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サントリー地域文化賞

活動詳細

北海道

北海道 士別市 1991年受賞

士別サフォーク研究会
サフォーク種の羊を地域産業の中で多方面にいかした市民主導の積極的町づくり

代表:神田 英一 氏

1999年11月更新

写真
羊パーク「羊と雲の丘」

 旭川市の北54キロの士別市に入ると、屋上看板は勿論、商店のシャッター、街灯、郵便ポストからマンホールの蓋にいたるまで可愛い羊の絵が溢れている。この英国サウスフォーク地方原産の顔と足が黒いめん羊「サフォーク」は、肉質が良く、採毛もできる。士別では畜産振興のため1967年に200頭が導入され、市内生産者への育種の供給と飼育技術の指導が行われてきた。

 転機となったのは79年に士別市開基80周年を記念して青年会議所を中心に行われた「まちづくり市民集会」である。過疎、減反、離農、産業の衰退などの厳しい情勢の中、士別はいかに生き抜くべきかが真剣に議論され、その結果、サフォークを士別の顔としてあらゆる場面に活用する事に町の未来を賭けることにしたのである。そして、市民有志200人が会員となり、「士別サフォーク研究会」が82年発足した。

 会費はサフォークをもじって3490円。羊を媒体として市民の交流が生まれ、サフォークの用途を研究する産業研究委員会、交流事業やイベントを企画する事業委員会、飼育繁殖研究の生産委員会、ニット製品の研究開発を行う翔糸委員会のほか、会員拡大委員会、広報委員会、観光委員会の7つの委員会がそれぞれ積極的に活動している。

 なかでも、翔糸委員会は別名「くるるん会」とも言い、83年開催の「くらしと紡ぎセミナー」に参加した主婦を中心に二十数名で結成された。今では地元市民約120人が、天然素材100%のバージンウールを洗毛、染色、手紡ぎ、手織りとすべて手作業で製品化し、各地の物産展で好評を博している。なお、85年には製品販売を行う「株式会社サフォーク」が市民65名の出資で設立され、サフォーク研究会やくるるん会とのチームワークと市民のバックアップのもと事業を順調に拡大させている。

 サフォーク500頭が放牧されている広大な市営めん羊牧場の丘には、91年、レストランを併設した羊の体験学習施設が第3セクター方式で建設された。94年には、日本ではここだけでしか見ることのできない6種類の羊をはじめ30種の羊が飼われている「世界のめん羊館」もオープン。この「羊と雲の丘」と名づけられた羊パークには年間7万人の観光客が訪れている。

 また、95年には幼児から高齢者まで市民400人が参加し、延長1200メートルに及ぶめん羊牧場の牧柵作りに汗を流した。これをきっかけに、ラベンダーを植えたりコスモス園を造成したりと、市民の手による牧場施設の整備が続けられている。さらに、同じく120年の歴史をもつ羊のまち、オーストラリアのゴールバン市との交流も進められ、99年、同市と姉妹都市の調印が行われた。

 はじめは若者の茶飲み話と批判の声もあったが、民間と行政のナイスコミュニケーション体制によって「サフォークランド士別構想」は着実に実現されてきた。この羊を核としたまちづくりに士別サフォーク研究会が果たしてきた役割は大きい。

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