この料理に合うワイン

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1st

フレシネ イタリアン ロゼ 

フレシネ イタリアン ロゼ

イタリア
ぶどう品種 グレーラ、ピノ・ノワール

今回のレシピは、キヌガサダケとスペアリブの薬膳蒸し煮です。薬膳という言葉は、日本では、かなり広い幅で使われていると思いますが、簡単に言うと、東洋医学の考え方に基づいて、一人ひとりの体質や体調、季節に合わせて食材を選んで調理し提供する食事法のことです。中国では2000年近く前から「医食同源」という考え方のもと、食べることで体を整え、病気を予防することが実践されてきました。西洋医学と、漢方や中国伝統医学を始めとする東洋医学との違いを挙げると、様々な切り口での差異があります。わたくしが最大の違いかなぁと考えているのは、病というものの根源をどう捉えるのか?というアプローチの仕方です。西洋医学が、病原菌や異常部位を探して治療するというアプローチなのに対して、東洋医学は患者の体質や全身のバランスを見て、根本的な原因を探り、自然治癒力を高める事によって症状そのものを軽減していくアプローチです。西洋医学では「ある症状があるけれど、病原菌や異常部位を探しても何も原因になるものが出てこない」時には「経過観察」となります。起こっている症状を緩和する薬は出ても抜本的に治療する事は行われません。西洋医学的には「異常無し」なのでしょうね。でも、なんとなく調子が悪い、なんとなく腰が重だるい、胃に不快感があるみたいな事はしょっちゅう起こりますよね。こういった症状があるにも関わらず、いろいろ西洋医学的に検査しても異常が見当たらない状態を東洋医学では「未病」と呼びます。中国最古の医学書と呼ばれている黄帝内経に、早くも未病について「聖人 は已(既)病を治さずして未病を治す」と記されています。「優秀な医者とは既に病として発症しているものを治そうとする人ではなく、未病の状態で治す人だ」と言った意味合いです。患者の体の声に耳を傾け、体質を読み取り、季節などにあわせて改善を図っていくのです。この黄帝内経は、原本は散逸しているのですが、西暦111年完成の「漢書」の書誌章に黄帝内経の存在が記載されており、762年、唐の時代に、王冰が散逸した原本を収集し再編纂した黄帝内経が現代に伝えられています。この黄帝内経は2011年にユネスコが主催する「世界の記憶」に登録されました。薬膳の考え方の根源にあるのは陰陽五行説です。陰陽五行説の基本は「木」「火」「土」「金(ごん)」「水」の五つの「五行」があるという所から始まります。世界を構成する要素が5つあって、それが木、火、土、金と水で、お互いを強めたり、弱めたりする関係と考えています。そしてその「五行」のそれぞれに陰陽があって、組み合わせると十干になります。その10個は甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬と癸です。この10個は、昔は数を表わしていました。甲、乙、丙、丁あたりは大昔の成績表に使われていた、とかは戦前戦中をテーマにしたドラマなどでご存知かと思います。この10個の字面だけ見ていても木、火、土、金と水の「五行」との関係性は見えてきません。でも、訓読みを知ると、一目瞭然に判ります。「甲」は「きのえ」、「乙」は「きのと」、「丙」は「ひのえ」、「丁」は「ひのと」、「戊」は「つちのえ」です。「あれ?どこかで聞いたことがあるぞ・・・・」と思われた方は、多分、かなりのアニメファンですね。鬼を倒す超人気アニメで、主人公が試験に合格したシーンがあります。そのシーンで、お館様の双子の娘が、主人公に資格のランクを説明する時に出てきました。「きのえ」は「木の兄」で「きのと」は「木の弟」、「ひのえ」は「火の兄」「ひのと」は「火の弟」です。五行のそれぞれに陽と陰が割り当てられているのです。薬膳の考え方には、他にも5つに分類されたものがあります。例えば季節も5つに分けられていて「春」「夏」「梅雨、もしくは土用」「秋」「冬」です。人間の体の大事な臓器も5つに分けられ「肝」「心」「脾」「肺」「腎」の5つの「五臓(ごぞう)」です。味も5つに分けられていますが、現代の味覚学とは一部異なりますので要注意です。薬膳では「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹(かん)=塩辛い」の5つの味覚からなる「五味」に分類します。食材は、食べた時に発揮する効果で5つに分けます。「熱」「温」「平」「涼」「寒」の「五性(ごせい)」です。「熱」「温」を温める効果を持つグループとして「温熱性」、「涼」「寒」を冷やす効果を持つグループとして「寒涼性」としてまとめ、「温熱性」「平性」「寒涼性」の3グループで簡易的に説明する場合もあります。体の声を聞き、不調の原因が冷えている事によるものなら「熱」「温」の性質をもつ食材を使い、熱を持っている事が原因なら「涼」「寒」の食材を使って熱を除去するのです。
今回のレシピはキヌガサダケとスペアリブの薬膳です。キヌガサダケはスッポンタケ目スッポンタケ科スッポンタケ属に属するキノコで漢字では衣笠茸で、竹笙とも書きます、衣笠は地名や人の名字にも使われていますが元々は、貴人に差しかける柄が長くて絹が張ってある傘の事や仏像の頭上にある天蓋の装飾やひらひらの布の事を指します。キヌガサダケは孟宗竹の林に多く生えます。胞子が充分に成長すると、竹の葉の腐葉土に埋もれている5-7cmくらいの茶色い卵状の子実体の天辺が割れて、頭に白い帽子を被ったような、茶色い襞のある卵形の茸本体が顔を出します。茸本体のかさの柄の部分は薄茶色掛かった白い色で、その柄が急速に伸びます。20cm伸びるのに僅か30分位です。かさの部分の頭の部分には白い帽子があり、その下の暗い緑を帯びた茶色い襞があるのが「グレバ」と呼ばれる茸のかさ部分で、その中に胞子を形成する場所があります。