をつなぎ、時間・空間を分かち合うことの大切さや、お酒文化から得られる学び、食を豊かにして生活文化を成熟させるお酒の価値があります。
そのような新しい価値を生み出すことで、「むしろノンアルを飲みたい」というニーズを高めることを目指しています。
また、そのニーズに対応するためには、ビールだけでなく、ワインやRTDも含めて充実させて、おいしいノンアルを提供していくことで、好みに合わせた飲みたいノンアルを選べるようにしていきたいです。
サントリーが提供するノンアルカテゴリーはビール、ワイン、ウイスキー、RTDと多岐にわたり、それぞれのカテゴリーで培った知見が活かされている。
“飲めない”ことも仕事の武器になる
サントリーでは、イベントや打ち上げなど社員が集まってお酒を酌み交わす機会もあると思いますが、お酒が飲めなくて困ることはないのでしょうか。
吉田さん:サントリーにはとても一体感のある雰囲気があります。お酒が飲めない僕も、そういう場を一緒になって楽しんでいます。
飲めない社員はもちろんですが、飲めるけれど「今日はノンアルにしておこう」という社員もいます。それぞれのスタイルを周りも自然に受け入れてくれるので、誰もが自分のスタイルで楽しんでいます。
サントリーのお酒の席では「やわらぎ水」文化がある、と吉田さん。飲み会の後半では、自然と誰かが全員分の水を注文してくれるそう。
吉田さん:お酒が飲めないからサントリーで働くのが不利なのかといったら、まったくそんなことはありません。
そもそもサントリーにはお酒以外の飲料もありますし、健康食品なども扱っています。お酒の担当者にも僕のように飲めない人間もたくさんいます。
ブランドマネージャーとしてRTDの商品開発では、「味見」も重要な仕事のひとつです。お酒の飲めない吉田さんは、日本酒の利き酒のようにして、お酒を口に含むことで味を確認していると話します。
吉田さん:私はアルコールに敏感な分、人より味の違いがよくわかるんです。ですから、このお酒の味はおいしい、イマイチだなど、味を判断するときに自分の感覚がとても役立ちます。
専門人財が集結するサントリーの商品開発体制
現在はブランドマネージャーとして、数々の商品を並行して手がける吉田さんに、サントリーでの働きがいやブランドマネージャーとして仕事についても聞いてみました。
吉田さん:私は「ブランドマネージャー」というマーケティングの立場ではありますが、担当する商品の開発やデザインはもちろん、生産、営業、さらには法務や品質保証などカバー範囲は非常に多岐に渡ります。そのため、他部署のメンバーと協力しながら、商品を世に送り出しています。
サントリーのブランドマネージャーは、担当する商品の頂点というより、それぞれのプロフェッショナルな人材をつなぐ水平組織のハブ的な存在。私を含めてどのメンバーも、自分の役割を限定的に捉えず、専門的な知見を活かしながら違う領域にも踏み込んで意見を交わしています。
例えば、デザイナーが商品開発担当者と一緒になって、さまざまな議論を交わすことも日常茶飯事です。商品開発に関わる各部門のメンバーがブランドマネージャーの視点を持っています。
常に「現状維持」ではない前向きな社風がサントリーの好きなところ。時に侃侃諤諤な議論があり、その後に飲みニケーションがある、それがサントリーのカルチャー。
チームが一丸となって目標を達成する──。困難にぶつかっても、そのチーム力が大きな支えとなり乗り越えていけると、吉田さんは語ります。
吉田さん:頼り合える仲間とチームとして挑戦するスタイルこそ、サントリーで働く魅力のひとつであることに間違いありません。
お酒の魅力をもっと深く知ることで、飲める人も飲めない人も自由にお酒の場を楽しめる──。吉田さんは、お酒の文化を伝えていきながら、チームが団結してノンアル市場へのチャレンジを続けることで、そんな未来を創り出していこうとしています。

吉田祐也Yoshida Yuya
サントリー株式会社
ビール・RTD本部ノンアル部
2012年に新卒としてサントリーホールディングス株式会社に入社。原料部で、酒類原料等を担当する。その後、2014年より酒類営業部門の北陸支店へ配属され、4年間営業企画業務を担当。2018年からはRTDのマーケティング部門にて、「-196℃」、新商品開発、ノンアルコールRTDを担当。2025年から現職。