この料理に合うワイン

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1st

オーシエール シャルドネ 

オーシエール シャルドネ

フランス
ぶどう品種 シャルドネ

今回のレシピは、ヤム マックワ(焼き茄子の海老そぼろタイソース和え)です。タイ語で茄子がマックワでヤムはヤムウンセンのヤムですので、和えるという意味です。ナスはキク類ナス目ナス科の植物です。インドの東部が原産と言われています。日本では、ナスはナスビとも呼ばれ、漢字では茄子と表記し、古くから文献に登場します。藤枝國光氏が記した「野菜の起源と分化」という本には、天平勝宝2年の東大寺正倉院の古文書に「茄子を進上」との記録がある、と書いてあります。また、1988年に発掘された長屋王家木簡になすび(奈須比)が粕漬けにされて進物に使われていたという記載があります。長屋王家木簡は現在の研究では平城京遷都直後の710年から717年頃にかけてのものであるとされていますので、8世紀初頭には、ナスは日本において既に重要な野菜で有った事が判ります。何故、ナスと呼ばれるようになったか?には、諸説あるようですが「たべもの語源辞典」の著者である清水桂一によると、夏にとれる野菜で「夏の実(なつのみ)」から、「なすび」に転じたという説が最も有力との事です。
農林水産省の「子どものための農業教室」のナスの記述によると、日本に入ってきたのは奈良時代です。インドから西へ伝わったナスは、5世紀より前に古代ペルシャや、アラビア半島に到達しました。ヨーロッパにも伝わったのですが、ヨーロッパはナスが好む気温よりも冷涼で、余り上手く育ちませんでした。東へ伝わったものは東南アジア、チベットから中国に広がりました。中国では1500年以上も前からナスが作られていたようです。日本には中国からと、朝鮮半島からと、東南アジアからの、大きくわけて3つのルートで入って来て、奈良時代にはすでに栽培され始めていたと考えられています。平安時代には藤原時平らが編纂した延喜式という律令の施行細則を記録した本の「巻24」にナスの栽培方法が書かれていますので、その頃には、栽培種としての重要性が高まっていたのでしょうね。ナスはフランス語ではaubergine、英語ではegg plantです。インドや東南アジアでは日本で主流の茄子紺色のものもありますが、白いナスも多く栽培されて、卵そっくりなので、英語名称がegg plantになったと言われています。ナスは種類が多く、さまざまな形や大きさ、色(茄子紺、緑、赤、白、黄色や縞模様)のものがあり、その多様性を現しています。世界中で1000種類、日本で200種類くらいは有る、と言われていますが凄い勢いで新品種が登場しますので、もっと多いのかもしれません。基本的に熱帯のエリアが原産の植物なので高温で水分が多くある畑を好み、寒くて乾燥しているエリアでは育ち難いです。
皆様は、初夢に登場すると縁起の良いものとして「一富士、二鷹、三なすび」という言い習わしがあるのをご存知ですよね。私が子供の頃に、何故その3つなのか?を父から教わりました。「富士は不死で不老長寿の象徴、鷹は鳥の王様で強い、茄子は『成す』だからだ」と言う説明でしたが、子供心に、何故、なすびなのに「成す」なんだろう??と思っていました。静岡市歴史博物館に見学に伺った時に、ガイドの方から「この3つは家康公の愛した物なのです。駿府城に隠居するときに側室から、何でこんな辺鄙なところに移るのか?と尋ねられた時に家康公が、まず、ここの富士は素晴らしい。次に良い鷹がいる。そして三つ目はどこよりも早く茄子が食べられるからじゃと仰ったからなのですよ」と教えて貰いました。確かに三保には折戸なすという茄子があり、温まり易い砂地での促成栽培を、なんと1600年代の初め頃から行っています。促成栽培の歴史で、日本で最も早く促成栽培を始めたのが、この折戸なすである、という記載もあります。江戸っ子は、初物好きで有名です。魚では、もちろん初鰹なのは皆様も良くご存知だと思いますが、野菜での初物は、茄子が代表選手で、茄子の初物も相当高価だったようです。なので、初夢の3つは高いものの代表選手でもあるのです。茄子の凄いところは、折戸なすや賀茂ナス、水なすや佐土原なすのような伝統野菜の品種と、「PCお竜(おりょう)」や皮が薄く、浅漬けが美味しい「山形N1号」、「サラダ紫」の進化形である「かな紫」などの新品種とが上手く共存している事です。今回はその茄子を焼き茄子にします。マリアージュ実験の取材が終った後、原稿を執筆しているこの週末に築地の場外市場に出かけました。築地魚河岸の海幸橋棟の真ん中あたりに野菜を専門に扱っている仲卸があるのですが、その店頭に「新潟やきなす」と札がついている茄子がありました、お店の方にどんな品種なのかを伺うと「やきなすは名前の通り焼き茄子にすると抜群に美味しい品種だが、生産量が少ないので地元新潟で殆どが消費され東京市場に入る事は滅多に無い」との事でした。その夜に焼き茄子にしましたが、トロトロなのですが、くたくたでは無く、しっかりと形を保っていました。ジューシーで素晴らしく美味しい焼き茄子だったのですが、何より驚いたのは皮の剥き易さです。天火の当たっている上の面は、それこそ一回でするりと剥けました。裏側も竹串を使って3ー4回で剥けました。マリアージュ実験に使ったのは、スーパーで特に品種とかを名乗らずに売られている普通の茄子でした。その焼き茄子を海老そぼろタイソース和えで頂きます。
海老は甲殻類です。甲殻類は、動物界の節足動物門の甲殻亜門に分類されます。「分類学」の始祖であるリンネの時代には、生命を分類する時の最初の大きな「分け」は植物界と動物界の二つだけでした。その後分類学が進歩していくと、界がどんどん増えて行きましたが、ウーズが界の手前の分けに、新たにドメインを設けました。細菌ドメインと古細菌ドメインと真核生物ドメインを作り、真核生物の下に植物界と動物界を置いたのです。節足動物門には、昆虫、甲殻類、クモやムカデなど、外骨格に覆われ、それを動かす為の節を持つ動物が含まれます。甲殻類には、水中に住むエビ、カニ、オキアミ、フジツボ、ミジンコなどと陸上で生きていけるフナムシとダンゴムシなどが属しています。今日のもう一つの主役はエビで、エビは十脚目(エビ目)に属する甲殻類のうち、カニ下目(短尾類)とヤドカリ下目(異尾類)以外の全ての種の総称と決められています。この3つの分け方で判るように、カニは尾っぽが短く、ヤドカリの仲間は尾っぽが異なった形をしています。ちなみにタラバガニはヤドカリの仲間です。かつてエビ目は長尾亜目と呼ばれていた時期もありましたが、今はこの分類名は使われません。エビを漢字で書くと海老か蝦が普通です。色に詳しい方はご存知だと思いますが、昔は葡萄という表記でエビと読ませていました。これは伊勢海老などが葡萄色をしているからで、色の名称としては、いまでも葡萄色(えびいろ)が存在しています。