柄が伸び切ったら、グレバの内面に折りたたまれていた菌網と呼ばれる白いレース状の網目模様の器官が長く下に垂れ下がって広がります。この伸展もあっと言う間で15cmくらい広がるのに30分程度です。白いレース状の網目が伸び広がった所を収穫します。純白のドレスを纏ったかのような美しい姿から「キノコの女王」とも呼ばれますが、伸びたタイミングで収穫しないと、キヌガサダケは、その後ほんの数時間でどろどろに溶けて悪臭を放ちます。実はその悪臭こそキヌガサタケの生き残り戦略なのです。その強い香りで虫たちを集め、かさ部分を食べさせることで胞子をばら撒いてもらって生息範囲を広げていくのです。日本で見られるのは6月から9月と言われますが、梅雨の時期が出盛りだと思います。キヌガサダケは高級素材で漢方や薬膳に使われます。漢方では、キヌガサタケの五性は、清熱利湿とされています。熱や湿を取り去る力があり、気を補い、肺を潤し、咳を鎮める作用を持っているとしています。ネットでも、乾燥したものが10g単位で、大体千円程度で販売されています。10gでも水で戻せば大きくなり2人で食べられるくらいの量にはなります。薬膳ではキヌガサタケ以外にも沢山のキノコが使われます。椎茸、舞茸、松茸やシメジなどです。今回のレシピはキヌガサダケとスペアリブの薬膳蒸しです。キヌガサダケの薬膳蒸しはタイ語ではゲーンチュー ユアパイです。ゲーンチューは辛くないスープで、ユアパイがキヌガサダケです。キヌガサダケと干し椎茸は、水で戻します。キヌガサダケは、4cmくらいに切って、スペアリブやクコの実、棗などの具材と一緒にスープに入れて蒸し器で1〜2時間蒸し上げたら出来上がりです。キヌガサダケなどの素材の調達と蒸すのに、時間を要しますが、そんなに手間の掛かる料理ではありません。さて、このキヌガサダケとスペアリブの薬膳蒸し煮 ゲーンチュー ユアパイにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはフレシネ イタリアン ロゼでした。フレシネ社は、1861年スペイン・バルセロナから南西に40Km離れたカヴァの故郷であるサン・サドルニ・ダ・ノイアにあるラ・フレシネーダと呼ばれる地でペドロ・フェラーによって設立されたワイナリーです。ペドロはその生涯をカヴァづくりに捧げました。スペイン市民戦争によるペドロの死後、フレシネ社の経営は妻サラと息子ホセが引き継ぎました。2018年初め、ドイツのスパークリングワイン最大手Henkell & Co Sektkellerei(ヘンケル社)が、フレシネを買収し、2019年1月1日より、新しい社名はHenkell Freixenet(ヘンケル・フレシネ社)に変更されました。ヘンケルはOetker Groupのワイン・スピリッツ部門ですが、フレシネの50.7パーセントの株式を取得して、世界のスパークリングワイン市場の1割近くを握るスパークリングワイン生産者となりました。現在「ヘンケル・フレシネ」は世界No.1※カヴァの生産者なのです。かつては、フレシネのブランド名称は瓶内二次発酵のカヴァにだけ使用していましたが、プロセッコを市場投入する時から、イタリアのスパークリングワインのラインナップにもフレシネのブランド名称を使うようになりました。
 華やかなルックスにも拘りがあります。フレシネ イタリアン ロゼのボトルの写真をご覧ください。ボトルが光を反射してキラキラと輝いていますよね。以前、フレシネ プロセッコ DOCとフレシネ イタリアン ロゼが新発売された時に大型の量販店で、このボトルに下から光を当ててディスプレイしてあり、その美しさに驚いた記憶があります。ヘンケル・フレシネ社によると、このボトルには、光に当たって煌めくように特別製のダイヤモンドカットを施してあるそうです。グラスに注ぐと色は淡目のサーモンピンクで、とても美しいです。香りを嗅ぐと、注ぎたては赤い果実、野苺のような酸味のあるベリーを連想させる香りや、カスミソウのようなシンプルな白い花、青リンゴを思わせる爽やかな香りです。少し時間が経つと、空気に触れた為か、熟したラズベリーや、白い花でもスイカズラのような、甘いニュアンスをもつ花の印象に変化してきます。口に含むと、ぶどうのたっぷりとした果実味と軽やかな酸が調和した爽やかな、やや辛口のロゼです。キヌガサダケとスペアリブの薬膳蒸し煮 ゲーンチュー ユアパイからは複雑な香りが立ち昇ります。干しシイタケの個性的な香りとキヌガサダケの穏やかな香り、クコや棗やニンニクの香りとスペアリブの香りが絡まり合って複雑な香りとなっています。スープを口に運ぶと、優しく穏やかな味わいです。
「薬膳と言うと、敷居が高く思えますが、上品で美味しいですね」
「体が求めるものは、本来美味しく感じるものです」
「フレシネ イタリアン ロゼは少し甘さを感じるのですが、そこがスープともスペアリブにも良く合っています」
「今回の干しキヌガサダケは、茸のかさの部分であるグレバは取り除いてあるものを使いましたが、グレバは食感が違っていて楽しいのです。白いドレスの網目状の部分はしっとりと柔らかく、柄の部分はプッツリと噛み切るのが楽しい感じ、グレバの部分は木耳のようなしゃくしゃくとした歯ごたえです。水で戻したキヌガサダケをそのまま齧ると、じんわりとした旨味とほんの少しの甘みのようなものを感じるだけで余り味はしないのですが、タンパク質やミネラルも豊富なのですよ」
「フレシネ イタリアン ロゼを飲んでキヌガサダケを食べると、茸の味わいがくっきりと強まって感じられます」
「スープの複雑さも増す気がします」
「滋味深いとは、正にこういう料理なんでしょうねぇ・・・・・・」
 皆様も、キヌガサダケを手に入れて、このキヌガサダケとスペアリブの薬膳蒸し煮 ゲーンチュー ユアパイに挑戦してみてください。しみじみと味わい深く、美味しい料理です。そしてフレシネ イタリアン ロゼとの素晴らしいマリアージュをご体験くださいませ。

