Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

カンパリ・シェカラート・ミスト

カンパリ 30ml
ビーフィータージン47度 30ml
シェーク/ロックグラス
材料をシェークしてクラッシュドアイスを詰めたグラスに注ぐ
*注意。一般的に知られているのはジンを加えないシェカラート

カンパリ・オレンジ

カンパリ 45ml
オレンジジュース 適量
ビルド/タンブラー
氷を入れたタンブラーにカンパリを注ぎ、オレンジジュースを満たして軽くステア。スライス・オレンジを飾る

カンパリ・スプリッツ

カンパリ 30ml
白ワイン 30ml
ソーダ水 適量
ビルド/ワイングラス
氷を入れたグラスに白ワイン、カンパリを注ぎ、ソーダ水で満たす
*白ワインとソーダ水ではなく、スパークリングワインでつくってもよい

シェークした、シェイクスピア

時折、思い出したように飲むカクテルがいくつかある。「カンパリ・シェカラート」もそのひとつ。イタリアを代表するハーブ系リキュール、カンパリを単純にシェークしたものである。

連載17回『罪つくりな、赤い酒』の中でも紹介しているが、シェークすると特有の苦みがまるくなり、とても口当たりがよくなる。それにカクテルグラスに注がれると、赤い華やぎを放つ。

女性がバーカウンターで「カンパリ、シェークで」とか「カンパリ・シェカラートを」とか、サラッとオーダーしたならば粋だ。またレストランで食前酒として飲んでも様になる。素敵な大人の女性に映るのだ。

ただし、わたしの「カンパリ・シェカラート」は「カンパリ」とロンドンドライジンの「ビーフィータージン47度」を1対1でシェークするのである。これもイタリア人の好む飲み方のひとつである。

ジンが加わることでアルコール度数は高くなり、また「カンパリ」というリキュールの抱いた甘みが抑えられる。カクテルとしての面白み、ジンが甘みを切る、といった表現になるだろうか。

お酒が好きな女性のなかには、甘みを敬遠される方もいらっしゃる。その方たちにはジンを加えたシェカラートをおすすめする。


かなり前のことになるが、イタリアン・レストランのウエイティング・バーで友人が飲んだことのない食前酒を試したいというので、ジンとの1対1のシェカラートをすすめて、ふたりで飲んだ。彼はえらく気に入ってくれた。

そのとき、イギリスのジンとイタリアのリキュールの結びつきから、ある疑問がアタマに浮かんだ。ヨーロッパの古典文学に詳しいこの友人に、わたしが学生時代から気になっていた質問をぶつけてみた。

イングランド人のシェイクスピアがなぜイタリアを舞台にした話をたくさん書いたんだろう。『ロミオとジュリエット』『オセロ』『ヴェニスの商人』などよく知られた物語がある。気になりながらも、文章にしなければならない状況が一度も訪れたことがなくて、放っておいたのだ。

友人は、わたしがシェイクスピアにあまり興味がないことを見抜いて、苦笑しながらも答えてくれた。

シェイクスピアは16世紀後半から17世紀はじめを生きた。当時のヨーロッパはイタリア・ルネサンスの影響が大きく、古代ギリシャやローマの学問、知識の復興運動が盛んにおこなわれていた。その波をシェイクスピアも浴び、神話を探るうちにイタリアへの憧れが強くなったのかもしれない、と彼は言った。

わたしは「そうか、シェイクスピアというだけあって、文学でシェークしたんだな」と納得した。

情熱の赤、カンパリで旅立とう

そのときだった。レストランにテノールの歌声が静かに流れはじめた。わたしは思わず、「おっ、タイム・トゥ・セイ・グッバイだ」と言った。すると友人は首を振り、「これはアンドレア・ボチェッリの歌う、“Con Te Partiro”(コン・テ・パルティロ)」と、イタリア語のタイトルを口にしてつづけた。

この曲を気に入ったイギリスのサラ・ブライトマンがイタリアのボチェッリに共演を願い出て、タイトルと詞の一部を英語の“Time To Say Goodbye”に変更してデュエットしたことで世界的な大ヒットになったことを、そのときはじめて知る。

英語のタイトルがグッバイだから、別れの曲と思われている。ところがイタリア語のタイトルを日本語訳すると“君と旅立つ”なんだと彼は教えてくれた。

前向きな旅立ちの曲として結婚式でも歌われることも多いという。

この曲こそ「カンパリ・シェカラート」のテーマソングだ、とわたしは勝手に決めつけた。ブライトマンとボッチェリのデュエット、ロンドンドライジンとミラノのリキュールのシェーク、ボレロ調の情熱的なメロディ、洗練された魅惑的な味わいに情熱的な赤い色。グラスを染めるその赤は、一輪のバラを想わせた。

夏になると、このシェカラートをロックグラスにクラッシュドアイスを詰め込んだミストのスタイルで味わう。さっぱりとした口当たり。清涼感があっていいんだな。興味がある方はバーテンダーに丁寧にレシピを伝えてオーダーしてみていただきたい。


さて2015年、今年は「カンパリ」の地、ミラノで万博が開かれている。食がテーマだそうだ。日本ではこの夏、「カンパリ15年アートデザインボトル」(1リットル)が発売された。1926年より「カンパリ」の広告やデザインを手がけたフォルトゥナート・デペーロの作品(1933年、ミラノでの展覧会のパビリオン・スケッチ)をラベルにあしらったものだ。

ラベルの色調にはイエロー、グリーン、ブルーの3種がある。バーやレストランでこのボトルを見つけたら是非、飲んでいただきたい。

シェカラートの他には、オレンジのコクと酸味がカンパリの風味をうまく中和させた「カンパリ・オレンジ」、白ワインとソーダ水あるいはスプマンテ(イタリアのスパークリングワイン)で割った「カンパリ・スプリッツ」などをおすすめする。

でも、やっぱりシェカラートで決めたい。この夏、飲んで旅立つのだ。誰とだって。誰もいないけれど、気分、気分だよ。明るく前向きに生きようよ。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 川田雅宏
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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ビーフィータージン47度
ビーフィータージン47度

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