1. サントリーTOP
  2. 企業情報
  3. ニュースリリース
  4. 「シュニトケ&ショスタコーヴィチ プロジェクト」とは
ニュースリリース
  • (2019/2/13)

「シュニトケ&ショスタコーヴィチ プロジェクト」とは

■プロジェクト1&2 について
旧ソ連という社会体制の歪みのなかにあって、時代の荒波に翻弄されながらも、芸術家としての良心と誇りを持ち、優れた芸術作品を生み出し続けた2人の作曲家、ドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)とアルフレート・シュニトケ(1934-1998)。20世紀以降の芸術家の営みと社会との関係を考える上で欠く事ができない彼らの作品を、「室内楽」と「チェンバー・オーケストラ」の2つのプログラムで側面を分け、不穏な気配に包まれる現代からそれぞれ照射してその本質に迫った、完全オリジナル企画。「室内楽」では、作曲家の心奥に潜む凄絶な内面を容赦なくえぐり出し、「チェンバー・オケ」では一転、遊びや毒、パロディーをも含むプログラミングで、作品の外へ向かうエネルギーをダイナミックに力強く描きだしました。

〈トッパンホール17周年 バースデーコンサート〉
シュニトケ&ショスタコーヴィチ プロジェクト1―室内楽

日時:2017年10月1日(日)
出演:
山根一仁(ヴァイオリン)
北村朋幹(ピアノ)
モルゴーア・クァルテット

曲目:
ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン・ソナタ Op.134(1968)
シュニトケ/ピアノ五重奏曲(1976)
ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲第15番 変ホ短調 Op.144(1974)

シュニトケ&ショスタコーヴィチ プロジェクト2―チェンバー・オーケストラ

日時:2018年3月25日(日)
出演:
井上道義(指揮)
山根一仁(ヴァイオリン)、北村朋幹(ピアノ)
トッパンホール チェンバー・オーケストラ
曲目:
シュニトケ/コンチェルト・グロッソ第1番(1976-77)
ぺルト/タブラ・ラサ(1977)
シュニトケ/モーツァルト・ア・ラ・ハイドン(1977)
ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲第1番 ハ短調 Op.35(1933)

■受賞記念公演にあたって

トッパンホール プログラミング・ディレクター
西巻 正史

 2016年にホール15周年事業が評価され、栄誉ある「サントリー音楽賞」をいただきました。この歴史ある賞のイメージは「著名な作曲家、指揮者、演奏家(団体)に与えられる栄誉」というもので、コンサートホール、それもホールの主催公演を中心とした活動が評価対象になるとは予想だにしなかったので、「寝耳に水」でした。
 トッパンホールで、これまで私が10数年にわたって手がけてきた企画の考え方は、「主催事業のラインナップが単なる公演の羅列ではなく、総体としてある種のメッセージ性を持ち、ホールの意思を体現すること」「アーティストのファンを作ることのみならず、ホール事業のファンを作り、ホール文化を醸成すること」、そしてその結果、「トッパンホールが優れた音響特性をベースに、“人格を持って活動する生命体”として内外から認識されること」でした。さらに近年は、ホールで徹底して創る公演が圧倒的な比重を占めるようになりました。
 しかし、こうした公演を可能にし、今回の受賞に至らしめたのは、私たちの意を汲み、それに共感し出演してくださった多くのアーティストの皆さま方、マネジメントの方々、そして地味な室内楽のコンサートを長年にわたってサポートしてくださっている協賛各社の皆さまの深いご理解のおかげです。また、こうした活動を受け止める素地を持った素晴らしい日本の聴衆の皆さまの存在は、世界に喧伝するに値いする財産だと思います。
 今回の受賞記念コンサートは、もっともトッパンホールらしい形で、トッパンホールと深く関わってくださっている皆さまと創りたいと思い、このような形のコンサートになりました。
 シュニトケのConcerto for Threeは、シュニトケ60歳の誕生日を祝うために、クレーメル、バシュメット、ロストロポーヴィチが委嘱した作品。今回はトッパンホールのこれまでを一緒に築いてくれた代表として、チェロのウィスペルウェイ、トッパンホールが育ててきたアーティストのリーダーとしてヴァイオリンの山根一仁、そして、おそらくこれからホールとさらに深い関係を持っていくであろうアーティスト達の代表としてヴィオラのメンケマイヤーを指名しました。「弦のトッパン」らしい布陣と自負しています。そしてショスタコーヴィチ、シュニトケを語る上で欠くことのできないマエストロ井上道義。さらにオーケストラの面々には、これまでトッパンホールのステージで名演奏を繰り広げてくださったアーティストの方々に一人でも多く出演していただけるよう試みたつもりです。
 アーティストの方々、お客さまと、この時間を共有できたら望外の幸せです。

