今回のレシピは、パックブンファイデーン(空芯菜とベビーコーンのオイスターソース炒め)です。タイでは、屋台でも食堂でもそれこそどこででも食べる事が出来るポピュラーな料理です。空芯菜は東南アジア原産の野菜で、ナス目ヒルガオ科サツマイモ属です。サツマイモ属にはサツマイモの他に、アサガオやヨルガオなどが属しています。ツルで伸びるものが多く、花はラッパ状になる事が殆どです。空芯菜は茎や枝が空洞になるので空芯菜の名前で呼ばれます。アサガオナや蕹菜(ヨウサイ)の名前で呼ばれる事もあります。中国南部から東南アジアにおいては大変重要な野菜で、水田や湿地で栽培され、時には湖で、水上に筏を組んで水耕栽培される事もあります。日本では沖縄で、古くから栽培され、真夏にも収穫する事が出来る緑黄色野菜として貴重でした。タイでも古くから沢山栽培されてきました。今回のもう一つの主役であるトウモロコシは、タイでは、比較的新参者です。トウモロコシはイネ科の一年生植物で、約9,000年前にメキシコ南部の先住民によって野生のテオシンテから作物に改良されました。コロンブスがヨーロッパに持ち帰り、各地で広く栽培されるようになりました。世界の多くの地域で主食となり、総生産量は小麦や米を上回っています。中国には1556年に伝わった記録が残っています。タイに伝わったのは、正式な記録としては1924年にタイの王族のシティポーンが彼の農場で栽培した時ですが、それ以前からタイの東北地方では、中国から伝わったと思われるトウモロコシが細々と栽培されていました。明治学院大学の重冨 真一教授のタイの農業分析によるとタイのトウモロコシ生産が急激に増加したのは、1950年代に、日本に輸出するためだったそうです。その当時の日本とタイの貿易はオープンアカウント方式を取っていました。オープンアカウント方式とは、両国の貿易で片側にだけ赤字が増え過ぎないようにする方式の事です。タイは衣料品や電化製品を中心に日本から沢山輸入があったにも関わらず、日本は、タイからは米と生ゴムしか買うものが無く、タイサイドの貿易赤字が増え勝ちだったのです。当時、日本はアメリカからそこそこの量のトウモロコシを輸入していました。そこでタイに働きかけトウモロコシを増産してもらい、それを輸入するようになったのです。最初はバンコクに近いエリアでトウモロコシ栽培が始められました。日本に輸出するためのトウモロコシは急速に増え、栽培地も広がっていきましたが、1960年代まではタイ国内では、トウモロコシは殆ど消費されていなかったそうです。それが、1970年代から徐々に食べるようになり、1988年から爆発的に消費が増えました。急激に消費が増えたため輸出出来るトウモロコシは急減し、ついには輸入さえするようになりました。鈴木都先生によると、タイでは、とうもろこしはもちろん料理にもよく使いますが、庶民的なおやつによく使われるそうです。日本のマクドナルドにはアップルパイがありますが。タイは、トウモロコシバージョンがあるそうです。パイの中の甘いクリームにとうもろこしの粒々が入っていて、定番なのです。とうもろこしを屋台などで、鍋いっぱいに縦にぎっしりと詰めこんで塩茹でしている事も、よくあります。注文すると、さっと塩味の汁を全体にかけてくれます。タイでもトウモロコシを焼くバージョンも有りますが、日本と違って皮ごと炭火で焼くそうです。都先生はチェンライの市場でカオポーニャオというトウモロコシを食べた事があるそうですが、むちむちした食感で、とても美味しかったそうです。カオポーニャオの実は、日本では余り見掛けない色をしています。小豆色の粒と黄色の粒が入り混じった二色斑模様の美しいトウモロコシです。イサーン地方の定番料理で、ソムタムという青パパイヤで作る辛いサラダがあります。このソムタムを青パパイヤの代わりに、粒だけを削いだトウモロコシで作ると、甘くてとても美味しいそうです。今回のレシピは成熟したトウモロコシではなくて、ヤングコーンです。ヤングコーンは、かつて日本で買おうとすると、缶詰しかありませんでした。その後、生の物も流通し始めましたが、そのほとんどはタイ産のもので、皮を剥いた状態で黒い発泡スチロールのパックに詰められて販売されていました。最近は皮付きのヤングコーンの美味しさが認められたのか、新鮮な物が、あちらこちらで販売されています。
