この料理に合うワイン

レシピに戻る

1st

サントリーフロムファーム 高山村シャルドネ 

サントリーフロムファーム 高山村シャルドネ

日本
ぶどう品種 シャルドネ

今回のレシピは、鰯ナンプラー焼き シーフード用タイソース添えで、タイではとてもポピュラーな料理です。日本で、単に鰯と言う場合は、主に3種を指します。マイワシとカタクチイワシとウルメイワシなのですが、3つともニシン亜目までは一緒で、その下が微妙に違う、ちょっと遠めの親戚3家族と言った感じです。日本では、ど真ん中がマイワシでニシン科ニシン亜科マイワシ属です。傍流でも太い流れのカタクチイワシは、科から違うカタクチイワシ科カタクチイワシ属なので、かなりの遠縁です。丸干しや目刺しにすると、とても美味しいウルメイワシは、ニシン科ウルメイワシ亜科ウルメイワシ属なのでマイワシに少し近い親戚、と言ったところです。たべもの語源辞典の清水桂一によると、イワシは、死に易い魚だからヨワシ(弱)で、訛ってイワシになった、との事です。マイワシは体側に7つの星があるので、ナナツボシとも呼ばれます。また将軍家や宮中の女中言葉では、鰯を「むらさき」とか「おむら」と言うそうです。鰯はとても美味しく、古来から日本人に愛されてきた魚です。カタクチイワシの素干しをゴマメと呼びますが、漢字では五万米と表記し、大変おめでたい名前が与えられています。また正月のお節料理の田作りは、ゴマメを乾煎りし甘辛く味付けしたものです。これは田植えの祝い膳に鰯が用いられたり、宮中の行事で、天皇陛下が御衰徴の時の儀式である「頭つき一尾」に鰯が用いられる事などから、正月のお節料理に田作りが取り入れられたと言われています。また大量に獲れた鰯は干鰯(ほしか)として田畑の肥料にもしました。昔から「銚子の鰯の水揚げが米の豊作凶作を左右する」と言われたのもそういった理由です。また沢山漁獲出来るが故に「鰯は下々の用いるもの」と言われるのですが、昔からその美味しさで位の高い人々をも魅了してきました。後水尾天皇の元旦の御膳の記録に「きぬかつぎ」とよばれる一品があります。これは、白い土器(かわらけ)に鰯をいれ、その上に白い土器を被せてあったそうです。これは本来下々が食べる鰯が見えないようにする工夫だったそうです。またお伽物語として、位の高い人が鰯を愛した創作がいくつもあります。有名なところでは和泉式部です。岩波書店の日本古典文学大系38「御伽草子」のなかの「猿源氏草子」に登場します。和泉式部が、夫に隠れて、大好きな鰯を食べていたところに夫である保昌が帰ってきて見咎められました。和泉式部は「日の本にいははれ給ふいはし水まいらぬ人はあらじとぞ思ふ」と和歌で応戦し、保昌をやりこめるシーンが登場します。しかし和泉式部の歌集である和泉式部正集や続集には、この和歌は収録されていませんので、後世の作り話だと思われます。また、女中言葉の「むらさき」の影響からか、和泉式部が紫式部に変換された同様の話も江戸期には登場します。鰯って、それ位、美味しい魚なんですよね。
鰯類は1980年代の後半に480万tも漁獲されました。FAOの統計によると1988年の日本の漁獲量は1278万tですから魚類総ての漁獲の、なんと4割を鰯類が占めていました。統計が見られる範囲で鰯類合計の漁獲が一番少ないのは2005年で、41万tしか漁獲されず、全漁獲に占める割合は、7%にまで低下しています。これは3つのイワシの中でマイワシの変動が激しい事が原因です。カタクチイワシとウルメイワシの漁獲量は、ほとんど上下せず安定しているのです。マイワシ単体が最も不漁だったのは1965年で、なんと全国で、たったの9千tでした。その後回復し1985年には387万tにのぼりました。その後再び減少し2005年には2.8万tにまで減ってしまいます。その後再び徐々に回復し2020年には94万tです。この不漁と豊漁の繰り返しの原因を乱獲や鯨などの大型の生物による捕食と考える学者もいますが、河井智康博士や川崎健博士により唱えられている魚種変動や魚種交代が主たる理由であるとする考えが主流になってきています。魚種交代説では、日本の太平洋岸ではマイワシ→サンマ→マサバで交代が起こると言われ、日本海側ではマイワシ→マアジ→マサバの順だそうです。ちなみにマサバは、今年、日本海では大豊漁、太平洋は絶不漁です。世界を見ると、ど真ん中はカタクチイワシで、圧倒的に多くマイワシの約10倍程度漁獲されています。ウルメイワシは更に少なく存在感が、ほぼありません。英語ではカタクチイワシはアンチョビでマイワシはサーディンで、完全に分けられていて、日本の鰯のようなまとめ方はしません。
今回はタイ料理の大家である鈴木都先生にマイワシを使ってナンプラー焼き シーフード用タイソース添えを作って頂きました。最近日本で流通している、やや高級な塩はしっとりとしていて、魚の塩焼きなどを作る時に、均一に塩を振るのが難しいのですが、ナンプラーを塗ったり、漬け込むと、誰でも簡単に均一に味を浸み込ませる事が出来ます。ナンプラーの量ですが大羽鰯なら1尾でナンプラー 小さじ1程度、中羽鰯なら2尾で小さじ1くらいです。ナンプラーをまんべんなくまぶしてから20分位置いてからグリルやオーブンなどで焼きましょう。シーフード用タイソースは、ナンプラーとライム搾り汁に砂糖と粉唐辛子を混ぜます。このソースを美味しく作るコツは煎り米を入れる事です。米をテフロン加工していない小鍋などでキツネ色になるまで弱火で乾煎りして、すりこぎなどで叩いて粗くくだいて作ります。小口切りした万能ねぎと、この煎り米を掛ける直前に合わせると市販品よりも格段に美味しいシーフード用タイソースが出来ます。タイでは、このソースを鰯だけではなく、鯰や烏賊などにも付けて食べます。
