今回のレシピは、鶏むね肉のコルドンブルーです。コルドンブルーは、肉を薄く叩いて、スライスしたハムとチーズのスライスに巻き付けたり、間に挟み込んだりしてから、パン粉をまぶして、揚げたり焼いたりした料理です。肉は仔牛肉、豚肉や鶏肉などで作られます。鶏肉で作ると2023年04月にアップしたキエフ風チキンカツ(キーウ チキン)に、良く似た外観になります。鶏むね肉のコルドンブルーとキエフ風チキンカツ(キーウ チキン)の最大の違いは鶏肉に挟み込む食材です。鶏むね肉のコルドンブルーではハムとチーズですが、キーウ チキンではバターです。初めて作られたエリアや時期も全然違っています。キーウ チキンの発祥には2説あり、1912年にサンクトペテルブルクで生まれた説と1915年のモスクワの雑誌が、鶏肉または仔牛肉のキエフ風カツレツとして紹介しているのが始まり説ですが、いずれにしても20世紀です。コルドンブルーは「スイスの料理遺産」(Patrimoine culinaire Suisse)に「1808年にヴァレー州のブリーク近くのレストランで初めて作られた料理」として紹介されています。コルドンブルーの方が大分古くからあるようですね。スイスの料理遺産と言うのは2004年から始まった「伝統的なスイス料理をオンラインで紹介する百科事典」です。 ただ、このコルドンブルーは1808年当時では、コルドンブルーと言う名前ではなかったようです。コルドンブルーの名前になったのにも2説あります。1930年にフランスで開催された料理コンクールで優勝した料理の名前が「ル コルドンブルー」である、と言う説。もう一つは1933年の商船の速度記録賞であるコルドンブルー賞に由来する説です。ドイツの商船「ブレーメン」がブレーメン-ニューヨーク間の速度記録を打ち立て、その船長であるレオポルド・ジーゲンバインに与えられたのがコルドンブルー賞でした。レオポルドは、その祝勝会の料理にチーズを挟んだ肉料理を料理人にリクエストしました。スイス人の料理人は、料理を作り、その料理にコルドンブルーの名前を付けた、というものです。いずれにしてもスイスかフランスが起源の料理のようです。
鶏むね肉は半分に切って、それぞれを厚みが半分になるように切り込みを入れてひらき、肉叩きやすりこ木などでたたいて薄くし、塩、胡椒をします。そこにハムとチーズを乗せて包み込むように半分に折ります。小麦粉をまぶし、卵液、パン粉を纏わせ、肉の厚みにもよりますが8分ほど弱火で揚げて、最後に中火にしてからりと揚げたら出来上がりです。
さて、この鶏むね肉のコルドンブルーにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインは、カロ アルマ マルベックでした。カロはボデガス カロが醸したワインです。ボデガス カロ(CARO)は1999年にDBR LafiteとCatenaファミリーとがパートナーシップを組むという、全く新しいアイデアで生まれました。カテナの歴史は1902年にニコラ カテナ氏がイタリアからアルゼンチンに渡り、メンドーサでぶどう畑を開墾したことから始まります。当初は国内の消費者向けに手頃なワインを造り、アルゼンチン最大級のワイナリーにまで成長しました。三代目にあたる現当主ニコラス カテナ氏が、1980年代にカリフォルニアワインが高級ワインとして、世界で大成功し発展していった事を目の当たりしにして、「アルゼンチンで世界に認められる最高のワインを造る」ことを目指しました。当時は、ぶどうが完熟する事が出来ない、と同業他社のみならず、身内の栽培家にも言われた、標高1500mを超えるような高地でのぶどう栽培に取りかかりました。2001年にフラッグシップである「ニコラス カテナ サパータ」を発売し、世界各地で行われたブラインドテイスティングで1位、2位に入る快挙を果たし、世界にカテナのワインが知られるようになりました。その功績が讃えられ、ニコラス カテナ氏は2009年に英Decanter誌の「マン オブ ザ イヤー」に、南米の造り手としては初めて選ばれました。DBR Lafiteは、皆様も良くご存じのドメーヌ バロン ド ロートシルトです。メドックの格付け1級の、しかも筆頭格付けのシャトー ラフィット・ロートシルトを擁しています。ドメーヌの歴史は1868年にジェームズ ド ロートシルト男爵がラフィットを買収したときに始まりました。長らくエリック ド ロートシルトが当主を務めてきましたが2018年から娘であるサスキア ド ロートシルトが指揮を執るようになりました。「カロ」の名前は「カテナ社」の「CA」とロートシルト家の頭文字「RO」を合わせて生まれた名前です。エリック男爵の夫人がイタリア人ですので、イタリア語の「愛しい人」という、この言葉が選ばれました。「アルマ」とは、インカの言葉 <ケチュア語>で「夜の力」の事です。畑のあるアンデス山脈の麓の漆黒の夜空やピュアな空気によってもたらされる神秘的ともいえる力や、マルベックのぶどうの濃さに由来しています。グラスに注ぐと、夜を連想させる濃い色です。グラスからは自然な香りが、ゆるゆると立ち昇ります。ブルーベリーや熟した南高梅を思わせる香りとアイリスなどの紫の花のニュアンス、紫蘇やスパイスを連想させる香りなどがあります。心地良い果実の凝縮感とラフィットらしいエレガントさがあるワインです。
カロ アルマ マルベックと鶏むね肉のコルドンブルーを合わせるとワインの濃さ感と鶏の旨みと溶けたチーズのとろりとしたテクスチュアとが良くマッチします。
「ハムとチーズが鶏むね肉の、割と淡白な味わいに力を与えていますよね。そのコクとワインの厚みとが丁度良いバランスになっています」
「マルベック(Malbec)はフランスの南西地方のカオール地区原産の品種なんですよ。カオールではコット(Cot)と呼ばれていて、昔は『黒ワイン』と呼ばれた事もある、暗くて濃厚な色調が特徴です。果実の香りが豊かで、味わいも果実味のボリュームがあって、タンニンの量は、しっかりとある品種なのです。でも、そのタンニンの質は、肌理が細かく、柔かみがあって穏やかなのが特徴なのです」
「その優しいタンニンだから鶏の胸肉とも上手く調和できるのだと思います」
「プラムを連想する香りと、紫蘇のニュアンスが混ざると、梅干しをかじっている錯覚に陥ります」
「その香りも、鶏肉との相性が、とても良いですね」
鶏の胸肉は、スーパーなどのチラシの目玉になる事も多いですよね。そんな時、この鶏むね肉のコルドンブルーの事を思い出してください。そしてカロ アルマ マルベックとの、抜群の相性をお楽しみくださいませ。