室町時代までの日本人にとって、海老と言えば、伊勢海老の事を指していました。宮中や大名に献上する縁起物で、普通に食べる事なんて出来る食材ではありませんでした。庶民も海老を食べる事が出来るようになったのは、シバエビを大量に漁獲する、打たせ網漁法が江戸時代に確立したからです。シバエビは芝海老と漢字では表記します。私のオフィスのある田町のすぐお隣の芝浦で沢山漁獲されたのです。1816年出版の山東京伝の描いた絵草紙「気替而戯作問答(きをかえてげさくもんどう)」の画には天ぷらの屋台、大蒲焼の屋台と初鰹売りが書かれています。天ぷらの屋台の前には閻魔様が食べようか?どうしようか?と思い悩む姿が描かれています。文中には、「てんぷらの味はひには早道(財布)の底をはたく」と記されています。当時、揚げたての天ぷらを食せる屋台は大変人気で、蕎麦、鰻、寿司と並んで「江戸四大名物食」と言われていました。守貞謾稿 (もりさだまんこう)は、1853年に出版された風俗や食事情の百科事典で、著者は喜田川守貞です。 江戸時代末期の京都、大阪(当時は大坂の表記)と江戸の食事情などが詳しく書かれています。喜田川守貞は江戸の食文化の繁栄を高く評価して「京坂より江戸が優れている」と記しています。その本のなかで天ぷらのネタとして穴子、芝海老、小肌、小柱を挙げています。この頃の芝海老はかき揚げか、3匹程度を一緒に揚げる摘まみ揚げで食べられていました。江戸時代でも車海老は高価で底引き網で漁獲していました。日本人は海老が大好きです。豊洲市場に入荷する海老は、国内産は、イセエビ、ボタンエビ、アマエビ、シバエビ、アカザエビ、セミエビ、クマエビ、サルエビ、シラエビ(シロエビ)、ホッカイエビ(ホッカイシマエビ)、トゲザコエビ(ガスエビ)、クロザコエビ(シロガスエビ)、アメリカザリガニ、ウチダザリガニなどです。輸入物や日本近海以外から漁獲される海老は、古くはタイショウエビ(コウライエビ)、ブラックタイガー、バナメイエビ、オマールエビ、新顔ではアルゼンチンアカエビ、シータイガーなどがあります。新品種とは別にブランド化や高級化に成功したものもあります。最初にブランド化に成功したのは、天使の海老ではないかと思います。名前の由来は、南太平洋の楽園"天国に一番近い島"として知られるニューカレドニアの美しい安全な海水で養殖されていることから名付けられました。1984年から養殖が始まり、勝どきにもアンテナショップと天使の海老料理が食べられるレストランがありました。天使の海老は一般的な海老の冷凍と違い1匹1匹個別に冷凍してありました。それまでの冷凍海老は1.8kgくらいのブロックで冷凍してあったので、小分けにする度に解凍と冷凍を繰り返す事になります。なので鮮度が悪くなりがちでした。個別に冷凍する事で、冷凍のまま小分けにする事が出来たのです。天使の海老が大成功をして以降、いろんなブランド海老が導入されています。インドとエクアドルで養殖される「神の海老」、エクアドル産 バナメイエビの「自然のあしあと。」、今回の取材では「サウジの星」を試してみました。仲卸の大将の話では「刺身でも美味しいよ」との事でした。
焼き茄子の海老そぼろタイソース和えは焼き茄子を作り、フライパンで火を通した海老の粗みじんをタイソースに和えてからかけます。タイソースはナンプラーとライムの搾り汁に砂糖と粗挽き唐辛子を合わせ混ぜます。あれば、レモングラスはみじん切りにし加えると爽やかさアップです。
このヤム マックワ(焼き茄子の海老そぼろタイソース和え)にテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはオーシエール シャルドネでした。オーシエールはDBR(ドメーヌ バロン ド ロートシルト)ラフィットグループが南仏に所有するドメーヌ ド オーシエールの白ワインです。 ドメーヌ ド オーシエールは1999年にドメーヌ バロン ド ロートシルトのエリック男爵がこの畑のポテンシャルに惚れ込み、広大な畑を購入したのが再出発の始まりでした。DBR(ラフィット)にとって、フランス内では、ボルドー地方以外のぶどう畑と向き合うのは初めてで、まさにエリック男爵の新たなる挑戦でした。エリック男爵はラングドックで土壌コンサルタントとして活動していたオリヴィエ・トレゴア氏を抜擢しました。オリヴィエ・トレゴア氏は、荒廃したぶどう畑の土壌を分析し、微気候も考え併せ最適のぶどうを植樹して行きました。結果的にオーシエールの所有面積560haのうち、ぶどうを植えたのは約170haです。残りの390haは、南仏に良く見られる背の低い森林とガリグー(ハーブなどが群生した土地)です。ぶどう畑の倍以上もの広い自然部分と共生することで健やかなぶどう畑を保つことができるのです。土壌は、斜面では砂利質や砂岩質、平野部は砂質でした。3分の2の畑がAOPコルビエールで残りの3分の1がIGPペイドックでした。AOPコルビエールの区画にシラー、ムールヴェードル、グルナッシュ、カリニャン、サンソーを植え、残りのIGPペイドック部分にはシャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドを植えました。AOPコルビエールが許されている畑は斜面で、より水捌けが良いです。IGPペイドック部分は平野です。シャルドネはフォンフロワド山の麓の最も冷涼な北向きの区画で育てられています。シャルドネのぶどうは、スキンコンタクト後、ステンレスタンクで発酵し、熟成させます。色は明るいレモンイエローです。黄色いリンゴや洋梨を思わせる心地良い香り、アカシアや少し黄色い花の甘い印象があります。完熟した果実の充実感と爽やかさが感じられる辛口白ワインです。ヤム マックワ(焼き茄子の海老そぼろタイソース和え)と合わせると、海老の甘みが強調され、海老の風味が際立つのが判ります。
「海老の味わいが真っ直ぐに広がりますね」
「パクチーの香りやミントの香りとレモングラスの香りが、ワインと合わせた時のほうが強まります。普通シャルドネって、こういったハーブの香りとは共鳴しませんが、ガリグーが沢山ある南仏で育てると、シャルドネでさえ、ハーブ系との協調性が生まれるんですね。ちょっとびっくりしました」
「焼き茄子の焦げたタッチとも、とても居心地が良いですね」
「何より、熟したシャルドネのたっぷりとした充実感と、コク深い海老の味わいが高い次元でバランスしています」
「焼き茄子の焦げたタッチだけを重視したら樽熟したシャルドネもありなんでしょうが、全体の纏まりを考えると樽を使わないオーシエール シャルドネがベストなのでしょうね」
これから秋になり、ますます茄子が美味しくなる季節です。また最近は大手スーパーでもエクアドル産のレベルの高い有頭海老を取り扱っている所が増えています。皆様も是非、ヤム マックワ(焼き茄子の海老そぼろタイソース和え)に挑戦してみてください。そしてオーシエール シャルドネとの素晴らしいマリアージュをお楽しみくださいませ。

