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サントリー地域文化賞

活動詳細

九州・沖縄

大分県 宇佐市 1986年受賞

新邪馬台国
パロディー精神溢れる「ミニ独立国」活動と地域間交流を通じた町づくり

代表:高橋 宜宏 氏

1999年11月更新

写真
春の叙勲式典

 日本史の謎といわれる邪馬台国―それは宇佐ではなかったかという説を核に、新しいまちづくりに取り組んだのが、全国のミニ独立国の先駆的存在、「新邪馬台国」である。「宇佐の町に活力を」と若者7人がスクラムを組んで新邪馬台国建設公団を設立したのは1976年10月。以来ユーモアに満ちた面白企画を次々と打出し地域活性化に挑んだ。リーダーの高橋宜宏総裁は「新」にこだわり、「邪馬台国を再興するということではなく、この邪馬台国をロマンのあるユートピアに作りかえ新しいものにしたい」という。

 77年8月1日の建国式典で初代卑弥呼が選ばれ、首相や各閣僚が就任。国旗、国歌や豊国という元号が制定され、その後数々のイベントが行われた。当初は「道楽息子の遊び」と市民の間では冷やかな見方もされていた。ところが80年になって、国鉄とタイアップしたミステリー列車「卑弥呼号」の企画が反響を呼び、多くの県外の客が宇佐を訪れることとなり、市が各種団体のリーダーで構成する新邪馬台国推理行実行委員会を結成するに至って、漸く市民の中に新邪馬台国づくりが理解され定着してくる。

 これをきっかけとして新邪馬台国国民会議が発足し、“首相”の宇佐市長が陣頭指揮し、各種団体の諸行事が新邪馬台国の国づくり運動とオーバーラップして、市挙げての地域活動にまで発展した。宇佐神宮前のバス停には「新邪馬台国駅」の看板があり、道を隔てた商工会には「商工省」、隣には「ミニ共和国合同大使館」。その他「国会議事堂」(公民館)、「国立銀行」(信用金庫)、食糧庁倉庫(農協倉庫)といった表札がまかり通り、“国営”のSHK-FM放送局からは毎日曜日ニュースや観光情報が流れる。叙勲式では産業経済勲章や文化勲章がそれぞれ功労者に贈られ、一村一品運動を推進する平松守彦大分県知事には政治勲章が贈られた。また後進国首脳会議「USAサミット」を開いて全国ミニ独立国の連携を計り、84年には卑弥呼を団長に魏の古都洛陽に親善訪問をするなどその活動は国の内外におよんだ。

 しかし、80年代後半から、イベントを中心とした国づくりは終息していく。新邪馬台国の主要メンバーは、結束を保ちながらそれぞれの道で地域活動に専念する各個撃破型に運動を転換。川部遺跡の保存運動、コンサートの開催、米作りから醸造までを体験する究極のオリジナル酒づくり、宇佐の再発見と新たな再生をめざすリージョナル・アカデミア「宇佐学会」の設立準備などを行う一方、商工会や市議会に活躍の場を広げている。

 現在も続いている「卑弥呼コンテスト」は宇佐の顔ともいえるイベントになっている。ユートピアとしての新邪馬台国の夢は終わったわけではなく、宇佐を愛する人々の心の中で生き続けているのである。

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