2位に選ばれたのは、サントリーフロムファーム 岩垂原メルロでした。日本のメルロの聖地である塩尻エリアで、私共の塩尻ワイナリーのフラッグシップワインを生み出すのが岩垂原地区です。桔梗ヶ原とは奈良井川を挟んだ対岸エリアです。梓川の河岸段丘を形作った礫がごろごろと堆積しているエリアなので「岩が垂れる原」で岩垂原なのです。桔梗ヶ原と、ほぼ同じ標高ですが、桔梗ヶ原よりも水捌けが良く、凝縮したメルロが出来ます。「優しそうな薬膳スープには、ちょっと強すぎませんか?」とお考えになる読者の方も多いかと思います。今回のマリアージュ実験では重厚なワインとしては、この岩垂原メルロの他にシャトー ラグランジュもあったのです。実験を始める前には、私も「ちょっとワインが強すぎるだろうなぁ」と思っていました。でも、驚いた事に、この薬膳スープは、なかなかの粘り腰で、簡単には押し負けないのです。繊細でエレガントな味わいのスープなのですが、ワインの力強い味わいを、スープの複雑さがふんわりと包み込み、ワインの重厚な味わいは、ちゃんと楽む事が出来ながら、しなやかに受け止めるのです。更にスペアリブの肉汁の旨みや胡椒やクコ、棗などのスパイスの風味も岩垂原メルロの味わいをより一層高めていました。濃厚さとは異なる、芯の通った滋味の力を実感出来たマリアージュ実験でした。