【第47回(2015年度)サントリー音楽賞贈賞理由 トッパンホール】
 トッパンホールは2000年10月、凸版印刷株式会社の創業100年を機に設立され、2015年の秋に開館15周年を迎えた。客席数408の親密な空間と優れた音響特性を有する日本有数の室内楽ホールだが、贈賞にあたってはそれに加え、1シーズンに30回を超える主催公演が高く評価された。ハーゲン・クァルテットによるモーツァルト・ツィクルス(2015年10月1~4日)、ピアノのピーター・ゼルキン(同10月5日)、ヴァイオリンのジュリアーノ・カルミニョーラとヴェニス・バロック・オーケストラ(同10月23日)、1887年製ニューヨーク・スタインウェイを用いた「アンドレアス・シュタイアー プロジェクト 9」(同12月8日)など、2015年の記念公演には質量ともに目覚しいものがあった。
 またクラリネットのアンドレアス・オッテンザマー(2016年2月26日)、ヴァイオリンのレジス・パスキエ(同3月24日)、ピアノのジャン=クロード・ペヌティエ(同5月8日)など、作品の知名度にとらわれない積極的なプログラミングを推進してきた功績は大きい。
 「エスポワール」や「日下紗矢子 ヴァイオリンの地平」など、日本の若手の発掘や育成を目指したシリーズ企画も充実していた。
 同ホールの主催公演で特筆に値するのが「歌曲の森~詩と音楽」のシリーズである。これまでマーク・パドモア、イアン・ボストリッジ、クリスティアン・ゲーハーヘル、ナタリー・シュトゥッツマンなどによってピアノ伴奏つき歌曲の真髄が披露されてきたが、2015年度はテノールのクリストフ・プレガルディエンとピアノのミヒャエル・ゲースによるリーダー・アーベント(同5月13日、15日)がこれに続いた。リートという地味なジャンルで、これだけの企画を実現させ、しかも聴衆の幅広い支持を獲得していることは驚嘆に値すると言えよう。

【プロフィール】
トッパンホール
 凸版印刷株式会社の創立100周年記念事業として、社会文化貢献活動の一翼を担う目的で設立された。2000年10月1日開館。音楽ホール運営にクラシックを選んだ理由のひとつには、西洋という一地域で生まれた音楽文化が世界的に普及・発展した背景に、楽譜の存在と印刷技術が大きく関わっていることがある。世界的にも稀有な“響きすぎない”クリアな音響を特長とし、室内楽に最適な音響と木のぬくもりに満ちた親密感の高い空間を有する。席数408。
 年間30数本を数える主催事業では、徹底して質の高さにこだわり室内楽の豊かさと可能性を追究。欧米の第一線に伍すると国内外の多くのアーティスト、聴衆から評価される独自の内容で、その企画力と実現力には高い信頼が寄せられ、近年はヨーロッパの音楽シーンにもプログラム面でさまざまな影響を与えている。開館初期から、ハーゲン・クァルテット、故ライナー・クスマウル(ヴァイオリン)、ジュリアーノ・カルミニョーラ(ヴァイオリン)、アンドレアス・シュタイアー(フォルテピアノ)、ティル・フェルナー(ピアノ)等のアーティストとオリジナル・プロジェクトを展開するほか、海外の有望な若手の日本初リサイタル、邦人若手の発掘・育成にも積極的、継続的に取り組み着実な成果を挙げる。ほかにも、マスタークラスやイベント等を通じたクラシックファン層の拡大、地域貢献などその取り組みは広く、独創性に富む運営は凸版印刷のメセナ活動としても注目を集め続けている。

