今回のレシピは、里芋のスパイスフリットです。里芋はサトイモ科、サトイモ亜科、サトイモ属の植物で、熱帯性の多年生単子葉植物です。サトイモ科は大きな科で亜科が7つ、70属2,300種が属しています。ウキクサ亜科やミズバショウ亜科も含まれる、基本的に水分が多い所を好む仲間たちなのです。サトイモの原産地についてはインドから中国まで、幅広い説がありますが、インドからマレー半島の熱帯地域説が主力となりつつあります。昔の日本では、単に芋と言うと里芋、もしくは山芋でした。ジャガイモもサツマイモも日本に入ってきたのは江戸時代初期です。それまでは、ほぼ芋=里芋の構図だったのです。里芋は稲作よりも早く日本で栽培されていたとする説もあって、非常に古くから、日本人の食を支えていました。平安時代の辞書である和名類聚抄には、里芋は「家つ芋」という名で登場します。山に生える山芋(ヤマノイモ)に対して、畑で栽培するので家の芋と言う意味で「家つ芋」と呼ばれていました。そしてその後、同じ様な意味である「里の芋」で里芋になったようです。その頃の日本に於ける芋の2大巨頭のひとつであるヤマノイモはヤマノイモ科ですので、分類学的には、サトイモに近い種類だと言う訳ではありません。里芋はあまり花が付かない植物です。花が付き難いと言う事は、種が殆ど取れないと言う事です。なので栽培する時には、春に地温が上がってから種芋を植えて育てます。芽が出ると土寄せをして追肥をします。寒いのが嫌いで、水不足は更に嫌いな作物です。湧き水のある所や、水田の跡地など水が豊富にある所が大好きで、すくすくと育ちます。葉っぱは大きく、朝露を弾いて水滴を作り、コロコロと美しく転がります。次々と葉っぱが増えると種芋は親芋に育ち、まわりに子芋が出来ます。土寄せが甘いと子芋に孫芋が次々と出来て子芋が大きくなりません。里芋は、種芋が親芋になって、それに子芋、孫芋、曾孫と次々に世代を重ねて増えるので、子孫繁栄の象徴としてお正月のお節料理に欠かせない縁起の良い食べ物とされているのです。里芋は、日本に入ってきたのが縄文時代であると推測される古顔ですから、かつて栽培されていた里芋が野生化したものが、全国にいくつもあります。代表的なところでは長野県青木村沓掛の野生里芋群生地で、長野県の天然記念物に認定されています。青木村観光協会によると昔、旅で沓掛村を訪れた弘法大師が、川で美味しそうな里芋を洗っているお婆さんに出会いました。お腹を空かしていた弘法大師がお婆さんに「2、3個恵んでください」と頼んだところ、お婆さんは「この里芋は、石のようにかたくて食べられない」と断わりました。 お婆さんが家に帰り夕食に食べようとしたところ、里芋は本当の石のようにかたくなり食べることが出来なくなっていました。それからこの里芋は石芋や弘法芋とも呼ばれるようになりました、との事です。同じような伝説は島根県松江市上大野町芋谷の「食えん芋」にもあります。また、鳥取県倉吉市の関金温泉の野生の里芋も地元では石芋と呼び食べられないと伝えられています。関金温泉の野生の里芋は、温泉の排水が流れる小川に生えていて、暖かい排水の熱で越冬しています。ちなみに地元の方によると、石芋は、皮が物凄く硬いので包丁で剥くことはかなり困難で地元の方は、ほとんど取らないそうです。でも茹でるとかなり美味しいそうで、苦労しても剥く甲斐のある芋だそうですが「俺は剥かないけどね」とも仰っていました。その他、甲府にも石芋伝説が伝わります。九州では鳥栖自生芋や鹿児島にも野生化した里芋があるようです。日本で栽培されているサトイモの便宜的な分類は、子芋をメインに食べるグループと親芋をメインに食べるグループ、親も子も両方とも食べるグループの3つで分類するやり方と、食感がねっとりなのか?ほくほくなのか?で分類するやり方があるようです。子芋をメインに食べるサトイモは土垂(どだれ)、石川早生、女早生や女早生から作られた新品種の伊予美人、甚五右ヱ門芋(じんごえもんいも)などです。親芋をメインに食べるサトイモの代表選手は筍芋(たけのこいも)で京芋とも呼ばれます。京芋で要注意なのは、筍芋の方の京芋は、ほとんどが宮崎県産で、京の伝統野菜として有名で海老芋の別名を持つ京芋とは、全く違う品種である事です。親も子も両方とも食べる品種は八ツ頭や海老芋(京芋)、セレベスや赤芽大吉、大和早生などです。ねっとりとほくほくで分けると、土垂、石川早生、女早生、伊予美人、甚五右ヱ門芋や大和早生はねっとり系です。登美の丘ワイナリーのある甲斐市のゆるキャラは「やはたいぬ」ですが、このやはたいぬは、甲斐市特産の里芋である「やはたいも」をモチーフにつくられたキャラクターです。やはたいもも茹でると真っ白のねっとり系で粘り気があって、とても美味しいです。