中国には古くから“薬食同源”思想がある。食は薬なり。薬を選ぶように、おいしくてバランスのよい食を選んで摂っていれば、健康でいられるということらしい。
1970年代、日本では“医食同源”という造語が生まれた。中国では薬、イコール漢方薬と解釈されるのだが、日本では化学薬品と勘違いする人もいるかもしれないので、医に代えて表現したのだといわれている。現在、“医食同源”は本家に逆輸入され、中国でも通じるそうだ。
“薬食同源”の国では食前酒は「開胃酒」(カイウェイチュウ)。胃を開き、食をすすめる酒をいう。目を転じると、フランス語ではアペリティフ(aperitif)、イタリア語ではアペリティーヴォ(aperitivo)、英語はアペタイザー(appetizer)で、すべてラテン語の「アペリーレ」(aperire/開く)が語源だ。中国語と同じ、胃を開くのである。飲めば胃が笑顔になる。それが食前酒だ。
ではどんな酒が胃を笑顔にするのか。主なものとしてワインでは白ワイン、スパークリングワイン、辛口のシェリー、他の酒ではビール、ウイスキーのハイボール、リキュールでは「カンパリ・ソーダ」などがある。
調べてみると、飲食のいろんな専門家たちが一様にこう述べている。
まず酸味や苦味のあるものがいいらしい。胃へ流れ込む前の口中。酸味や苦味は舌の血流をよくし、味覚に対する感覚が鋭くなるそうだ。そして胃を刺激し、胃液の分泌をよくする。もちろんアルコールも胃を刺激し、胃液の分泌を促す。また発泡性のある酒も胃を刺激する。
ただし食事の前にアルコール度数の高い酒は気をつけたほうがいい。胃の粘膜がへたってしまう。
ここしばらく、イタリアを紹介するテレビ番組で、夕方16時あるいは17時頃から20時くらいまでの夕食前のひととき、バール(bar)で食前酒を一杯飲みながら軽食をつまむ習慣を伝える場面が多くなってきている。“アペリティーヴォする”といった表現で伝えている。
軽食はオリーブ、ナッツ類、チーズ、プロシュート(生ハム)や魚介のマリネといったものが多いが、最近はその伝統が様変わりしているようだ。
先日、ビジネスの街ミラノのアペリティーヴォの模様がテレビで流れていたが、これはもう日本人の知るハッピー・アワーの様相で、ドリンク一杯にブッフェスタイルのおつまみというか皿に料理盛り放題で6ユーロだった。パスタ、リゾット、ピッツァ、揚げ物、串焼きなどなんでもあり。味も品揃えも確かなようで、つい食べ過ぎてしまい「これで夕食にしちゃう」とミラネーゼがインタビューに応えていたが、他人事ながらホッとした。
わたしが知るアペリティーヴォの習慣は、一杯か二杯飲んではまた次の店へ梯子するもっと軽やかなものだ。そして21時くらいになってやっときちんとした夕食を摂る。













