Liqueur & Cocktail

『2013 サントリー ザ・カクテル アワード』は2013年10月17日に開催され、「BAR万」のオーナーバーテンダー、吉富万洋さんが受賞した。彼の来歴を知りたくて、バーがある鹿児島県霧島市へ。
そしてアワードの副賞である「ニューヨークカクテルの旅」へ。吉富さんのカクテルを巡る旅をともにするなかで、
世界最先端のカクテルの世界が見えてきた。

この霧島から世界に発信できるといいですね

BAR万

BAR万の内装

日豊本線国分駅から徒歩10分弱、「BAR万」は飲食店が並ぶ細い路地の一角にある。鹿児島市内からは車でも列車でも45分ほど。だが空港から直接なら意外と近く、30分もかからない。重厚な扉を開くと、中は木をふんだんに使ったオーセンティックな気配漂うバー空間だ。ひろびろとしたカウンターは8席。テーブル席は2卓ある。

穏やかな雰囲気は女性ひとり客でも入りやすい。メニューを開けばスタンダードなカクテルとともに、季節のフルーツカクテル、自家製エスプレッソウォッカを使用する「大人のオレ」、大葉とレモンのモヒート……。瓶に漬けこんだ生姜ウオツカはオリジナルモスコミュールに使うそうだ。ユニークなラインナップは、一つひとつ試してみたくなる。

オープンから6年、吉富万洋さん(33歳)は毎日、昼過ぎには店に入り、スタッフがやってくるまでの数時間、新たなカクテルへの追究を重ねる。 「バーテンダー仕事の醍醐味は、お客様の会話を止めること」

吉富さんはそう言う。工夫を凝らしたオリジナルなカクテルをお客さまの前に出す。ひとりが口に運んだとたんに、それまで続いていた会話が「おいしい」「飲んでみて」と言い交わす声に変わる。その瞬間がうれしい。

吉富氏

吉富さんのバーテンダー歴は、大学2年の時のアルバイトからはじまった。故郷の熊本を出て霧島市国分の町に住み、もともと料理や接客に興味があったことから、カジュアルなフーズバーで仕事をするようになった。大学卒業後もスタッフとして残り、「BAR万」を開くまで経験はその店のみ。

オーナーの勧めで日本バーテンダー協会に入会し、はじめて技能競技大会に出たのは独立前の24歳の時。3年間は鹿児島支部予選敗退が続いた。が、27歳で九州大会8位を経て全国大会ゴールド賞、28歳では九州1位、全国大会ブロンズ賞に入賞。その後もさまざまなコンペティションに参加し、決勝進出を果たす。

「予選にも通らなかった当時はあきらめの気持ちもありました。都市部にはすぐれたバーテンダーが多く、こんな田舎からでは無理だとも言われました。けれど、全国大会に出られるようになった頃から、もしかしたら地方のバーテンダーの作品も、きちんとアピールすれば評価されるのではないかと。後輩たちのためにも、鹿児島のバー文化を広めたいと考え、チャレンジを続けてきました」

カリビアンドリーム

創作することが好きで、常にカクテルのことを考えているという吉富さんが、2013サントリー ザ・カクテルアワードに向けて思いをめぐらせたのは、カリブの夕景だった。課題のラム「ブルガル」はドミニカ産。カリブ海に浮かぶ島国だ。

「海辺のリゾートで、昼間の喧騒が過ぎて静かな夕暮れを迎える、ゆったりと心癒される夢のようなひとときを表現したいと思いました。それでネーミングを『カリビアン・ドリーム』に。
そのイメージに合わせて赤系のボトルを合わせ、味わいを組み立てていきました」

まずはネーミングでイメージを固めるのが吉富さんのいつもの流儀。
「めざす方向を言葉にしておけば、最短で近づけます」

口に含めばフルーティで、爽やか。甘酸っぱさの底に、「ブルガル」らしいすっきりとした飲み口とドライな後味が生きている。誰にも飲みやすいカクテルだ。最優秀賞受賞以来、「BAR万」でも、各地からのお客様がカリビアン・ドリーム目当てに訪れるようになったという。「都会ならいろんな店もあります。けれど僕は、地方にいるからこそ挑戦のしがいがあると思うんです。この霧島から世界に発信できるといいですね」

吉富さんは近く、カクテルテルアワード2013受賞の副賞であるニューヨークカクテルの旅に発つ。じつはアメリカははじめて。海外旅行自体、人生でまだ2度目だ。「アメリカのバー文化は日本とはまた違うと聞きます。バー巡りが楽しみです」


旅への期待はふくらむ。

Vol.1:「BAR 万」にて。吉富さんのご紹介 Vol.2:脈々と流れるカクテルの潮流が少しだけ見えた Vol.3:バーボンの風土を肌で感じた経験は今後に活きる Vol.4:バーテンダーの考え方の違い、これは勉強になります

BAR 万
住所 鹿児島県 霧島市国分中央3丁目34-6-1 キャメルビル1F 地図
電話 0995-55-0004
アクセス JR日豊本線 国分駅東口よりタクシーで5分
営業時間 月~日 20:00~03:00
定休日 不定休

サントリー ザ・カクテルアワード カクテルコンペティション


1994年に創設され、長きに渡り貴重な洋酒文化であるカクテルの発展を願い開催している「サントリー ザ・カクテルアワード カクテルコンペティション」毎年、全国から多数の応募の中、厳しい予選を勝ち抜いてきたプロバーテンダーが憧れの舞台に集結。その年の栄冠を競い合います。
2013 サントリー ザ・カクテルアワード カクテルコンペティション >>

カリビアン・ドリーム


材料
・ブルガル ブランコ 20ml
・アペロール 20ml
・グアバーナ 10ml
・ディサローノ アマレット 10ml
・オランジーナ 適量

作り方 【1】オランジーナ以外をシェークして、 クラッシュド・アイスを入れたグラス に注ぐ。
【2】オランジーナで満たし、軽く ステアする。
【3】オレンジの皮、パイナップルの 葉、シナモンスティックを飾り、スト ローを添える。

オランジーナ ボッチボール



材料
・デイサローノ・アマレット 30ml
・オランジーナ 90ml
・オレンジスライス 1枚

作り方
【1】氷を入れたグラスに材料を入れる。
【2】オレンジスライスを加える

カクテルエピソード
「ご自宅で『カリビアン・ドリーム』にもぜひ挑戦して頂きたいと思いますが、もう少し簡単なカクテルをご紹介しましょう」と吉富さん。
『ボッチ・ボール』は、氷を入れたタンブラーに『ディサローノアマレット』とオレンジジュース、炭酸水を注ぎ、軽くステアするだけ。ここではさらに簡単に両方を兼ね備える『オランジーナ』で代用します。芝生の上でするボーリングのようなイタリア発祥のゲーム"ボッチ"が名前の由来とか。
「アマレット自体がまろやかな甘さをもったリキュールなので、オランジーナの爽やかさで割ることでグッと奥行きのあるオレンジカクテルになります。どんな時でも爽やかに楽しめますね」