さて、この鰯ナンプラー焼き シーフード用タイソース添えにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはサントリーフロムファーム 高山村 シャルドネでした。高山村は長野県の北に位置する村で、「日本で最も美しい村」に選ばれています。「日本で最も美しい村」は2005年に発足し翌年特定非営利活動法人に認定された「日本で最も美しい村連合」が選ぶ村々です。2025年現在、54箇所(北海道9町村地域、東北10町村地域、関東中部14町村地域、近畿四国中国12町村地域、九州沖縄9町村地域)が「日本で最も美しい村」に選ばれています。高山村で醸造用のぶどう栽培を始めたのは1980年代で、最初は竜眼を植えていました。2006年には「高山村ワインぶどう研究会」が発足し、サントリーも当初から会員として参加しました。2011年には、高山村の名前を冠した初のワインである、「サントリージャパンプレミアム 高山村シャルドネ 2009」がリリースされました。また東御市に続き、長野県で2番目のワイン特区に認定されました。2014年には、「サントリージャパンプレミアム 高山村シャルドネ 2012」が、国際ワインコンクール シタデル デュ ヴァンで金賞を受賞しました。サントリージャパンプレミアム 高山村シャルドネの発売当時は、お客様にご案内すると「高山村って飛騨高山ですよね」と言われる事が多かったです。飛騨高山は岐阜県で、村ではなく、市です。最近では棋士の藤井聡太さんが七冠を獲得した名人戦の時の対局場所が長野県高山村の老舗旅館「緑霞山宿 藤井荘」であった事もあり、長野県の高山村の知名度も上がってきました。高山村は扇状地であり、砂礫が堆積した水はけの良い土壌です。降水量が少なく、夜になると山から冷気が吹いてくるので、昼夜の寒暖差も大きいというぶどう栽培に適した土地なのです。また、高山村内に500mから700mまで標高の異なる複数の契約畑があるので、同じシャルドネでも特徴が異なるぶどうを得る事が出来ます。シタデル デュ ヴァンで金賞を獲得した実績でも判るとおり、従来でも素晴らしいシャルドネの産地だったのですが、2021年の初春に「サントリーと共に世界と伍する日本最高のシャルドネを目指しませんか?」と契約農家の方々に申し出ました。そして、そのために何をすべきか?を話し合いました。まず第一歩として、収量制限に取り組んで頂く事で合意しました。それまでの太い1新梢に2房、細い新梢に1房だった剪定を総て1房に絞り込んでもらったのです。最初の年である2021年に素晴らしいシャルドネが出来て、手ごたえを感じました。2022年以降も収量制限を続けました。そして2023年ヴィンテージの高山村シャルドネが、国際ワインコンクール インターナショナル ワイン チャレンジ(IWC)の金賞を受賞する事が出来ました。IWCは変わったコンクールです。普通のコンクールですと、グランクリュなどの、既に名声を勝ち得ているワインは出品される事は、あまりありません。でもIWCは違うのです。シャブリのグランクリュやコルトンシャルルマーニュのようなブルゴーニュのグランクリュも出場しているのです。そんななかで金賞を頂けたことは、農家さんたちと練り上げた世界に伍するシャルドネを作ろう!という目標をクリアした事だと喜んでいます。 高山村シャルドネをグラスに注ぐと、豊かな香り立ちです。黄桃やパイナップルなどの熟した果実を連想させる香りと、樽由来のトースト香が複雑に感じられます。アタックには、ぶどうの完熟由来の、ほのかな甘さが感じられます。中盤からきれいで爽やかな酸味とボリュームのある味わいが心地良く広がり、余韻へと切れ目なく繋がります。口に含んだ時から余韻に至るまで、全体の味わいの流れが良いリッチなワインです。鰯ナンプラー焼き シーフード用タイソース添えに合わせると鰯の味わいが穏やかに広がりました。
「鰯の皮の香ばしさと高山村シャルドネが、抜群に合いますね」
「ただの塩焼きよりも、ナンプラーが付く事で焦げた香りの複雑さが断然上がります。その香りと高山村の複雑な香りとが良く合っています」
「シーフード用タイソースにもナンプラーがはいっていて、鰯の身と抜群の相性です。鰯の肝がねっとりとして、まるでチーズのようなコクに感じます」
「その滋味深い味わいを高山村シャルドネがしっかりと受け止めていますよね。素晴らしいマリアージュだと思いました」
みなさまも、新鮮な鰯を見つけられましたら、是非この鰯ナンプラー焼き シーフード用タイソース添えの事を思い出してください。今年、豊漁の秋刀魚でやっても、とても美味しいですよ。そしてサントリーフロムファーム 高山村 シャルドネとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。

