連載

ワイナリー便り:シャトーラグランジュ便り
2020年9月14日 襷をつないで

椎名敬一です、今月号のワイナリー便りを、実は日本で書き始めています。今月号のタイトルからお察しいただけるとおり、8月末を持って襷をつなぎ、帰任いたしました。辞令は4月1日付でしたが、COVID-19の影響で引継ぎが遅れ、白ぶどうの収穫開始直後の9月2日の便での帰国となりました。2004年6月の赴任から、実に16年に及ぶラグランジュ勤務となりました。素晴らしい仲間に恵まれ、やりがいのあるミッションに充実感を持って取り組めました事を、本当に幸せに思います。その間、ワイナリー便りをご覧いただき、そしてラグランジュの明日を一緒に信じて温かい応援をしてくださった読者の皆様に、心から感謝を申し上げます。
帰国後は、サントリーワインインターナショナル企画部にて、チーフエノロジストに着任いたします。現地の後任者には、桜井楽生がチーフ・ストラテジー・オフィサー(CSO)の立場で8月下旬に着任し、既にチームの一員として20年産の収穫にあたっています。ラグランジュでのワインづくりをしたくてサントリーに入社したという筋金入りですので、襷の重さを十二分に理解し、次の20年を見据えてラグランジュに貢献してくれるものと確信しております。それでは早速、今月のラグランジュ便りは、桜井楽生が現地の生情報をお伝えいたします。

皆様はじめまして、桜井楽生です。鈴田健二(1984年〜)、椎名敬一(2004年〜)に続き、この度シャトー ラグランジュに着任しました。どうぞ宜しくお願いします。
この土地は、ローマ時代から人々が暮らしており、古くからワインづくりが行われていました。そして、歴史を紐解くと、17世紀には「ラグランジュ」と名の付く農園が誕生していたことが分っています。
今、私は敷地内の一つの丘の上に立っています。サン・ジュリアン村で最も標高が高い丘です。足元を見ると、氷河期に運ばれてきたというゴロゴロとした白い丸石がたくさんあります。この様子はきっとローマ時代から変わらないのだろう…と思うと、ここが地元の人々によっていかに大切に守られてきたか、そして人類にとっていかに大切な場所であるか、と考えさせられます。また、深く、長い歴史の中で、いったいどれほどのヴィニュロン(ぶどう栽培者)がこの土地に誇りと情熱を注ぎ、今日まで襷を繋ぎ続けてきたのか…。そういったことを考える度に、この先も大切に守り進化していかなければと身が引き締まります。
改めて、これから社長Matthieu Bordesと共に、このシャトー ラグランジュの価値をさらに高め、皆様に伝えていく、そして次に繋いでいく仕事の重みと責任を、強く感じています。ボルドーの歴史と文化を尊重しつつ、常に品質向上のための挑戦を恐れず、前に進んでいきたいと思います。

さて、それでは最後に、今のワイナリーの様子をお伝えしたいと思います。今年は8月31日より白ワイン用ぶどうの収穫が始まりました。ここ数年と比べると、1週間弱早い収穫開始でした。ぶどうの状態は非常に健全で病気は見られず、8月中旬以降は寒暖差のある好天が続いていたため、慌てずに気温の低い午前中を中心に収穫を進めました。9月9日に全ての収穫が終わり、現在ワインは樽の中で発酵中です。品質については、今年はぶどうを絞った時から非常に香りが豊かで驚かされました。酸もしっかりと保持されており、私たちの目指す白ワインのスタイルと極めて良く合致していました。私には、果汁の時点ですでに素晴らしいレ ザムル ド ラグランジュができる姿が目に浮かびました。ワインの完成、来年のリリースがとても楽しみです。

一方、赤ワイン用ぶどうの収穫は、この記事を書き終えた数日後に始まります。ここ数日のワイナリーは、嵐の前の静けさ…といった感じです。白ワインのその後、赤ワインの収穫から醸造の様子は、来月以降でまたご報告したいと思います。

写真1:サン・ジュリアン村で最も標高の高い丘からの眺め
写真1:サン・ジュリアン村で最も標高の高い丘からの眺め
写真2:偉大なワインを生み出す畑の石
写真2:偉大なワインを生み出す畑の石
写真3:白ワインの発酵管理作業の様子
写真3:白ワインの発酵管理作業の様子
写真4:樽の中でゆっくりと発酵が進んでいます(泡が見えますか?)
写真4:樽の中でゆっくりと発酵が進んでいます(泡が見えますか?)
シャトー ラグランジュ
桜井楽生(さくらいらくさ)

登美の丘ワイナリー醸造責任者(2009〜2012)、ボルドー大学研究員(2012〜2015)、ワイン生産研究本部課長を経て、2020年よりシャトー ラグランジュCSO。ワイン醸造技術管理士(エノログ)

 
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