ほくほく系は八ツ頭やセレベスです。今回マリアージュ実験で使ったのは土垂です。土垂は関東のスーパーなどで、特に品種を名乗らずに売られている里芋のほとんどを占める代表的品種です。里芋は5分ほど下茹でして、さっと洗って、ぬめりを取ります。それをコンソメで15分ほど煮て、そのまま冷まして味を里芋に沁み込ませます。里芋のスパイスフリットに香りを添えてくれるスパイスはキャラウェイシードとマスタードシードです。キャラウェイはセリ科、セリ亜科、ヒメウイキョウ属の二年草です。セリ亜科には香りが豊かな植物が沢山属しています。オランダミツバ属のセロリやシャク属のチャービル、ミツバ属のミツバ、クミン属のクミン、ニンジン属のニンジン、コエンドロ属のコリアンダー、ウイキョウ属のフェンネルなどです。キャラウェイシードは一見すると種に見えますが、正確には果実です。形がそっくりなクミンもやはり種ではなく果実です。キャラウェイシードには独特な甘い香りがありますが、主成分はリモネンとd-カルボンです。お次はマスタードシードです。カラシナなどの種子は、擂り潰して酢などと合わせるとスパイスのマスタードになります。マスタード用の種子を指して「マスタードシード」と呼ぶ場合は、アブラナ科に属するシロガラシ属やカラシナ属などいくつかの属の種子の総称になります。また、カラシナ本体の葉や茎は食用になります。マスタードの原料になる代表的な品種は、カラシナ (Brassica juncea)、シロガラシ(Sinapis alba、昔はBrassica alba)やクロガラシ (Brassica nigra)などです。アブラナ科の植物には「ミロシン細胞」という特殊な細胞があってカラシ油配糖体を含有しています。この物質が、からしやワサビ、大根おろしなどに特有のツンとした辛味の成分で、昆虫などの草食動物に食べられないための重要な防衛手段なのです。ちなみにワサビもアブラナ科なんですよ。カラシナは、ブルゴーニュやボルドーでもぶどう畑に種を撒いてカバークロップとして育てています。また、ブルゴーニュのディジョンはマスタードの名産地ですから、ブルゴーニュ周辺の畑にはカラシナが沢山植えられています。春先にブルゴーニュを訪問すると黄色い菜の花のような花が一面に咲いていますから、ブルゴーニュの友人に「菜種ですか?」と聞くと「カラシナか菜種かは至近距離で見ないと判別付かない。でも多分カラシナだと思う」との事でした。ちなみにカラシナが日本に伝わったのは弥生頃とされている古顔です。漢字では「芥」や「芥子」と表記しますが、「芥」はカラシナ本体を意味して、「芥子」だと種子を指します。
さて、この里芋のスパイスフリットにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは赤玉 プレミアム ブレンデッドワインでした。赤玉 プレミアム ブレンデッドワインはサントリーのワイン事業が今年送りだす新製品の中で最大のものです。サントリーは、1899年に鳥井信治郎が大阪市西区に鳥井商店を開業したのが始まりです。最初はスペインから樽で輸入したワインを本格的な辛口ワインとして販売しようとしましたが、辛口で渋い本格的なスティルワインは、当時の日本人には馴染めませんでした。それから悪戦苦闘を重ねて1907年に甘味果実酒である「赤玉ポートワイン」にたどり着きました。そのあたりの鳥井信治郎の奮闘は伊集院静先生の「琥珀の夢」に詳しく描かれていますので、是非ともご一読ください。赤玉ポートワインは爆発的に売れました。販売量がピークに達した1964年には168万c/sという巨大な箱数が販売されました。現代のメガブランドであるアルパカの最大販売量が2015年の101万c/sと言われていますので、凄まじい販売量だったのです。鳥井信治郎は赤玉で得た莫大な利益で山崎蒸溜所を1923年に開設しました。ウイスキーは熟成に時間が掛かります。地元の方々は、毎日のように大量の麦が運び込まれるのに、いっこうに製品が出てこないのを見て「あそこにはウスケボーという怪物が居て、麦を食べているらしい」と噂していたそうです。