2位に選ばれたのは、サントリーフロムファーム 塩尻メルロ ロゼでした。塩尻メルロ ロゼは塩尻ワイナリーのフラッグシップである岩垂原メルロや塩尻メルロを濃くするために、破砕後の果皮と果汁の混合液から一部だけ取り出したセニエ果汁と、メルロから直接圧搾法で絞った果汁を発酵してつくります。グラスに注ぐと少しだけ紫を帯びた淡いピンクロゼカラーです。さくらんぼやザクロのジャムを連想させる赤い果実の香りに、ピンクの花、オレンジピール、白胡椒や洋梨のキャンディーのニュアンスも感じられます。軽快な酸味と、横に広がるメルロらしい柔らかな果実味のバランスが心地良い辛口ロゼワインです。ヤム マックワ(焼き茄子の海老そぼろタイソース和え)の皿と塩尻メルロ ロゼの入ったグラスが並ぶだけで、気分が上がります。海老のピンクとロゼのピンクを見比べるだけで、何故か心がウキウキしてきました。料理とワインを合わせると、バランスの良さに驚かされました。タイソースの辛さを和らかく受け止めてまろやかにしてくれています。ミントの香りとの調和感もとても良かったです。焼き茄子のとろりとして、そして滑らかな食感をロゼの柑橘の果皮を思わせるほろ苦さが引き締めて、深みのある大人の味わいを演出してくれていました。