2位に選ばれたのは、サントリーフロムファーム 津軽 シャルドネ&ピノ・ノワール スパークリングでした。マリアージュ実験で使用した2021年ヴィンテージは、先日発表された日本ワインコンクール2025でのスパークリング部門の部門最高賞と金賞を受賞しました。津軽富士と呼ばれる岩木山の麓の南向きの斜面で、長くサントリー向けの醸造用ぶどうを栽培してくださっている太田さんのシャルドネとピノ・ノワールを醸し、瓶内で36ヶ月の熟成を施しました。グラスに注ぐと色は淡いレモンイエローです。キメ細かな泡が後から後から昇ってきて、まるで真珠のネックレスの様です。グラスに注いですぐの状態では香りは控えめで、ほんのり青林檎のタッチやヨードのニュアンスがあります。少し時間が経つとゴールデンデリシャスやスイカズラを思わせる甘い香りが立ち昇ります。少しトーストの印象のある香ばしさも感じられます。口に含むと酸のキレを感じます。ぶどうの果実の完熟による甘やかさと酸味とのバランスがとても良く、中盤以降にも旨味による複雑さや、じわっとした余韻が続くスパークリングワインです。鰯ナンプラー焼き シーフード用タイソース添えと合わせると、鰯の旨みがスパークリングワインの泡と共に広がりました。コク深い鰯と合わせた時に感じる清々しさとすっきり感が、とても心地良かったです。シーフード用タイソースのライムとも共鳴して、爽やかさが強まっていました。

2nd

サントリーフロムファーム 津軽 シャルドネ&ピノ・ノワール スパークリング 

サントリーフロムファーム 津軽 シャルドネ&ピノ・ノワール スパークリング

日本
ぶどう品種 シャルドネ、ピノ・ノワール

3位に選ばれたのは、タヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼでした。タヴェルネッロは1983年に発売されて、もう40年以上愛され続けている販売量世界No.1※1のイタリアワインブランドです。その傘下の「オルガニコ」は、販売量国内No.1のオーガニックワイン※2で、有機栽培のサンジョヴェーゼを醸したのがタヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼです。格付けはルビコーネIGTで、IGTのエリア的にはエミリア・ロマーニャ州の南東部であるロマーニャ全域です。タヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼはステンレスタンクでアルコール発酵とマロラティック発酵をして、そのまま6ヶ月間熟成させました。グラスに注ぐと明るい紅を含むラズベリーレッドです。熟したチェリーやプラムの印象があります。スミレの花や甘苦系のスパイスのイメージもあります。口に含むとやわらかな果実味と軽やかな酸味のバランスの良いワインです。後口のところで、まろやかで軽やかな渋みが味わいを引き締めています。鰯ナンプラー焼き シーフード用タイソース添えと合わせると、鰯の青魚としてのコクや味わい深さを、サンジョヴェーゼが真っ直ぐに引き出しているのが判ります。日本ソムリエ協会の重鎮たちの中にも「秋刀魚を含む青魚は、白ワインでは力負けする事があるので、軽やかさのあるサンジョヴェーゼみたいなワインが合わせ易い」と仰る方が居ますが、まさにその通りのマリアージュだったと思います。鰯の肝との相性も素晴らしく、至福の時間でした。
※1 Shanken’s IMPACT DATABANK Review and Forecast 2021
※2 インテージSRI+ 国内輸入ワイン市場 有機・無添加
24年1月~25年4月推計販売規模容量ベース
(SRI+7業態:SM、CVS、HC、DRUG、酒量販店、一般酒店、業務用酒販店)

3rd

タヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼ 

タヴェルネッロ オルガニコ サンジョヴェーゼ

イタリア
ぶどう品種 サンジョヴェーゼ

レシピに戻る