2nd

サントリーフロムファーム 岩垂原メルロ 

サントリーフロムファーム 岩垂原メルロ

日本
ぶどう品種 メルロ

3位に選ばれたのは、ジョルジュ デュブッフ ボジョレーでした。故ジョルジュ デュブッフ氏はボジョレーの帝王と言われた方です。今から60年くらいの昔は、ボジョレーはリヨンの北側の地酒で、瓶にも詰めてもらえずに、樽でリヨンのビストロに運ばれてカラフェで飲まれるワインでした。それを故ジョルジュ デュブッフ氏らが「新酒のイベント性」を打ち出すことでボジョレー ヌーヴォーの美味しさを、世界的に知らしめ、本体であるボジョレーワインも「果実味がたっぷりで心踊るようなワイン」として地位向上させる事に成功しました。グラスに注がれたジョルジュ デュブッフ ボジョレーは美しいラズベリーレッドです。グラスからは赤い果実、ラズベリーや苺キャンディーをイメージさせる香りがしてきます。赤いスイートピーなどの花を思わせる香りも心地良いです。口に含むと軽やかです。タンニンは控えめできめ細かく、フルーティさを強く感じるワインです。
 キヌガサダケとスペアリブの薬膳蒸し煮と合わせると、しみじみとした味わいに果実味が付与されて、心地良く、伸びやかに広がっていきました。この薬膳蒸し煮は岩垂原メルロのような力強いワインにもボジョレーやロゼスパークリングワインにも、そして白ワインとも、不思議な位に幅広くマッチしました。薬膳料理の奥深さの一旦が垣間見えましたし、体が欲するものは、美味しく感じるのでしょうね。良薬は口に旨し、そしてワインとの相性もとても良い事が判ったマリアージュ実験でした。

3rd

ジョルジュ デュブッフ ボジョレー 

ジョルジュ デュブッフ ボジョレー

フランス
ぶどう品種 ガメ

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