2nd

サントリーフロムファーム 塩尻メルロ ロゼ 

サントリーフロムファーム 塩尻メルロ ロゼ

日本
ぶどう品種 メルロ

3位に選ばれたのは、ロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダーでした。ロバートヴァイルは1868年創設の名門ワイナリーです。「皇帝達が愛した伝説のワイン」として古くから名声を誇っていました。1988年、佐治敬三会長(当時)の強い意志によりサントリーが経営参画しました。現当主ヴィルヘルム・ヴァイルの指揮のもと、極上の甘口ワインから力強い辛口ワインまでの幅広い味わいで世界中から高い評価を得ています。そのロバート ヴァイル醸造所が、ラインガウの対岸の地ラインヘッセンで新たに挑戦しているのが、ロバート ヴァイル ジュニアシリーズです。2016年にファーストヴィンテージをリリースしました。温暖化の影響により冷涼なワイン産地であるドイツでも、ピノ・ノワールなどのぶどう品種が完熟する事が出来るようになりました。とくにピノ系の品種は、新しいスタイルのドイツワインとして世界的に注目されています。グラウブルグンダーはフランスではピノ・グリと呼ばれるグリ系品種で、人気が高まっている品種です。アロマティックで、黄桃やリンゴコンポ―ト、アカシアのハチミツを連想させる香りです。口に含むとやわらかなアタックです。まろやかで穏やかな酸と、ほろ苦さが心地良い辛口の白ワインです。
ヤム マックワ(焼き茄子の海老そぼろタイソース和え)と合わせると海老の美味しさが真っ直ぐに感じられるマリアージュでした。ライムも使う料理なので酸のあるワインとの相性も良いのですが、このロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダーは冷涼なドイツのワインながらグラウブルグンダーの品種の持ち味で酸っぱ過ぎないところがポイントだと思いました。合わせるとワインと料理との両方で和らいでくれるのが、高評価につながった気がする素敵なマリアージュでした。

3rd

ロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダー 

ロバート ヴァイル ジュニア グラウブルグンダー

ドイツ
ぶどう品種 グラウブルグンダー

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