【出演者プロフィール】
指揮:井上道義 Michiyoshi Inoue

1946年東京生まれ。桐朋学園大学卒業。71年グィド・カンテルリ指揮者コンクール優勝。ニュージーランド国立交響楽団首席客演指揮者、新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督、京都市交響楽団音楽監督兼常任指揮者、大阪フィルハーモニー交響楽団首席指揮者、オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督を歴任。これまでに、シカゴ交響楽団、ベルリン放送交響楽団、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラなどに登場している。
99年から2000年にかけ、新日本フィルハーモニー交響楽団とマーラーの交響曲全曲演奏会を行い、「日本におけるマーラー演奏の最高水準」と高く評価された。07年、ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクトを企画立案、音楽・企画の両面で大きな成功を収めた。17年には、同プロジェクトを収録した「ショスタコーヴィチ交響曲全集at日比谷公会堂」CD・BOXをリリース。14年4月、病に倒れるが同年10月に復帰を遂げる。15年、全国共同制作オペラ《フィガロの結婚》(野田秀樹演出)を総監督として指揮し、10都市14公演の巡回公演を大成功へと導いた。10年京都市文化功労者、公益社団法人企業メセナ協議会「音もてなし賞(京都ブライトンホテル)」受賞、16年渡邉曉雄音楽基金特別賞、東燃ゼネラル音楽賞受賞。大阪国際フェスティバル2017「バーンスタイン:ミサ」およびショスタコーヴィチの交響曲2曲をとり入れた大阪フィルハーモニー交響楽団定期演奏会が高く評価され、18年、「音楽クリティック・クラブ賞」「大阪文化賞」「大阪文化祭賞」を相次いで受賞。
オフィシャルサイト http://www.michiyoshi-inoue.com/

ヴァイオリン:山根一仁 Kazuhito Yamane
1995年生まれ。富岡萬、水野佐知香、原田幸一郎らに師事。2014年桐朋女子高等学校音楽科(共学)首席卒業。同大学ソリスト・ディプロマ・コース全額免除特待生。15年よりドイツ国立ミュンヘン音楽演劇大学に留学し、クリストフ・ポッペンに師事。09年第63回全日本学生音楽コンクール中学校の部全国大会第1位。10年、中学3年生で第79回日本音楽コンクール第1位。同コンクールで中学生の1位は26年ぶり。岩谷賞(聴衆賞)など5つの副賞受賞。11年第60回横浜市文化賞文化・芸術奨励賞最年少受賞。12年岩谷時子音楽文化振興財団「Foundation for Youth賞」。15年青山音楽賞新人賞、第26回出光音楽賞受賞。18年第19回ホテルオークラ音楽賞受賞。これまでに秋山和慶、井上道義、大友直人、高関健、山田和樹らの指揮でバーミンガム市交響楽団、NHK交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、東京都交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団等、国内外のオーケストラと共演を重ねる。トッパンホールには、12年に〈ランチタイム コンサート〉で初登場。史上最年少で〈エスポワール シリーズ〉に抜擢され、全3回のコンサートすべてで満場の喝采を浴びた。17/18シーズンは〈シュニトケ&ショスタコーヴィチ プロジェクト〉を核となって引っ張ったほか、ヴィオラのニルス・メンケマイヤーとのデュオでも新たな側面を聴かせ、更なる可能性を感じさせた。
オフィシャルサイト http://kazuhitoyamane.jp/

