Liqueur & Cocktail

カクテルレシピ

プリマスの記憶

ワイルドターキー8年 3/6
ルジェ クランベリー 2/6
ルジェ アプリコット 1/6
レモンジュース 1tsp.
シェーク/カクテルグラス
甘さを抑えたい場合はアプリコットを少なくしてレモンジュースを2tsp.にする

クランベリー&グレープフルーツ

ルジェ
クランベリー
30ml
~45ml
グレープフルーツ
ジュース
適量
ビルド/タンブラー
グレープフルーツジュースを静かに注ぎ入れ、マドラーを添える

ピルグリム・ファーザーズを救った実

マサチューセッツというアメリカの州名を知ったのは1967年か68年、小学3、4年生の頃だった。それは一枚のドーナッツ盤レコードからで、ビージーズが歌って世界的大ヒットとなった、まさに『マサチューセッツ』というタイトルの曲のおかげである。

美しい旋律は小学生のわたしにノスタルジックな強い印象を与えたが、それから後、マサチューセッツというワードは音楽とともにあった。

中学生になり、映画『おもいでの夏』が公開された。いまでもミシェル・ルグランの切なく麗しい名テーマ曲がBGMによく使われている。少年のひと夏の恋を描いた作品で、思春期にあったわたしは人妻役を演じたジェニファー・オニールに魅せられてしまう。舞台の島はマサチューセッツ州ケープコッドの南に位置するナンタケット島だった。

同時期に映画『小さな恋のメロディ』も観た。ビージーズの『メロディフェア』がテーマ曲であった。ビージーズの曲が再びヒットするなか、マサチューセッツが舞台の『おもいでの夏』が話題となり、なんだか因縁めいていると勝手に感じてしまう。

歴史の教科書からは、1620年、ピルグリム・ファーザーズがメイフラワー号に乗ってアメリカ大陸に到着してプリマス植民地を築き、独立戦争の引き金となるボストン茶会事件をはじめ、アメリカ史においてこの州は重要な地であることを知る。

大人になって酒に関わる文章を書くようになると、1630年頃に早々とアメリカ最初の禁酒運動がはじまった地であることがわかり、少しばかりショックを受ける。それでもビージーズの歌声は消えることはなかった。

カクテルに「ケープコッダー」がある。このウオツカのクランベリージュース割からマサチューセッツの海岸部、ケープコッド近郊はクランベリーの産地であることを知った。口にするとミシェル・ルグランの曲とともに『おもいでの夏』の海辺のシーンが浮かび上がる。


クランベリーはアメリカ大陸へ渡った初期の移民たちを救った。ピルグリム・ファーザーズは航海によるビタミン不足だけでなく、未開地での飢えや病気に苦しんだ。手を差しのべたのはネイティブアメリカンで、クランベリーを食べることを移民たちにすすめた。

クランベリーの名は、鶴(crane)の首や頭、くちばしに似た可憐な花が咲くことから移民たちが呼びはじめたという説があるらしい。

1621年秋、移民たちはネイティブアメリカンを招き、友情の証として感謝の宴を開いたという。感謝祭(11月第4木曜日)に供されるターキーにクランベリーソースの定番の味わいはこのエピソードにちなんでいるそうだ。

クランベリーの歌の強烈なインパクト

ビージーズのせいで、マサチューセッツに関連する話題は長年にわたり気になりつづけてきた。一昨年のこと、ビージーズもルグランも吹っ飛んでしまうような曲に出会ってしまう。

いまわたしが傑作と讃えているTV番組がある。NHKのEテレの0655と2355という5分間番組である。0655は朝6時55分からで、“日めくりアニメ”や“おはようソング”などの構成だ。2355は夜23時55分から。睡眠前にリラックスさせるらしいが、ときどき笑いを超えて、目が冴えるほどに感心させられることがある。

一昨年の夏前だったのではなかろうか、2355の“おやすみソング”で『クランベリーの赤い実』という曲が流れた。とても説明的な歌詞であり、クランベリーの名の由来から、湿地で育ち、収穫までの様子が映像とともにシンプルなメロディで綴られていた。しかもロケ地はマサチューセッツ州プリマスである。

わたしは唸ってしまった。ビージーズもルグランも聞こえてこない。子供の頃からの習性がぶっ飛んでしまったのだ。はじめてのことだった。


今春、フランスを代表するリキュールメーカー、ルジェ・ラグート社がみずみずしさのあるクランベリーリキュールを発売した。先日、その味わいについて仲良しのバーテンダーと話をしていて、余談で『クランベリーの赤い実』という曲を聴けばクランベリーの基本的な知識を得ることができると伝えた。

すると真面目な彼はちゃんと聴いてくれて、ついでにカクテルまで創作してくれたのである。そこでまた驚いてしまった。

ターキーにクランベリーソースの感謝祭エピソードを彼は知っていたのだろうか。バーボンウイスキーの「ワイルドターキー8年」に「ルジェ クランベリー」を合わせたのである。あとは「ルジェ アプリコット」とレモンジュースを少量加えてシェークする。ネーミングだが、「Thanksgiving」というレシピの異なるカクテルがすでに存在しているので、「Plymouth Memorial」とした。

まるで『おもいでの夏』のように切なさのある素晴らしい味わいであり、黙って出されたならば昔からあるスタンダードカクテルのひとつと思い込んでしまうだろう。「ワイルドターキー8年」の力強いコクと甘みにクランベリーの果実味が溶け込んでいる。

ただし、「ルジェ クランベリー」は本格カクテルに仕上げなくても気軽に自宅で味わえるリキュールである。ソーダやトニックウォーターで割るだけで甘酸っぱい果実味が満喫できる。おすすめはグレープフルーツジュース割。両方の味わいが調和して涼やかな口当たりをもたらしてくれる。

マサチューセッツのおかげで美味しい時間を過ごすことができた。感謝、感謝。

イラスト・題字 大崎吉之
撮影 川田雅宏
カクテル 新橋清(サンルーカル・バー/東京・神楽坂)

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ルジェ クランベリー
ルジェ クランベリー

ワイルドターキー8年
ワイルドターキー8年

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