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ニュースリリース
  • No.13425(2019/3/28)

サントリー文化財団 2018年度 海外出版助成の決定

 公益財団法人サントリー文化財団(理事長 鳥井信吾)は、2018年度の海外出版助成として、下記の10件を助成対象に決定しました。助成総額は722万円です。

 当助成事業は、海外における日本理解の促進を目的に、日本語で書かれた優れた研究業績、または日本について書かれた書籍の外国語への翻訳および外国語での出版に対して助成を行うものです。

 昨年度までに英語をはじめ、計25ヵ国語による298件の出版を助成対象として決定し、日本人の業績や日本文化を幅広く海外に紹介しています。

*選考委員
遠藤 乾氏(北海道大学教授)
久保 文明氏(東京大学教授)
白石 隆氏(熊本県立大学理事長)
張 競氏(明治大学教授)
渡辺 靖氏(慶應義塾大学教授)

― 記 ―

1.本年度の助成対象図書の概要
ア.英語での出版
『China, Japan and Britain: East Asian International Relations and First Sino-Japanese War(日清戦争前と東アジア国際関係と日英関係)』(鈴木悠著)
西洋列強や日本が中国・朝鮮に進出した19世紀後半の東アジア国際関係史は、近年日本の研究によって見直されている。本書は、こうした研究成果の紹介に加えて、これまで未使用の資料を用いて当時のイギリスの外交方針の分析も行い、英語圏の読者に歴史の新しい見方を提示する。Routledge社(イギリス)より出版予定。

『Self-Similarity in Language(言語の自己相似性)』(田中 久美子著)
2010年度サントリー学芸賞受賞作『記号と再帰』の続編。統計物理学の方法論を用いて、人文学の観点から人間の言語が持つ普遍的な構造を具体的に捉え、その意味を考察する意欲作。Springer International社(アメリカ)より出版予定。

『Hate Speech in Japan: The Hate Speech Elimination Act and Its Non-Regulatory Approach(日本のヘイトスピーチ規制 ― ヘイトスピーチ解消法と非規制アプローチの可能性と限界)』(奈須 祐治、桧垣 伸次他編)
日本のヘイトスピーチ解消法を英語で初めて本格的に紹介する研究書。表現の自由を尊重しつつ、ソフトな手法でヘイトスピーチに対抗する、世界的にもユニークな日本の制度について、この分野を代表する研究者たちが論文を寄せる。ケンブリッジ大学出版会(イギリス)より出版予定。

『私小説 from left to right』(水村 美苗著)
日本初の横書き日英併記の小説で、著者の半自伝的作品。アメリカ社会の中で日本語を求め、葛藤する「私」を描くことで、言語の問題について、形式と内容両面から迫る。既に翻訳出版されている評論『日本語が亡びるとき』と好一対となる。コロンビア大学出版会(アメリカ)より出版予定。

『Tokyo Stories: Art, Photography, Graphic Design(トーキョーストーリーズ:美術、写真、グラフィックデザイン)』(レーナ・フリッチ、クララ・ポラード著)
世界最初の大学博物館アシュモレアン美術・考古学博物館(オックスフォード大学)で、2020年夏に開催される展覧会にあわせて刊行される。東京の文化的変遷について、江戸から現代まで、浮世絵から漫画、映画などのポップカルチャーも含めて紹介する。アシュモレアン美術・考古学博物館(イギリス)より出版予定。

『A Kamigata Anthology: Literature from Japan's Metropolitan Centers, 1600-1750(上方アンソロジー:日本の都の文学1600~1750)』(スミエ・ジョーンズ著)
江戸から明治にかけての日本近代文学アンソロジー3部作の第1部。第2部(江戸アンソロジー)、第3部(東京アンソロジー)は既に出版し、最終の刊行となる。俳諧や絵巻、旅日記、歌舞伎や浄瑠璃など、大衆文化が開花した江戸期の上方文化を論じることで、日本独自の近代化の動きを明らかにする。ハワイ大学出版会(アメリカ)より出版予定。

『Metabolism of the Imagination: Visions of the City in Postwar Japanese Architecture and Science Fiction(想像のメタボリズム:戦後の日本建築とSFに見る都市のヴィジョン)』(ウィリアム・O・ガードナー著)
1960年代初めに起こった建築のメタボリズム(新陳代謝)運動と、阿部公房、小松左京から、ウィリアム・ギブソン、リドリー・スコットに至るSF作品には終末論的なヴィジョンが共通するという。SFと建築、都市の関係の再考を迫る。ミネソタ大学出版会(アメリカ)より出版予定。

イ.ポルトガル語での出版
『Ozu』(ドナルド・リチー著)
進駐軍のタイピストとして来日後、多くの日本の文化人や映画人と交流し、海外に日本文化や映画を積極的に紹介したアメリカの映画批評家ドナルド・リチー(1923-2013)による小津安二郎論(『Ozu: His Life and Films』)。この20年ポルトガルでは日本映画に関する書籍は出版されておらず、本書の翻訳出版により、同言語圏への波及も期待される。カリフォルニア大学出版会より出版予定。

ウ.ロシア語での出版
『永遠の都』(加賀 乙彦著)
昭和10年から22年の日本における、4家族の複雑な人間関係を描いた長編大河小説で、日本では現在全7巻の文庫版として出版されている。この時代の日本社会と日本人を生き生きと描き、現代日本小説の到達点の一つとされる大作。著者はロシア文学の愛読者であり、ドストエフスキーやトルストイに通じる大河小説の出版により、日露相互理解への大きな貢献が期待される。ギペリオン社(ロシア)より出版予定。

エ.中国語での出版
『リズムの哲学ノート』(山崎 正和著)
『装飾とデザイン』『世界文明史の試み』の続編であり、『演技する精神』に始まる著者の壮大な思想史構想の完結編となる著作。西洋思想をはじめ、中国思想においてもリズムの問題に哲学的な考察を行ったものはなく、芸術や文学、科学の発展にリズムの影響を見る本書の翻訳出版により、中国語圏の多分野に新しい知見を提示することができる。復旦大学出版社(中国)より出版予定。

2.これまでに助成を決定した中から、2018年度中に次の書籍が完成しました。
『東トルキスタン研究』(王 柯著、英語、中文大学出版社)
『戦史叢書第26巻「蘭印・ベンガル湾方面海軍進攻作戦」』(防衛庁防衛研修所戦史室編、英語、ライデン大学出版会)
『【Re】TOKYO』(タイラ・アロンソ・ジン・ハビエル著、英語、Oro Editions社)
『日本の昔話』(ダリー語、KOODAKANA出版)
『日本近現代短編小説集』(ノルウェー語、SolumBokvennen社)
『教会領長崎』(安野眞幸著、ロシア語、ギペリオン社)

  

以上