ヴィオラ:ニルス・メンケマイヤー Nils Mönkemeyer
ブレーメン生まれ。豊かな音楽的才能と革新的なプログラミングが高く評価され、「最も国際的に活躍しているヴィオリストの一人」(南ドイツ新聞)として、注目を集める。ミュンヘン音楽演劇大学でハリオルフ・シュリヒティヒに師事。2006年、ユーリ・バシュメット国際ヴィオラ・コンクールとドイツ音楽コンクールで優勝、09年にはロンドンでパークハウス賞を受賞した。これまで、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、WDRケルン放送交響楽団、ベルリン放送交響楽団、シュトゥットガルト放送交響楽団、ウィーン放送交響楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団等と、ホグウッド、マリナー、マイスター、ミンコフスキ、ザンデルリンクらの指揮のもと共演。15年2月にはカンブルラン指揮/読売日本交響楽団と共演し大成功をおさめ、3月のヨーロッパ・ツアーにも同行した。室内楽でも活躍目覚ましく、ザビーネ・マイヤーやユリア・フィッシャーらから篤い信頼を得ている。世界各国の著名なコンサートホールに出演するほか、ラインガウ音楽祭、メクレンブルク=フォアポンメルン音楽祭、ロッケンハウス室内音楽祭等にも登場している。
ソニー・クラシカルと専属契約を結び、アルバムはいずれも高く評価されて多くの賞を獲得。現在、ハイデルベルク・フィルハーモニー管弦楽団のアーティスト・イン・レジデンスを務め、17年にはリューゲン春の音楽祭の音楽監督を務めた。後進の指導にも熱心に取り組み、ドレスデン・カール・マリア・フォン・ウェーバー音楽大学教授、マドリッドのソフィア王妃高等音楽院准教授を経て、11年よりミュンヘン音楽演劇大学の教授を務める。使用楽器は、ミュンヘンのヴァイオリン工房でペーター・エルベンによって製作された。トッパンホールには2018年6月に続き、2度目の登場。
オフィシャルサイト http://www.nilsmoenkemeyer.com/de/

チェロ:ピーター・ウィスペルウェイ Pieter Wispelwey
古楽器と現代楽器の垣根を一早く越えた演奏家であり、今なお最先端の演奏家であり続ける。J.S.バッハから現代作品に至る広範なレパートリーは、様式美に寄せる深い洞察、独創的な解釈、驚異的な技巧の結晶であり、批評家と聴衆を隔てることなく聴く者すべての心を捉えている。オランダのハールレム生まれ。アムステルダム時代の恩師であるディッキー・ブッケとアンナー・ビルスマの指導を通じ、また米国と英国でそれぞれ師事したポール・カッツとウィリアム・プリースの薫陶により、音楽家としての素養を磨いた。1992年には、優れた若手オランダ人音楽家に贈られるオランダ音楽賞を、チェリストとして初めて受賞。ソリストとして、ボストン交響楽団、シドニー交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、BBC交響楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団など世界の主要なオーケストラと共演。フィッシャー、サロネン、ブロムシュテット、ユロフスキ、ノリントンといった著名指揮者とも共演している。現代のチェロ界で最もカリスマ性あるリサイタリストとの呼び声が高く、ロンドン、パリ、アムステルダム、ベルリン、ミラノ、シドニー、ニューヨークなどで定期的にリサイタルを開催。20枚を超えるCD録音はチャンネル・クラシックス、オニックス等からリリースされ、複数の重要な国際的な賞を受賞。2012年には50歳を記念し、3回目となるバッハ無伴奏チェロ組曲全曲録音を行ってイーヴル・ペンギン・クラシックス・レーベルからリリース。以降も意欲的にレコーディング、リリースを続ける。使用楽器は、ジョヴァンニ・バティスタ・グァダニーニによる1760年製のチェロと、ロンバウツによる1710年製のバロック・チェロ。トッパンホールには08年の初登場以来たびたび出演、意欲的なプログラムで毎回聴衆を魅了している。
オフィシャルサイト http://www.pieterwispelwey.com/

管弦楽:トッパンホール チェンバー・オーケストラ Toppan Hall Chamber Orchestra
トッパンホール主催公演において、毎回プログラム特性に合わせてメンバーが選ばれ、都度結成される一期一会の室内オーケストラ。直近では2018年3月のシュニトケ&ショスタコーヴィチプロジェクト2で、今回と同じ井上道義の指揮のもと腕を鳴らした。4月の公演でも、今回のプログラムに合った顔ぶれが集められる。
※オーケストラーメンバーは決定次第、www.toppanhall.comにて発表

  

以上