Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

ニューヨーク

ワイルドターキー 3/4
ライムジュース 1/4
グレナデンシロップ 1/2tsp.
シュガーシロップ 1/2tsp.
シェーク/カクテルグラス
オレンジピールを絞りかける

ブロンクス

ビーフィータージン47度 3/6
チンザノ ベルモット
エクストラドライ
1/6
チンザノ ベルモット
ロッソ
1/6
オレンジジュース 1/6
シェーク/カクテルグラス

マンハッタン

ワイルドターキー 4/5
チンザノ
ベルモット ロッソ
1/5
アロマティック
ビターズ
1dash
ステア/カクテルグラス
チェリーを飾る

摩天楼の街は大ヒット曲を生む

地名を冠したスタンダードカクテルがいくつもある。でも、なんで東京というメジャーなカクテルがないんだろう、としばしば思う。

ニューヨークには『マンハッタン』という世界的人気の高いカクテルを筆頭に、『ニューヨーク』『ブロンクス』といった名の知られたカクテルがある。

グラスを傾けながらあれやこれや想いを巡らせるから飛躍し過ぎた展開になってしまうのだが、歌の世界にも東京といえばこれだ、っていう曲がないような気がする。新宿、銀座、赤坂、六本木に渋谷、池袋といった街が舞台の歌はたくさんある。名曲も多い。時代を超えて歌い継がれている曲もある。ただし、ほとんどが恋だの愛だの。あるいは東京という大都会に憧れて夢破れてみたいな歌詞ばかりだ。

慕情、挫折といったワードが浮かぶ。ネガティブである。センチメタルである。

日本人は自慢げに、声高らかに肯定しない、と謙虚さを讃えての反論もあるだろう。欧米コンプレックスじゃないか、と言われるかもしれない。そんなこといまさらである。歌なんだよ。誇ってもいいではないか。もしかして、日本ではポジティブに大ヒットなし、といった業界のジンクスでもあるのだろうか。

こんな想いがわたしに湧き起こったのは20歳前後のことだ。子供の頃、外国といえば、まずはアメリカだった。映画、TVドラマ、そして音楽に感化されていた。

18歳だったはずだ。ブロンクス出身のビリー・ジョエルの『ニューヨーク・ステート・オブ・マインド』がヒットする。わたしは痺れた。そしてアメリカの中でも、ニューヨークという都市をしっかりと意識するようになった。

たしか翌年、映画『ニューヨーク ニューヨーク』が公開され、ライザ・ミネリが作品中、ステージでテーマ曲を歌うシーンは圧巻だった。そしてフランク・シナトラがこの『ニューヨーク ニューヨーク』をカバーして大ヒットとなる。

時を経ずして、沢田研二が糸井重里作詞で『TOKIO』を歌い、おお、歌謡界も変わるか、と期待を持たせた。ところが八神純子が同じ時期に『パープルタウン』とニューヨークを歌った。そこからである。なんでニューヨークってのは、高らかに誇らしい曲になるのだろう、と。

成人していたわたしは背伸びして「マンハッタン」や「ニューヨーク」を飲みながら、東京はいいぜぃ、って曲が生まれることを願った。

21世紀になり、ジェイ・Z、アリシア・キーズの『エンパイア・ステート・オブ・マインド』が大ヒットする。胸に抑え込んでいた想いがまた湧き上がった。コンクリートジャングルを誇らしく高らかに歌い上げている。

この曲をニューヨークの小学生たちが替え歌にして大合唱する姿を映像で観たりすると、微笑ましさとともに羨ましい。

好みのベースでN.Y.シリーズを味わう

いまでもヤンキースタジアムではフランク・シナトラの歌声で『ニューヨーク ニューヨーク』を流している。

そこで膝を打った。そうだ、スタジアムでは東京も負けてはいない。スワローズの本拠地、神宮球場ではビニール傘を手に『東京音頭』が歌われる。サッカーのFC東京の応援でも歌われているという話も聞いた。よかった、みんなが合唱する東京の歌があって。『東京音頭』はあっけらかんとした詩で、実にいい。

でも、東京に暮らす人たちの何%が口ずさめるだろうか。いまの小学生が合唱しながら身体をスィングさせ、ノリノリでステップを踏むだろうか。音頭だからな。無理だろうな。浴衣が合うもの。

 

歳を重ねても、こんなことばかりに想いを巡らせてカクテルを飲んでいる。

「ニューヨーク」。ベースはライウイスキーだが、バーボンでもいい。わたしはいま、そのときの気分でベースをいろいろと変える。というか試す。ライ麦ならでのハーブ的な爽やかな風味の「ノブクリークライ」、あるいは「カナディアンクラブ」。バーボンはタフさのある「オールドグランダット114」、リッチな甘いコクの「ノブクリーク」そして「メーカーズマーク」など。

先日はバーテンダーに「ワイルドターキー8年」をベースにつくってもらった。ターキーの強く豊かな味わいがライムジュースやグレナデンシロップとシェークされると甘酸のふくらみのあるしなやかな口当たりとなる。これはフランク・シナトラの歌声が似合う。

サウス・ブロンクス出身のビリー・ジョエルの姿を想い浮かべながら「ブロンクス」を飲む。ジンの「ビーフィータージン47度」にドライとスイートのベルモット、そしてオレンジジュースをシェーク。甘酸のバランスのよい優しい風味だが、ベルモットとオレンジがコクというか厚みを生んでいる。

さてマンハッタン出身のアリシア・キーズのために「マンハッタン」、と言いつつ、申し訳ない。このカクテルはかつての連載で述べたが、わたしにとってのイメージソングはシンフォニックジャズとも表現される「ラプソディー・イン・ブルー」なのだ。でも最近は飲みながら、彼女の“ニューヨーク”の素敵な歌声も響くようになった。

最後にレシピは紹介しないが、ライウイスキーベースの「ブルックリン」というカクテルがあることをお伝えしておく。やや辛口。ブルックリンで生まれ育ったジェイ・Zに想いを馳せながら、お試しいただきたい。

カクテルのニューヨークシリーズで夜を過ごしてみるのもいい。

マンハッタン関連のエッセイはこちら

第29回「摩天楼の青い朝」マンハッタン

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 川田雅宏
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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ワイルドターキー
ワイルドターキー

ビーフィータージン47度
ビーフィータージン47度

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