今回のレシピで作る時のポイントは、空芯菜を5cmくらいの長さに切って、茎と葉に分けておく事です。茎はヤングコーンと一緒に、先に炒め蒸し焼きにする事で火を通しておいて、葉は調味料を入れる時に一緒に入れ一気に炒めます。家庭用のコンロの火力だと、全部一緒に炒めると枝分かれしている部分に火が通りきらず、葉の部分には火が入り過ぎて色が悪くなります。茎の太い部分と枝分かれした部分は先に炒めて、少し水を入れて蒸し焼きにする事をお勧めします。調味料はオイスターソースと味噌です。タイではタオチオという液体状の味噌を使いますが、今回は読者の皆様にも作りやすいように日本の味噌で作りました。
さて、このパックブンファイデーンにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ ロゼでした。前回のタイ料理のカイヤッサイ(タイ式一口包みオムレツ)でも、イチオシはタヴェルネッロで、オルガニコ サンジョヴェーゼが選ばれました。その時にもお話しましたが、タヴェルネッロは1983年に発売された、もう、40年以上愛され続けている販売量世界No.1※1のイタリアワインブランドなのです。その傘下の「オルガニコ」は、販売量国内No.1のオーガニックワイン※2で、タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ ロゼは有機栽培のぶどうを醸したスパークリングロゼです。タヴェルネッロのブランドオーナーであるカヴィロ社は、ワイン業界でも世界屈指のサステナブルモデルの会社として有名です。創業当時から廃棄物ゼロを目指して積極的に投資を続けました。一般的に10kgのぶどうから7Lのワインと大体3kgの搾りかすが出ます。この搾りかすは、普通のワイナリーではコンポストで肥料にするか、マールやグラッパの業者に売り渡して蒸溜されます。カヴィロ社は第一段階として、この搾りかすから高品質のアルコール、色素、酒石酸を取り出し、食品・医薬品・化粧品に使用される、高価格で販売可能な原料に生まれ変わらせます。さらに第二段階でバイオメタンと天然肥料を取り出し、施設や近隣にエネルギーとして供給し、炭酸ガスも回収します。そうして徹底的に使いつくされた残りである残渣はぶどう10kgからたったの23gしか出ないのです。カヴィロ社は環境に徹底配慮したサステナブルワイナリーなのです。
タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ ロゼをグラスに注ぐと、淡いラズベリーレッドで、小さな気泡が連なって昇っていきます。いちごやラズベリーなどの小粒の赤いベリーを連想させる、チャーミングな香りです。口に含むと生き生きとしたフレッシュな果実味がある飲み心地の良いロゼスパークリングワインです。
パックブンファイデーンを食べて、タヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ ロゼを飲むと、ロゼワインのほのかな甘みが、オイスターソース炒めの甘さと見事に調和します。
「空芯菜の香りと良く調和しています。ソーヴィニヨン・ブランよりも居心地が良い感じです」
「ソーヴィニヨン・ブランと空芯菜だと、緑のタッチが強調され過ぎて独り歩きしている気がしましたが、ロゼだと上手く折り合っている感じですね」
「オイスターソースを炒めた時の焦げた甘い香りとロゼの赤いベリーのニュアンスが上手く溶け合っているのですね」
「ある意味シンプルな味付けの野菜炒めのコクが深まり、味わい豊かな一皿になっています」
「ロゼスパークリングもワイン単体で飲むよりも、明らかにワンランク上の味わいに感じられました」
「料理もワインも両方ともが美味しくなるのが、幸せなマリアージュだと思います」
皆様も、一度、パックブンファイデーンを作ってみてください。そしてタヴェルネッロ オルガニコ スプマンテ ロゼとの素晴らしいマリアージュをお楽しみください。
※1 Shanken's IMPACT DATABANK Review and Forecast 2021
※2 インテージSRI+国内輸入ワイン市場 有機・無添加 24年1月~25年4月推計販売規模容量ベース
(SRI+7業態:SM、CVS、HC、DRUG、酒量販店、一般酒店、業務用酒販店)