鳥井信治郎のものづくりの精神は、赤玉でも山崎蒸溜所でのウイスキーでも一貫しています。決してお手本である輸入品をなぞるだけではありません。日本人の嗜好に合わせ、日本人の生活に馴染む、日本ならではの新しい酒の愉しみを提供し続ける"ブランド"になる事を目指しているのです。それは、赤玉 プレミアム ブレンデッドワインの開発に於いても同じ精神です。サントリーでは、様々な切り口で、お客様のお酒に対する向き合い方を分析したり、嗜好の変化を調査しています。「ワインが好きだ」と仰ってくださるお客様の声を詳しく見てみると、大きく2つのグループに分かれる事が判っています。一つ目は「ご自身でワインの事を深く知りたい方」のグループです。ワインを選ぶ時も主体的に、国であったり、産地、品種や味わいの方向性に興味があって、自分好みの美味しいワインを探したい人たちです。このグループはワイン好きのお客様の中の人数比率はそれほど高くないのですが、飲む量は多いし、ワインに使う金額も多い傾向があります。もう一つのグループは、ワインを飲むのは好きですが、そのワインが、今食べている食事と美味しければ幸せで、そのワインの事を深く知りたいとか、どんな品種なのか?とか醸造方法とかには、あまり興味が無い方々です。このグループは、ワイン好きのお客様の中での人数としては、かなり多いです。例えば、牛肉を焼いた時に飲んだ動物マークのワインが美味しかった記憶があって、すき焼きの夜に、動物マークを頼りに合わせたら「何か違うなぁ・・・・」になったりする方々です。そうですよね。ワインは難しいですよね。だって、世の中にお酒の種類は沢山ありますが、お客様がその夜に食べる食事に合う飲み物を提案するだけで職業が成立するのはワインだけであり、その職業こそがソムリエであるからです。それくらいややこしいのが、ワインや食とのマリアージュの世界なのです。なのでスーパーのワイン売り場で「ワイン選び迷子」になって「千円ちょっと出しておけば、大丈夫でしょう・・・・」と買って外してしまうお悩みをもっているお客様が世の中には沢山いらっしゃるのです。そういった迷える子羊達にぴったりとフィットするワインは出来ないだろうか?とブランドグループが知恵を絞って発案したのが赤玉 プレミアム ブレンデッドワインです。コンセプトは決まったのですが、どのような味わい設計にするのかが難問でした。そこで開発チームはお客様の食卓という原点に立ち返りました。去年8月にサントリーで大規模に調査を行い、酒と料理が写っている食卓の写真約3万件を精査すると、日本の食卓料理は、本当に多種多様である事が判りました。従来のワインが得意な洋食は、その一部でしかなく、半分近くが和食や和のお惣菜で、中華料理がそれに続く事が判りました。和食や和のお惣菜は味醂やお砂糖を使い、ほんのりとした甘みを持つのが特徴です。一方フランス料理の厨房で砂糖があるのはパテシェの所だけです。フランス料理で、食事本体に、甘みがどうしても必要な場合は果物や甘口ワインから甘みを得るのです。そういう味わいの構造なのでフランスの料理に合わせて発達・発展してきたフランスワインは基本的に辛口なのです。開発チームの生産開発者達は試作を繰り返し、チームも実際に食事にあわせて、どういう味わい変化が起こるのか確認を続けました。かく言う私も、開発の最初の段階から検証に参加しています。何度も何度も試作と検証をやり続けてついに完成したのが赤玉 プレミアム ブレンデッドワインです。赤玉スイートワインから発展し、広がってきた多様な原料酒とブレンド技術を集結してサントリーにしかつくれない味わいを実現しました。本当に様々の原料酒を使っています。長野県塩尻にある赤玉出荷組合の栽培農家さまが育ててくださったぶどうを使ったワイン、シェリー様のワイン、複数種類のサントリー製のワイン 、輸入原酒、ブランデー、和ボタニカルスピリッツ、ハーブスピリッツ、スパイススピリッツなどなどです。グラスに注ぐと、あまり濃い色では無く、明るく透明感のあるラスベリーレッドです。グラスからは複雑かつ新鮮で華やかな香り立ちが立ち昇ってきます。口に含むとミディアムボディで心地良いワインです。甘さ・渋さに頼らない複雑味のあるワインです。骨格・バランスの良さ、中盤のふくらみと広がりが、フィニッシュのきれいな余韻へとつながり心地良かったです。
里芋のスパイスフリットと合わせると、里芋の甘やかな風味が強まります。
「里芋自体の美味しさが、よりくっきりと明瞭に感じられます」
「スパイスとの共鳴感が面白いですね」
「他のワインがスパイスと合っている部分と赤玉は違う部分で和音になっている感じがします」
「スパイス感はより一層強まります。料理に使っているのがたった2つだけのスパイスとは思えない、複雑なハーモニーになっています」
「お料理もワインも両方が上がる、幸せなマリアージュですね」
赤玉 プレミアム ブレンデッドワインは2025年9月16日(火)に堂々の新発売です。赤玉では約40年ぶりのTVコマーシャルも放映される予定です。皆様も店頭で、金色のラベルに赤い太陽マークの赤玉 プレミアム ブレンデッドワインを見かけられましたら、是非ご購入ください。里芋のスパイスフリットのみならず、すき焼き、鰻、豚の角煮や鯖の味噌煮などに抜群の相性があるのは確認済みです。是非是非お試しくださいませ!!



